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油圧の基礎知識

油圧の基礎知識

著者:防衛大学校 システム工学群 機械システム工学科 教授 西海 孝夫

油圧は、加圧した油を介して動力の伝達を行う技術です。小さな力を大きな力に変えることができ、ジャッキや自動車のブレーキ、パワーショベル、エレベータなど、さまざまな装置や機械で利用されています。本連載では、油圧を初めて学ぶ方にも分かりやすいように、油圧の原理や油圧機器について解説します。第1回では、パスカルの原理と油圧システムについて説明します。

第1回:油圧の原理と油圧システム

1. パスカルの原理

パスカルの原理とは、「密閉容器中の流体は、その容器の形に関係なく、ある一点に受けた単位面積当たりの圧力をそのままの強さで、流体の他の全ての部分に伝わる」という、流体力学の基本原理です。油圧を理解するために必要な知識です。図1に示す密閉容器でパスカルの原理を考えてみましょう。密閉容器には液体が満たされ、断面積 Aのピストンが取り付けられています。

図1:パスカルの原理

図1:パスカルの原理

ピストン上面に、力Fが垂直に作用すると、ピストン下面での圧力はP=F/Aで計算されます。ここで、圧力P、力F、面積AのSI単位は、それぞれPa、N、m2です。パスカルの原理により、圧力Pは液体の全ての点に等しい大きさで伝わり、密閉容器を内側から押します(図1)。油圧ジャッキは、パスカルの原理を利用しています。図2に、油圧ジャッキの原理を示します。

図2:油圧ジャッキの原理

図2:油圧ジャッキの原理

油圧ジャッキで力が増幅する原理を、図2を用いて説明します。手動でレバーに操作力fを与えると、力 F1がピストン1に加わり、ピストン下面に圧力Pが発生します。この圧力Pは、連結管内の油(作動油)を介して、断面積 A2のピストン2の下面に同じ強さで伝わり、ピストン2に上向きの力 F2が加わります。すなわち、P=F1/A1=F2/A2が成り立ちます。そのため、F2=(A2/A1)×F1となり、ピストンの面積比に比例して力を増幅することができます。

油圧による力の増幅では、機械的動力と油圧動力の変換がポイントです。ピストン1の動力は機械的動力F1・v1で表されます。ピストン1が作動油を押すことで、機械的動力は油圧動力p×Qに変換されます。その後、作動油がピストン2を押すと、機械的動力F2・v2に再変換され、質量mの荷重が持ち上がります。

2. 油圧システムの概要

油圧システムは、油圧ポンプ、油圧バルブ、油圧アクチュエータの3種類の油圧機器から構成されています(図3)。

図3:油圧システムの概要

図3:油圧システムの概要

まず、原動機(電気モータ、エンジン)から得られる機械的動力を、油圧ポンプで油圧動力に変換します。油圧ポンプ内の油には高い圧力が加えられ、用途に応じてさまざまな油圧バルブを通過します。このとき、電気信号または手動によって、圧力・流量・流れの方向を制御・調整します。作動油が油圧アクチュエータに送り込まれると、油圧動力は機械的動力に再変換されます。この機械的動力(負荷)が、必要な仕事を行います。

油圧システムは、油圧ポンプ、油圧バルブ、油圧アクチュエータなどの主要機器に加え、原動機、油タンク、管路、フィルタ、圧力計などの機器によって、構成されています。また、電気入力信号によって油圧バルブを制御する電気回路や、センサ、アンプ、コンピュータ、ソフトウエアなどの電気・電子・情報技術も、油圧システムの一部です。このように油圧システムは、メカトロニクス(機械、電気、電子、情報工学などの技術を融合させた技術分野)です。図4に、油圧システムの一例を断面図とJIS図記号(JIS B 0125-1:2007 油圧・空気圧システム及び機器-図記号及び回路図)で示します。

図4:油圧システム(左:断面回路図、右:JIS図記号)

図4:油圧システム(左:断面回路図、右:JIS図記号)(左の画像提供:コベルコ・キャリア・ディベロップメント株式会社 )

電気モータで駆動する油圧ポンプは、油タンクから作動油を吸い上げ、高圧油として主管路(シリンダに通じるパイプ)に送ります。その際、油タンク内の作動油はフィルタでろ過され、清浄度が保たれます。圧力の調整は、圧力計を確認しながら、油圧バルブの一種である圧力制御弁(リリーフ弁)で行います。圧力制御弁は、負荷状態が異常なときには安全弁の役割も果たします。主管路への流れの方向の操作は、方向制御弁のレバーを手動で動かし、円筒形状のスプールを移動させて行います。図4の断面回路図では、シリンダの左側に作動油が流入すると、ピストンは圧力を受けて右方向に移動します。すると、シリンダの右側から作動油が排出されます。流量制御弁で作動油の流量を調整し、ピストンの移動速度を変えます。流量制御弁から出た作動油は、再び方向制御弁を通り、戻り管路を経て、油タンクに大気圧下で放出されます。同様に、リリーフ弁や油圧ポンプなどからの余剰な作動油も、ドレン管路を通り油タンクに戻されます。

3. 油圧の長所と短所

油圧の特徴は、適用分野、使用用途、作動条件などにより、大きく異なります。ここでは、長所と短所をそれぞれ8つ解説します。

・油圧の長所

1:わずかな電気的操作信号を油圧機器に与えることで、位置(角度)、速度(角速度)、力(トルク)、加速度(角加速度)などを、精密・高速に制御できます。

2:負荷を駆動する力(トルク)や速度(角速度)を、独立・無段階かつ広範囲に調整できます。運動の方向も、直線・回転と自由に変えられます。

3:管路を増やしたりホースの長さを変えたりすることで、油圧のエネルギーを柔軟に配分することができます。そのため、1台の油圧ポンプで複数の油圧アクチュエータを操作できます。

4:過負荷が発生したとき、リリーフ弁から高圧油を自動的に逃がすことで、システムの安全性を確保できます。また、頑丈で耐久性があるので、外部からの衝撃にも耐えることができ、重作業などに適しています。

5:アクチュエータ単体でのパワーレート(単位時間当たりの動力:W/s)が電気駆動や空圧駆動に比べて高いため、アクチュエータの小型化・軽量化が可能です。また、可動部の慣性が小さいため、応答性を向上でき、衝撃を抑えられます。

6:作動油は、空気に比べ圧縮性がほとんどなく、極めて高い圧力まで昇圧できます。そのため、剛性の観点から、アクチュエータによる位置決め精度や応答性に優れています。

7:アキュムレータ(高圧流体を蓄えておく装置)を用いて、流体エネルギーを蓄積できます。瞬時に高圧・大容量の作動油を油圧アクチュエータに送り込み、重量物を高速に移動できます。

8:作動油は、潤滑性、防錆(せい)性に優れているため、機器やシステムの保守管理が容易です。

・油圧の短所

1:作動油の漏れが発生すると、工場設備や自然環境・土壌の汚染をもたらします。シール技術の進歩により、漏れ量を少なくできるものの、ゼロにすることは困難です。

2:油圧機器では、作動油は狭いすき間を流れるため、油中に混入する汚染物質(コンタミネーション)を厳しく管理する必要があります。特に、サーボ弁を用いた油圧システムの信頼性向上には不可欠です。

3:鉱物性の油圧作動油は、引火点200~250℃の可燃性物質です。消防法が適用されることもあり、火災に対する配慮が必要です。

4:油圧ポンプは、人間が嫌悪感を持つ周波数の騒音を引き起こします。また、油圧バルブからも流体音が生じます。電気駆動と比較したとき、低騒音化は大きな課題です。また、油圧ポンプからの圧力脈動は、油圧回路内を伝わり、管路などを振動させて油圧機器に損傷を与えることがあります。

5:油圧ポンプは、摩擦や漏れによるエネルギー損失があります。特に、油圧システムが作動をしていない状態でのエネルギー損失は、抑える必要があります。

6: 油圧システムには、油圧源(油圧ポンプ・油圧タンクなど)が必要です。これらは、電気装置と比べて、広い設置スペースを確保しなければなりません。

7:作動油の温度変化により粘度が変わるため、環境によっては流量制御が困難です。油圧アクチュエータの速度制御精度が低下することもあります。

8:油圧配管は電気配線に比べて、パイプや継手などで接合するため、手間を要します。

今回は、パスカルの原理と油圧システムの概要を紹介しました。次回は、作動油について解説します。

参考文献
西海孝夫、絵とき 油圧 基礎のきそ、日刊工業新聞社、2012年

 

第2回:作動油の種類と性質

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前回は、パスカルの原理と油圧システムを紹介しました。今回は、作動油の種類と性質について解説します。油圧機器では、油を媒体として流体動力が伝達されるため、作動油の性質を理解することが大切です。

1. 作動油とは

作動油とは、油圧システムの中で、動力を伝達する媒体として使用される作動流体です。一般的に、以下のような特性が求められます。

  • 温度変化による粘度変化が少ない
  • 消泡性がある
  • 長時間使っても酸化しない
  • 防錆(せい)効果がある
  • 潤滑性・耐摩耗性がある
  • ゴム類を侵食しない
  • 燃えにくい

油圧システムによって、求められる作動油の特性は異なります。作動油の性質を理解し、油圧システムの種類に応じた適切な作動油を選択することが大切です。

2. 作動油の種類

作動油は、石油系作動油(鉱物系作動油)、合成系作動油、水溶性作動油(含水系作動油)に分類されます。また近年では、環境保護を目的とした生分解性作動油や、高含水作動液も開発されています(図1)。

図1:作動油の分類と種類

図1:作動油の分類と種類

・石油系作動油(鉱物系作動油)

石油系作動油は、精製した石油を基油(ベースオイル)として用いる作動油です。国内の油圧機器では最も多く利用されていて、一般作動油、耐摩耗性作動油、高粘度指数作動油などの種類があります。

一般作動油は、標準的な石油系作動油です。基油に、防錆(せい)剤、酸化防止剤、消泡剤を配合し、作動油としての特性を向上させています。防錆(せい)剤(Rust Inhibitor)のRと、酸化防止剤(Oxidation Inhibitor)のOを取って、R&O型作動油とも呼ばれています。

耐摩耗性作動油は、一般作動油に、極圧添加剤(高温高圧時に摩耗減少・焼付防止効果のある添加剤)や摩耗防止剤を配合した作動油です。高圧下において、互いの金属面の摩擦・摩耗の減少と焼付けを抑制します。高圧・高速な油圧システムでの使用に適しています。

高粘度指数作動油は、粘度指数(VI:Viscosity Index)が130以上の作動油です。粘度指数とは粘度の温度依存性を表す値であり、 数値が大きい作動油ほど温度による粘度変化が小さいことを示します。高粘度指数作動油は温度変化による作動油の粘度変化が少ないため、広範囲の運転温度で使用できます。油圧ポンプ起動時など低温での運転に適しています。

・合成系作動油

合成系作動油は、合成されたエステル、ポリグリコールなどを主な基油として用いる、難燃性作動油です。リン酸エステル系作動油、脂肪酸エステル系作動油などの種類があり、どちらも水溶性作動油より潤滑性に優れます。しかし、リン酸エステル系作動油は、ゴムや塗料に対する耐食性や、金属に対する耐腐食性に欠けます。また、脂肪酸エステル系作動油は、水分の混入に注意する必要があります。

・水溶性作動油

水溶性作動油は、主成分として水を含む作動油です。難燃性であり、火災対策のために開発されました。O/Wエマルション、W/Oエマルション、ポリグリコール溶液などの種類があります。O/Wエマルション(Oil in Water Emulsion)は、水の中に小さな油滴を分散させた乳濁液(エマルション)です。これとは逆に、W/Oエマルション(Water in Oil Emulsion)は、石油系作動油の中に小さな水滴を分散させた乳濁液状の作動油です。ポリグリコール溶液は、水を主成分として、不凍液にも利用されるグリコールやポリグリコールなどを加えた作動液です。

・生分解性作動油

生分解性作動油は、耐環境性に優れた作動油です。土壌に流出しても、バクテリアなどの微生物によって速やかに分解されるため、自然保護の立場から注目を集めています。生分解性作動油には、菜種油のような植物油を用いたものと、合成系基油を用いたものがあります。

・高含水作動液

高含水作動液は、水90~95%に対して鉱油やさまざまな添加剤を配合した作動油です。HWCF(High Water Contents Fluid)あるいは、HWBF(High Water Base Fluid)とも呼ばれます。乳濁状のW/Oエマルションと、透明あるいは半透明のソリューション(水に可溶な成分のみで構成された油)に分類されます。

3. 作動油の性質

作動油には、さまざまな物理的特性があります。表1に、石油系作動油と水の密度・動粘度・体積弾性係数・飽和蒸気圧・液中での音速を示します。

表1:作動油と水の比較
 石油系作動油
密度(kg/m3)860 ~ 920998
動粘度(mm2/s)55 ~ 2201.00
体積弾性係数(Pa)1.4×109 ~ 1.9×1092.06×109
飽和蒸気圧(Pa)0.492.34×103
音速(m/s)13001480

作動油の流体力学的性質として、密度、比重、粘度、動粘度、体積弾性係数、音速について解説します。

1:密度と比重

密度は、単位体積あたりの質量です。質量m、体積Vのとき、密度ρ=m/Vで表されます。密度ρのSI単位は、kg/m3です。

流体の密度は、圧力や温度によって変わります。一方、作動油は気体に比べて変化を受けにくいので、高圧下や過渡的な圧力変化の状況を除いて、密度が一定である非圧縮性流体と考えます(ρ=const.)。水の密度は、1atm、4℃において、ρw=1,000kg/m3です。また、比重は、水の密度ρwに対する流体や固体の密度ρの比をいい、比重s=ρ/ρwで定義されます。

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第3回:作動油の流れ

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前回は、作動油の種類と性質を紹介しました。今回は、作動油の油圧機器内での流れを学ぶため、圧力・流量と、これらに関連する式を解説します。油圧機器内や油圧管路における作動油の流れを知ることで、油圧システムの動力伝達を理解し、流れによる圧力損失や漏れをできるだけ少なく抑えることができます。計算式内には、作動油の流れを決めるさまざまなパラメータが登場します。どのようなパラメータが流れに影響を与えるのか、確認しながら読み進めてください。

1. 圧力

圧力は、流体中の壁面や仮想面に単位面積当たりに働く力Fの法線方向成分です。圧力pが断面積Aにわたって均等であるならば、圧力p=F/Aで表されます。一般に、油圧で使用される圧力は、大気圧を基準としたゲージ圧力です。SI単位は、Paの106倍のMPaが用いられています。圧力のSI単位であるPaと、旧来より日本国内で利用されている工学単位kgf/cm2への変換は、9.8N/m2=1kgf/m2で求められます。よって、1kgf/cm2≒0.098MPaとなります。

2. 流量と流速

断面積Aを通るx軸方向の流速uは、管壁からの粘性摩擦や管路形状の曲がり管の影響を受けます。そのため実際の流速uは、断面上の位置により異なります(図1のオレンジ色)。

図1:流量と流速

図1:流量と流速

このとき、微小面積dAを通る流速uを、断面積Aで面積分すると、流量Qを計算できます。

流量Q

ただし、時間的に変動がない断面平均流速vを想定すると、作動油は圧縮性のない流体と見なすことができます。このとき、流量Qは各断面において一定であり、以下の式で表されます(図1のピンク色)。

Q=A1・v1= A2・v2=const.

この式は連続の式と呼ばれ、油圧システムや機器内での多くの流れに対して実用的に用いられます。図2において、断面1では断面積A1が大きいため流速v1は遅く、断面2では断面積A2が小さいため流速v2は速くなります。

図2:連続の式

図2:連続の式

一般的に、油圧における流量の単位はL/minを用います。単位の変換は、1m3=1000L、1min=60sなので、1m3/s=6×104L/minとなります。

3. 作動油のエネルギー

図3のような管路では、流体の持つエネルギーをどう表すでしょうか。作動油の圧縮性や粘性を考えない定常な流れと仮定すると、断面1と断面2における速度v、圧力p、高さzについて、次の式が成り立ちます。

断面1と断面2における速度v、圧力p、高さz

図3:ベルヌーイの定理

図3:ベルヌーイの定理

これを、ベルヌーイの定理といいます。ベルヌーイの定理は、エネルギーの損失がなければ、管路の任意の点において、作動油の持つ流体エネルギーの総和が一定に保たれることを意味しています。ベルヌーイの式の第1項は、単位体積当たりの運動エネルギーを意味し、動圧と呼ばれます。第2項は単位体積当たりの圧力エネルギーで静圧と呼ばれ、第3項は単位体積当たりの位置エネルギーです。実際の油圧システムで、第3項は、第1項、第2項に比べて無視できるほど小さいので、以下のように書き換えられます。

ベルヌーイの式

この式は、圧力損失を考慮したベルヌーイの式です。 pLは、断面1と2の間での渦流れなどによる圧力損失を表します。

4. 平行平板間と円管路内の流れ

油圧機器は各所に多くの隙間が存在し、作動油の漏れを発生させて動力損失を引き起こします。ここでは、狭い隙間の流れを学ぶために、平行平板間(図4の左)と円管路内(図4の右)の流れについて説明します。

図4:狭い隙間の流れ(左:平行平板間の流れ、右:円管路内の流れ)

図4:狭い隙間の流れ(左:平行平板間の流れ、右:円管路内の流れ)

平行平板間の流量Qは、以下の式で表されます。bは平板の幅、Δpは圧力差(p1-p2)、μは粘度、lは平板の長さ、hは平板間の隙間です。このような流れを2次元ポアズイユ流れといい、流量は隙間の3乗に比例します。

平行平板間の流量Q

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5. 絞りのある管路内の流れ

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6. 圧力損失

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第4回:油圧ポンプの構造と作動原理

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前回は、作動油の流れを紹介しました。今回は、作動油を吸い上げて油圧アクチュエータへと送り込む油圧ポンプを取り上げます。油圧ポンプは、メカニズムや作動油の吐出方法によって分類されます。ここでは、ほとんどの油圧ポンプで採用されている容積式ポンプおよび定容量形ポンプ・可変容量形ポンプの作動原理や特徴を解説します。

1. 容積式ポンプとは

容積式ポンプとは、ポンプ内部にピストンやシリンダなどの部品で仕切られた密閉空間(容積室)を有しているポンプのことです。容積式ポンプは、作動油を吸入・排出する機構によって、往復運動式と回転運動式に分けられます。往復運動式ではピストンが往復運動し、回転運動式はロータなどが回転運動することで作動油を流動させます。ここでは往復運動式のピストンポンプ(図1)を例に、作動原理を解説します。容積式ポンプの作動は、以下のとおり膨張行程、吸込行程、圧縮行程、吐出行程の4つの行程に便宜上分けられます。

図1:容積式ポンプの作動概念図

図1:容積式ポンプの作動概念図

・膨張行程

膨張行程では、駆動軸が回転し、ピストンが上死点より右方向に動きます。容積室は負圧になり、吸込圧力が生じます。

・吸込行程

吸込行程では、容積室の吸込圧力と油タンクの油面にかかる大気圧との差圧が、吸込側チェック弁のばね力より大きくなると、吸込側チェック弁のボールが離れ、油タンクから作動油を吸込みます。このとき、吐出側のチェック弁は、吐出側の圧力とばね力により、ボールが押され、閉じています。

・圧縮行程

圧縮行程では、ピストンが下死点より左方向に動き、容積室の体積を圧縮させて圧力が上昇します。

・吐出行程

吐出行程では、容積室内の吐出圧力と吐出側の圧力との差圧が、吐出側チェック弁のばね力に打ち勝つと、吐出側チェック弁のボールが離れ、容積室内の作動油が押し出されます。このとき、吸込側のチェック弁は、閉じています。

2. 定容量形ポンプと可変容量形ポンプ

油圧ポンプは、駆動軸1回転によって吐出す油量を変えられないもの(定容量形ポンプ)と変えられるもの(可変容量形ポンプ)に分類されます。それぞれのポンプの作動原理や特徴を解説します。

・定容量形ポンプ

定容量形ポンプは、ポンプ駆動軸が一定回転した際に、1回転当たりの理論的な吐出量(押しのけ容積)を変えることができないポンプです。駆動機構により、ギヤポンプ、ベーンポンプ、ピストンポンプなどの種類があります。

1:ギヤポンプ

ギヤポンプは、歯車によって作動油を吸込側から吐出側に押し出す形式のポンプです。歯車が外接するものを外接ギヤポンプ、内接するものを内接ギヤポンプといいます。今回は、ギヤポンプの中で最も一般的な外接ギヤポンプについて解説します。

外接ギヤポンプは、駆動歯車(駆動軸)、従動歯車、ボディ、前後のカバー、側板、ブッシュ、ガスケット、オイルシールなどから構成されています(図2)。フォークリフトをはじめ、建設機械・農業機械・産業機械などに用いられ、吸込性能が良く、部品点数が少ないため安価です。

図2:外接ギヤポンプ(上:内部構造図、左下:作動原理図、右下:定容量形ポンプのJIS図記号)

図2:外接ギヤポンプ(上:内部構造図、左下:作動原理図、右下:定容量形ポンプのJIS図記号)

図2の作動原理図を見てください。駆動軸によって駆動歯車が時計方向に回転すると、従動歯車は反時計方向に回転します。両歯車のかみ合いが終わって離れる瞬間、吸込側に負圧が生じ、真空作用によって作動油が吸入されます。作動油は吸込側から流入し、歯車とケーシングとの間を通って、吐出側から押し出されます。吐出側では、2個の歯車がかみ合い始める瞬間に容積室の体積が圧縮され、油を吐出します。

2:ベーンポンプ

ベーンポンプとは、平板状のベーン(羽根状の部品)を用いた油圧ポンプのことです。ベーンが溝の中を自由に運動するためのロータ、ベーンの往復運動を規制するカムリングから構成されています。ロータに作用する半径方向の圧力が釣り合っている平衡形と、釣り合っていない非平衡形に分類できます(図3)。

図3:ベーンポンプ(上:平衡形、下:非平衡形)

図3:ベーンポンプ(上:平衡形、下:非平衡形)

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第5回:油圧アクチュエータの構造と作動原理

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前回は、油圧ポンプの構造と作動原理を紹介しました。今回は、油圧アクチュエータである油圧シリンダ、油圧モータ、揺動形アクチュエータについて紹介し、どのようなパラメータがアクチュエータの動力に影響するのかを解説します。

1. 油圧アクチュエータとは

アクチュエータとは、与えられた動力を直線運動や回転運動の機械的な動力(力×速度、トルク×角速度)に変換する機器です。油圧アクチュエータは、作動油の持つ流体動力(圧力×流量)を利用するアクチュエータで、小型であっても大きな動力を得ることができます。そのため、油圧アクチュエータは工場や建設機械など、大きな動力が必要な機器によく用いられます。

油圧アクチュエータには、油圧シリンダ、油圧モータ、揺動形アクチュエータなどの種類があります。それぞれ、流体動力を直線運動、回転運動、揺動運動させ、機械的な動力に変換します。それぞれの特徴や作動原理を説明します。

2. 油圧シリンダ

油圧シリンダは、直線運動を行う油圧アクチュエータです。ピストンロッドが片側から出ている片ロッドシリンダと、両側から出ている両ロッドシリンダに分類できます。片ロッドシリンダには、単動形と複動形があります。単動形は、油の出入口がピストンの片側にあり、片側だけに圧力が作用してシリンダを動かします。ピストンの復帰は、ばねや自重落下によって行われます。複動形は、油の出入口がピストンの両側にあり、両側に圧力が作用することで往復運動を行います。今回は、複動形の片ロッドシリンダについて解説します。

・油圧シリンダの作動原理

片ロッドシリンダの複動形は、ピストン、シリンダチューブ(シリンダボディ)、ピストンロッドから構成されます(図1)。ピストンロッドが出ている側をロッド側、出ていない側をキャップ側と呼びます。

図1:油圧シリンダの作動概念図

図1:油圧シリンダの作動概念図

1:押し行程

押し行程とは、ピストンロッドがキャップ側から押し出される行程です(図1の左)。作動油がキャップ側のポートから容積室に流量Qで流入すると、ピストンに圧力pが作用し、ピストンロッドを押し出す力(押し側シリンダ力F)が働きます。ピストンは速度Uで右に移動し、作動油はロッド側のポートから大気圧下の油タンクへと流出します。このとき、押し側シリンダ力Fと、ピストンの速度Uは、それぞれ、F=Ac×p、U=Q/Acとなります。Acは有効シリンダ断面積と呼び、シリンダ力を発生するために圧力が作用するピストン断面積です。

2:引き行程

引き行程とは、ピストンロッドがシリンダチューブに戻る行程です(図1の右)。ロッド側のポートから作動油が流量Qで流入すると、ピストンに圧力pが作用して、ピストンロッドをキャップ側に戻す力(引き側シリンダ力F)が働きます。また、ピストンは速度Uで左に移動し、作動油はキャップ側のポートから大気圧下の油タンクへと流出します。引き側シリンダ力Fと、ピストンの速度Uは、それぞれ、F=Ar×p、U=Q/Arで表されます。Arは、ロッド側有効ピストン断面積です。

押し行程と引き行程のシリンダ力Fは、下流側が油タンクに開放され、摩擦力および漏れの影響を全て無視した理想的なシリンダ力です。実際のシリンダ力やピストン速度は、これらの影響により低下します。

・油圧シリンダの構造

片ロッドシリンダの複動形は、主にシリンダチューブ、前後カバー、ピストンロッド、ピストン、クッションプランジャから構成されます(図2)。

図2:油圧シリンダの内部構造図(上)と、複動式片ロッドシリンダのJIS図記号(下)

図2:油圧シリンダの内部構造図(上)と、複動式片ロッドシリンダのJIS図記号(下)

ピストンが移動する距離を、ストロークと呼びます。ピストンがストローク終端付近で、前カバー・後カバーに高速で衝突することを防ぐために、カバー内にはクッション機構が設けられています。クッションは、ストローク終端付近に移動したピストンの運動エネルギーを吸収して、衝撃を軽減します。クッションの種類には、戻り流路の流れを絞る流体クッションなどがあります。

図3に流体クッションの構造を示します。ピストンによって押し出された作動油は、流体抵抗を受けることなく、クッション穴を通ってポートから流出します。しかし、ストロークの終了付近では、クッションプランジャがクッション穴に突入し、ポートとの直接的な流れが断たれるため、密閉された容積室(クッション室)が形成されます。クッション室の作動油は、細孔を通りクッション弁にて流れを絞られ、ポートから流出します。この機構を、流体クッションと呼びます。流体クッションは、クッション室内の圧力を急激に増加させることで、緩衝装置として作動し、ピストン速度を徐々に減じて停止させます。クッションプランジャにはテーパ加工やU形溝加工などが施され、クッション室にサージ圧(衝撃を伴う異常な圧力上昇)が生じないようになっています。

図3:流体クッションの構造

図3:流体クッションの構造

3. 油圧モータ

・油圧モータの動力伝達

油圧モータとは、回転運動を行う油圧アクチュエータです。基本的な油圧モータの構造は、油圧ポンプと類似しています。油圧モータは、回転運動式のギヤモータ、ベーンモータ、ねじモータ、往復運動式のピストンモータに分類できます。ここでは、油圧モータのモデルをベーン形で簡易化して説明します。

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4. 揺動形アクチュエータ

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第6回:油圧バルブの構造と作動原理

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前回は、油圧アクチュエータの構造と作動原理を紹介しました。今回は、油圧バルブについて解説します。油圧バルブとは、油圧ポンプから送り出された作動油の方向、圧力、流量を制御する機器です。油圧バルブには、機械制御によって作動する機械操作弁と、電気制御によって作動する電気操作弁があります。ここでは機械操作弁を取り上げ、方向制御弁、圧力制御弁、流量制御弁を紹介します。

1. 油圧バルブとは

油圧バルブとは、油圧ポンプから送り出された作動油の方向、圧力、流量を制御する機器です。バルブ内部の弁体と呼ばれる部品で、絞り流路の断面積を変化させ、流体の流れを制御します。弁体の種類は形状により、ポペットとスプールに分けられます。

ポペットは、円すい形状、球状などの弁体です(図1)。弁座(弁体を受ける部分)のシート面から垂直方向に移動し、弁の開閉を切り替えます。閉位置の状態では基本的に、絞り部からの作動油の漏れは生じません。

図1:ポペットの構造と動作

図1:ポペットの構造と動作

スプールの形状は串形です(図2)。円筒状の穴に内接し、軸方向に移動することで流路の開閉や絞り動作を行います。半径方向に大きい部分をランドといい、ランドが絞り部をふさぐことで弁作用が働き、流れを制御します。ランドと穴の間には隙間が存在するため、閉位置の状態でも若干の漏れが生じます。スプールの利点は、軸方向に圧力が平衡するため、ポペットに比べて外部からの操作力が小さくて済むという点です。

図2:スプールの構造と動作

図2:スプールの構造と動作

ポペットやスプールが流れを制御するとき、弁体と弁座、あるいは弁体と穴には絞りが形成され、流量Qと差圧Δpの関係は、第3回で示したオリフィスの式で表すことができます。

オリフィスの式

αは流量係数、Aは開口面積、ρは作動油の密度です。この式から、バルブによって流量や圧力を制御するには、他のパラメータをできるだけ一定に保ちながら、開口面積Aを変化させればよいことが分かります。流量係数αは、レイノルズ数などによって変化するため、注意が必要です。油圧バルブの種類は役割で分類され、方向制御弁、圧力制御弁、流量制御弁などがあります。それぞれのバルブの構造や動作について、解説します。

2. 方向制御弁

方向制御弁は、作動油の流れ方向を制御するバルブです。これにより、油圧アクチュエータの始動、停止、移動方向を決定します。方向制御弁には、チェック弁や方向切換弁などの種類があります。

・チェック弁

チェック弁は、弁体の球状ポペットを押し開き、作動油の流れを一方向にして、逆流を阻止するバルブです。チェック弁には、ばね付きと、ばね無しがあります。図3に、ばね付きチェック弁の作動原理、JIS図記号、内部構造を示します。ばね付きチェック弁は、ばねによって閉位置を保持し、弁座シート面へのポペットの押し付け力を強固にしています。

図3:ばね付きチェック弁の作動原理(上)、JIS図記号(左下)、内部構造(右下)

図3:ばね付きチェック弁の作動原理(上)、JIS図記号(左下)、内部構造(右下)

ばね定数をk、ばねの初期たわみをxo、入口の流路断面積をAeとすると、押し付け力Fは、F=Ae(pout-pin)+kxoで表すことができます。F>0の時、ポペットはばねによって弁座シート面に押し付けられています(図3の左上)。F=0になると、ポペットは弁座シート面から離れます(図3の右上)。そのときの流入側圧力pinは、pin=pout+kxo/Aeで表されます。油圧力がばね力を超え、押し付け力がばね力などに打ち勝つと、作動油は入口ポートから出口ポートへ流れます。弁が開き始めるときの圧力を、クラッキング圧力と呼びます。

・方向切換弁

方向切換弁は、ポートの接続状態を変えるバルブです。これにより、油圧アクチュエータの駆動、停止、運動方向を決定します。図4に、4ポート、3位置、オールポートブロック、スプリングセンタ仕様の電磁方向切換弁を示します。

図4:方向切換弁の内部構造とJIS図記号

図4:方向切換弁の内部構造とJIS図記号

4ポートとは、4つの接続ポート(図4ではP、T、A、B)を持ち、3位置とは、弁体(スプール)が3つの位置(中央、左、右)に移動することで、流体制御を行うことを意味します。操作力が働いていない中央位置では、全てのポートが閉じている(オールポートブロック)ため作動油の流れはありません。スプールが右に動くと、作動油はPポートからAポート、BポートからTポートへ流れます。スプールが左に動くと、作動油はPポートからBポート、AポートからTポートへ流れます。JIS図記号の左右に書かれている平行な矢印と交差した矢印が、それぞれの流れを表しています。

スプールの移動は、ソレノイドによって行われます。左側のソレノイドSOL aに入力信号が加わると、プッシュピンが押されてスプールは右に動きます。信号が切れると、スプールはばねによって中央の初期位置に戻ります。このような復帰方法を、スプリングセンタといいます。また、右側のソレノイドSOL bに入力信号が加わると、スプールは左に動きます。

3. 圧力制御弁

圧力制御弁は、油圧回路の圧力を制御するバルブです。主な役割は、油圧回路内の圧力を設定値に保持すること、最高圧力を制限すること、回路内の圧力が設定値に達すると回路を切り換えることの3つです。ここでは、代表的な圧力制御弁であるリリーフ弁について解説します。リリーフ弁とは、回路内の圧力を設定値に保持するバルブで、弁体が動くことで、作動油の一部または全部をタンクに逃がします。形状により、直動形とバランスピストン形に分けられます。

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4. 流量制御弁

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第7回:電気操作弁の構造と作動原理

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前回は、油圧バルブの中から、機械制御によって作動する機械操作弁の構造と作動原理を解説しました。今回は、電気制御によって作動する電気操作弁を取り上げます。

1. 電気操作弁とは

電気操作弁は、電気制御によって作動するバルブです。電気操作弁のうち、連続した入力信号に追従して、油圧システムの流体エネルギーを連続的に制御する弁を、連続制御弁と呼びます。連続制御弁には、比例制御弁とサーボ弁の2種類があります(図1)。

図1:比例制御弁(上)とサーボ弁(下)

図1:比例制御弁(上)とサーボ弁(下)

比例制御弁は、コントローラを経てアンプに指令信号が与えられると、信号に従って作動油の流れ方向と流量を比例制御弁が定め、シリンダを動かします。これに対してサーボ弁は、油圧アクチュエータ(シリンダ)に取り付けられたセンサ(位置、速度、圧力、力など)からのフィードバック信号を受け、指令信号との偏差に基づいて、サーボ弁を駆動します。比例制御弁は開ループ制御、サーボ弁は閉ループ制御です。

比例制御弁は構造が単純なので、安価かつ手軽に扱うことができます。また、作動油のコンタミネーション(汚染)管理をそれほど必要としません。一方、サーボ弁は高応答な動特性と、連続信号に対する優れた追従性を備えているため、高い制御精度と分解能を得ることができます。

2. 比例制御弁

比例制御弁は、入力信号に比例した圧力や流量を、出力として制御できるバルブです。通常の制御弁では調整ねじによって行う動作を電気信号に置き換えることで、圧力、流量、方向を、遠隔から連続的に制御できます。比例電磁式制御弁、あるいは比例弁とも呼ばれます。

図2に、比例制御弁の作動原理の一例として、電磁比例リリーフ弁の構造を示します。電磁比例リリーフ弁は、回路内の圧力を設定値に保持するために用います。直動形リリーフ弁の圧力調整ねじの代わりに、比例ソレノイドで圧力を調整します。

図2:電磁比例リリーフ弁の作動原理

図2:電磁比例リリーフ弁の作動原理

比例ソレノイド中のコイルに電流iが加わると、それに比例した吸引力Fが生じます。吸引力Fによって、アーマチュア(可動鉄心、電機子)はばねに抗してx軸方向に動き、ロッドを介して、ポペットを弁座に押し付けます。ポペットへの入口ポートの圧力pinによる力が、吸引力とばね力に打ち勝つと、ポペットは弁座から離れ、作動油は出口ポートに流れて油タンクに至ります。比例ソレノイドによる吸引力Fは、アーマチュアのストロークに依存せず、一定の範囲内に収まり、安定した性能が得られます。

3. サーボ弁

サーボ弁は、電気などの入力信号の関数として、流量や圧力を制御するバルブです。代表的なサーボ弁に、直動形サーボ弁と、2段形サーボ弁があります。

・直動形サーボ弁

直動形サーボ弁は、本体部、リニアモータ部、センサ部から構成されます(図3)。

図3:直動形サーボ弁の内部構造

図3:直動形サーボ弁の内部構造

本体部は、スプールおよびスリーブと5つのポート(図3ではP、T、A、B、Dr)によって構成されます。スプールは、流体力(油が通過する際に生じる力)の低減対策がなされ、ゼロラップ(スプールが中立点にあるときポートは閉じ、少しでも変位するとポートが開いて油が流れる状態)の加工が施されています。リニアモータ部にはボイスコイルモータ(ネオジウム・鉄・ホウ素の希土類永久磁石が作る磁界内を、可動コイルが往復運動するモータ)があり、本体部のスプールを直接駆動します。センサ部には、非接触・高応答な磁気式の位置検出器があります。位置検出器はスプールの動作を検出し、電気的なフィードバック信号を与えます。直動形サーボ弁の応答周波数は極めて高く、作動油の耐コンタミ性にも優れています。

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第8回:アキュムレータとフィルタ

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前回は、電気操作弁を紹介しました。これまで取り扱ってきた油圧ポンプ、油圧アクチュエータ、油圧バルブのほかにも、油圧システムにはさまざまな油圧機器が組み込まれ、流体動力の伝達機構を支えています。補助的な役割を担う油圧機器を、油圧補機といいます。今回は、油圧補機の中から、アキュムレータとフィルタを解説します。

1. アキュムレータとは

アキュムレータとは、作動油の流体エネルギーを蓄えるための圧力容器です。アキュムレータは蓄圧方式によって分類され、気体の圧縮性で加圧する気体式アキュムレータ、重りなど重量物の重力で加圧する重り式アキュムレータ、ピストンを介してばねの弾性で加圧するばね式アキュムレータなどがあります。気体式アキュムレータは、作動油と気体の隔離構造の違いにより、ブラダ形、ダイアフラム形、ピストン形の種類があります。図1に、気体式アキュムレータの構造とJIS図記号を示します。

図1:気体式アキュムレータの構造とJIS図記号

図1:気体式アキュムレータの構造とJIS図記号

2. ブラダ形アキュムレータ

ブラダ形アキュムレータは、気体式アキュムレータで最も一般的な形式です。ブラダとはゴム袋のことで、ブラダ形アキュムレータの本体内には、窒素ガスなどの不活性ガスを給気するブラダが組み込まれています。ポペット弁から作動油が流入すると、ブラダを圧縮してエネルギーを蓄積します。アキュムレータが作動していない状態では、本体内の作動油にも、ブラダ内の窒素ガスにも圧力は加えられていません(作動油の圧力ph=窒素ガスの圧力p=大気圧p0)。アキュムレータを作動させると、図2に示すように窒素ガスの圧力と体積、作動油の圧力が変化します。

図2:ブラダ形アキュムレータの作動状況

図2:ブラダ形アキュムレータの作動状況

ガス封入時(図2の左)、給気弁からブラダに封入される窒素ガスの圧力p=p1は、作動油の圧力phより高いので、ブラダは膨張します。

流体エネルギー蓄積時(図2の中)は、油圧回路内の圧力phがガス封入圧力pより高くなり、ポペット弁が開いて作動油が流入します。作動油によりブラダ内の窒素ガスは圧縮され、作動油の流体エネルギーがアキュムレータに蓄積され始めます。設定された最高作動圧力p3に達すると、ブラダのガス体積Vは最も収縮して、V=V3となります。このとき、作動油の圧力phと窒素ガスの圧力pは釣り合います(ph=p=p3)。

流体エネルギー放出時は、油圧回路内の圧力phがガス封入圧力pより低くなり、ブラダ内の窒素ガスが膨張して蓄えられた流体エネルギーがアキュムレータから放出されます(図2の右)。設定された最低作動圧力p2まで下降すると、ブラダのガス体積VはV=V2、両者の圧力はph=p=p2となります。

3. アキュムレータの用途

アキュムレータの用途には、流体エネルギーの蓄積、衝撃の緩衝、管内圧力上昇の緩衝などがあります。

・流体エネルギーの蓄積

油圧アクチュエータが間欠的に作動しているとき、ポンプからの余剰流量をアキュムレータに蓄積し、必要に応じて放出します。これにより、ポンプ動力(電動機の容量)を下げ、イニシャルコストの低減、消費電力の節減による省エネルギー化を実現します。図3に、アキュムレータを用いた流体エネルギーの蓄積回路を示します。

図3:アキュムレータを用いた流体エネルギーの蓄積回路

図3:アキュムレータを用いた流体エネルギーの蓄積回路

油圧源から流入した高圧油は、電磁方向切換弁が閉じた状態の時、アキュムレータへ流入します。アキュムレータには流体エネルギーが蓄積され、圧力スイッチ(設定圧力になると信号を出力する機器)が最高作動圧力を検知すると、電磁方向切換弁が開きます。アキュムレータから放出された高圧油は、シリンダのキャップ側へ流れ、ピストンロッドが右側に移動します。

・衝撃の緩衝

方向制御弁によって油圧回路が急激に閉鎖されると、アキュムレータは衝撃圧力を吸収・緩衝し、機器の損傷などを防止します(図4)。

図4:アキュムレータによる衝撃緩衝回路

図4:アキュムレータによる衝撃緩衝回路

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4. フィルタとは

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5. フィルタの性能

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第9回:熱交換器、圧力計、油タンク、配管、電動機

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前回は油圧補機から、アキュムレータとフィルタを紹介しました。今回は油圧補機の続編として、熱交換器、油タンク、圧力測定器、配管、電動機の5つを取り上げ、構造や特徴を解説します。熱交換器は作動油の温度管理、油タンクは作動油の貯蔵など、いずれも大切な役割を持つ油圧補機です。

1. 熱交換器

熱交換器は、作動油の温度を適切に管理する装置です。固体壁面を介して、高温流体と低温流体の間で熱交換を行い、作動油の温度の変化・維持を行います。油圧システムに用いられる熱交換器には、水冷・空冷で冷却するクーラと、電熱器などで加熱するヒータがあります。

水冷式クーラは、多数の伝熱管を介して液体間で熱交換します。油圧のような高圧流体に適した構造です(図1)。

図1:水冷式熱交換器の内部構造図とJIS図記号

図1:水冷式熱交換器の内部構造図とJIS図記号

円形の外殻の両端には、伝熱管を支持する管板が設置されています。作動油は、外殻の油流入口から入り、伝熱管の外側を流れます。流れと直角に設けられた数個のバッフル板や、無数の穴を抜けながら、油流出口へと流れ出ます。バッフル板は、じゃま板とも呼ばれ、流体の流れ方向や流速を変える役割を持ちます。一方、冷却水は、水流入口から入り、左側下部の水室カバーを介して伝熱管の内部を流れます。右側の水室カバーを経由して、再び伝熱管を通り、左側上部の水室カバーを経て水流出口から流れ出ます。

寒冷地などで油圧ポンプを使用する場合、油温が低くなると、作動油の粘度が高くなります。それを防ぐため、油タンク内にヒータを設置して、作動油を適温まで上昇させます。一般的には、シーズ型ヒータが用いられます。シーズ型ヒータは金属製のシーズパイプの中にコイル線状の抵抗発熱体を入れ、絶縁体を充填させたものです。管用ねじにより、油タンク壁面とシール接合が可能です。

2. 油タンク

油タンクは、作動油を蓄える容器です。油タンクには、大気圧下で貯蔵する大気開放タンクや、大気圧より高い状態で貯蔵する加圧タンクがあります。大気圧開放タンクは鋼板溶接により製作され、ストレーナ(液体から固形成分を除くための網状の器具)、バッフル板、油面計、給油口、作動油抜き口と、複数の管路から構成されています(図2)。

図2:油タンクの構造とJIS記号

図2:油タンクの構造とJIS記号

油タンクには3つの働きがあります。作動油の適切な温度保持、作動油内の空気の分離、タンク底部への異物の沈殿・分離です。このためには、十分な容積が必要です。効果を高めるため、バッフル板をタンク中央部に設置することで、作動油の経路(戻り管路やドレン管路からストレーナを通り、ポンプ吸込み管まで)を長くしています。油タンクの上板に、油圧ポンプ、ポンプ駆動用電動機、リリーフ弁などの制御弁が一体化して設置されると、パワーユニットと呼ばれる油圧装置になります。

3. 圧力測定器

圧力測定器は、圧力および差圧を測定表示する機器です。主にゲージ圧力を測定する圧力計、圧力を電気信号に変換する圧力変換器、圧力が任意のしきい値に達した時点で電気信号を開閉する圧力スイッチなどがあります。

・ブルドン管圧力計

ブルドン管圧力計は、ブルドン管という平らな管の変形量を機械的に拡大して、ゲージ圧を求める圧力計です。100MPaレンジまでの圧力計測が可能です。ブルドン管は、偏平な円形断面を持つ管で、C形の円弧状に曲げられて配置されています(図3)。

図3:ブルドン管圧力計の内部構造図とJIS図記号

図3:ブルドン管圧力計の内部構造図とJIS図記号

圧力導入口を介してブルドン管内に圧力が加わると、管の長手方向に微小な伸びが発生します。そうすると、ブルドン管は、全体的に外側方向に膨らみ、閉鎖されている管先は上方に移動します。この変位量は、リンク機構によって回転運動に変換され、歯車が回転角度を増幅し、指針を所定の圧力目盛りまで動かします。圧力脈動や衝撃圧が生じる場合、圧力計内部にグリセリン水溶液を注入して完全密封したブルドン管圧力計を使用します。グリセリン水溶液の粘性抵抗によって、ブルドン管や指針の動きが抑制され、破損を防ぎます。

・圧力変換器

圧力変換器は、圧力を電気信号に変換する測定器です。ひずみ式圧力測定器、静電容量式圧力変換器などがあります。

ひずみ式圧力変換器(図4)は、圧力導入口からの流体の圧力が、外周の固定されているダイアフラム(厚さ0.3~2.0mmの円形薄板)に加わると、中央と周辺で、それぞれ引張りと圧縮のひずみが生じます。このひずみは、ダイアフラムの裏面に貼られたひずみゲージ(抵抗体)で検出された後、電気抵抗に変換され、ブリッジ回路を経て出力信号として取り出されます。

図4:ひずみ式圧力変換器の内部構造図とJIS図記号

図4:ひずみ式圧力変換器の内部構造図とJIS図記号

静電容量式圧力変換器は、ダイアフラムの変位量によって、移動電極と基準電極の間に蓄積される静電容量が変化する原理を用いています。

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4. 配管

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5. 電動機

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第10回:油圧の動向とハイブリッド技術

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前回は油圧補機の続編として、熱交換器、油タンク、圧力測定器、配管、電動機を紹介しました。今回は昨今の油圧の動向であるハイブリッド技術について解説します。従来の油圧ポンプの課題は、エネルギーの浪費や、騒音・振動などでした。ハイブリッド技術を用いることで、これらの課題を解決することができます。油圧ハイブリッド技術を2つ取り上げ、油圧システムの省エネ化について見ていきます。

1. 油圧システムの動力伝達とハイブリッド技術

油圧システムにおいて、油圧ポンプ軸に接続された原動機はエネルギー源によって駆動され、ポンプは機械的動力を油圧動力に変換します。動力源から作業機までの動力の伝達経路には、原動機の損失のほかに、油圧システム内での摺動摩擦の抵抗や作動油の漏れによる損失が常に存在します(図1)。これらの損失を減らすことが省エネ設計のキーポイントです。油圧システムにおける現状の課題として、油圧アクチュエータが減速するとき無駄に消費されたエネルギーを、どのような手段で回生するかという問題があります。その問題を解消する手段として、油圧のハイブリッド技術が期待されています。

図1:油圧システムの動力伝達経路

図1:油圧システムの動力伝達経路

ハイブリッドとは、2つ以上の異なる要素を混成し、それぞれの特徴を生かした新たなシステムを構築することです。今回は、油圧ハイブリッド技術の事例として、回転数制御ポンプと建設機械のハイブリッド化を紹介します。回転数制御ポンプは、油圧ポンプを駆動する原動機の回転速度やトルクを制御でき、負荷に応じたエネルギー分を供給します。建設機械には、電動アクチュエータやエネルギー蓄積媒体を利用することで、無駄なエネルギーを回収し再生する技術が用いられています。

2. 回転数制御ポンプ

産業機械に多用される定置形の油圧源の多くは、ポンプ形式によって定容量形と可変容量形に分類できます(図2)。また、一般にポンプ内の油の流れは片方向のみに限定されていました。

図2:代表的な油圧源

図2:代表的な油圧源(引用:大橋彰、機械設計 Vol.52 No.6ビギナーのための油圧システム入門 第4章 基本的な油圧回路、日刊工業新聞社、2008年、P.37)

定容量形ポンプの作動油の吐出流量は一定であり、油圧システムの制御はバルブだけで行います。絞り弁によってアクチュエータの速度を制御し、同時に、負荷力に見合ったポンプ圧力をリリーフ弁で設定して、余剰流量をタンクに戻す方式です。可変容量形ポンプは、油圧アクチュエータの停止時に負荷圧力が増加すると、ポンプ吐出し流量をゼロにして省エネ運転します(参考:第4回)。そのため、制御はポンプとバルブで行われます。可変容量形ポンプでは、負荷圧力を感知してポンプ圧力や流量を変化させるロードセンシングシステムもあります。これらの方式の課題は、三相誘導電動機を常に一定の回転速度で運転することによるエネルギーの浪費・騒音・振動などです。

昨今、注目される油圧ハイブリッド技術として、油圧メーカー各社が開発を進める油圧ポンプの回転数制御があります(図3)。このシステムは、油圧ポンプに直結された電動機を適切な回転速度に可変制御し、必要なときに必要な動力を油圧アクチュエータに与える機構です。動力が必要ないときは、電動機は完全に止まり、アイドリングストップ機能が働きます。例えば、位置・圧力・流量の指令信号を入力すると、コントローラでアクチュエータ側の位置・圧力センサの検出信号の偏差に基づき演算を行い、電動機の回転速度センサのフィードバック信号を受けながらポンプを駆動します。

図3:回転数制御ポンプを用いた油圧システム

図3:回転数制御ポンプを用いた油圧システム(引用:ポンプ回転数制御油圧システム「カワサキエコサーボ」、川崎重工技報、No.168、川崎重工業株式会社、2009年、P.42)

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3. 建設機械のハイブリッド化

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