メニュー

雷の発生と特性:雷対策の基礎知識1

雷対策の基礎知識

更新日:2021年2月4日(初回投稿)
著者:東洋大学工業技術研究所 客員研究員 東洋大学名誉教授 加藤 正平

雷は、人類にとって身近な自然現象の1つです。古代では、雷は「神鳴り」として信仰の対象となっていました。稲妻や雷鳴の恐怖からの信仰に加えて、降雨や食料の豊作を願う神でもありました。雷はまた、科学技術の発展の礎(いしずえ)にもなってきました。古代ギリシャ哲学者らの静電気現象の発見から、その現象の1つである雷を科学的に解明しようと幾多の人々が探求してきました。その中で、ベンジャミン・フランクリン(アメリカ合衆国の政治家・物理学者)が、雷は電気現象であることを証明したことは有名です。その後、静電気のような電圧を主として扱う静電気学から、電流を扱う電磁気学へと電気工学分野の基礎が確立され、現在の高電圧工学、通信工学、送配電工学、プラズマ工学、パルスパワー技術などの技術分野の基礎となる、あるいは進展のきっかけになる役割を、雷が果たしてきました。

本連載では6回にわたり、雷について解説します。理科や高校物理(電気の分野)程度の知識で理解できるように、雷現象のメカニズムや特徴、被害や対策などについてまとめたものです。もちろん、電気電子工学の分野を学ばれる学生、電気以外を専門とする技術者の方にも、入門として利用されれば幸いです。第1回の今回は、雷の発生と特性を紹介します。

今すぐ、技術資料をダウンロードする!(ログイン)

1. 雷雲の帯電

雷を発生させる雲を雷雲といい、その雷雲は帯電しています。雷は、大気中で生じる放電の1つで、数10mから数10kmの非常に長い距離で発光します(図1)。放電は、通常は電流が流れない絶縁状態の大気が、高電界によって電子やイオンが大量に発生し電流が流れる状態になったときに起こり、多くの場合、発光が見られます。2つの電極に電圧を加えると、電極間に電界が発生します。この電界は電圧に比例するため、放電が生じる高電界を高電圧(電圧は電界を積分)で表すことができます。このため、多くの場合、電界の代わりに電圧を放電の発生条件としています。

図1:雷雨の稲妻

図1:雷雨の稲妻

・電荷の発生

電子の持っている電気の量を電荷といい、単位はC(クーロン)で表します。1Aの電流を流すには、1秒間に1Cの電荷が移動します。大気中で高電圧・高電界を作るには、正電荷と負電荷が存在する必要があります。実験室では、2つの電極に電圧を印加して電極上に正電荷と負電荷を発生させ、電極間に電界を作ります。自然雷では大地を1つの電極と考え、対向電極は雷雲内の電荷群と考えます。雷雲内の電荷生成速度は約50C/km3・hで、雷雲の平均活動寿命は約30分から60分と短く、負電荷は20~30Cが雷雲下部に分布し、正電荷は数km上空に分布しています。

帯電機構には、さまざまな説が考えられています。水滴が落下時に分裂し帯電する説や、自然電界で水滴が偏極して落下時に周囲電荷を吸収し、負に帯電するとする説などが考えられました。しかし、電荷の生成速度を説明できませんでした。現在は、水滴ではなく氷晶帯電説が有力となっています。

氷晶帯電説とは、氷やあられがそれぞれ異なる極性に帯電する現象です(図2)。雲の上部では気温が低下するため、水蒸気が氷結し、氷やあられとなります。雷雲のような上昇気流の中で氷晶とあられが衝突すると、低温では氷晶が正に、あられが負に帯電します。氷晶は軽いために上昇する一方、あられは下降し、氷晶が負に帯電することで、雷雲の下部には負電荷が、上部には正電荷が多くなります。また、雷雲下部に正電荷の小領域が発生することがあります。この原因には、地上の樹木や構築物からの正イオンの供給、あるいは、氷晶は高温では正に帯電するという現象などが考えられています。

図2:氷晶帯電説のメカニズム

図2:氷晶帯電説のメカニズム

なお、冬季雷と呼ばれる、冬季の日本海沿岸に発生する雷では、強い季節風と地表面の低温によって正電荷領域が低い高度になり、雷雲が横になびく、すなわち正電荷の領域が地上に近づくことで、正電荷の雲が地上との間に雷を発生させます。この雷は、夏季の雷と逆極性のものが多く、正極性の雷の代表的なものとしてあげられます。夏季雷と比較して放電エネルギーが大きく、電気設備に大きな被害を及ぼす傾向があるため、日本海側の大規模発電設備・送電設備の雷被害対策で問題とされ、研究調査が行われた結果、明らかになった雷です。

・雷雲の発生

電荷が分布する雷雲の発生には上昇気流が必要であり、その代表が積乱雲です。その発生には熱雷と界雷(前線雷)があります。

熱雷は、夏季の強い日射で地上付近の空気が熱せられ、その結果生じる上昇気流によって発生する雷です。山岳地帯で発生するものを山岳雷という場合があります。界雷は、寒冷な空気が温暖な空気の下に流入する寒冷前線や、温暖な空気が寒冷な空気の上に乗り上げる温暖前線で、上昇気流によって発生する雷です。

雷には他に、火山の噴煙の中で発生する雷(火山雷)、砂嵐や大火災、大爆発などの気流内で微粒子が衝突して帯電することによる雷などもあります。図3に雷雲の構造を示します。多くの雷雲は、直径5~10km、高さ10kmくらいの大きさのセルが数個集まってできています。雷雲の上空の成層圏でも、雷放電が数10kmにわたり発光することがあり、スプライトと呼ばれる発光が確認されています。

図3:雷雲

図3:雷雲

2. 雷放電の特徴

雷放電では、放電路(雷道)の距離が1km~数kmにもなります。雷雲は、電極のように導電率が高くなく、大量の正負の電荷が空間に分布しています。また、放電開始は気圧と温度の影響(空気密度)を受け、雷放電は地上付近の温度・気圧から、成層圏近くの低温・低気圧と空気密度変化が影響し、大きな放電となります。

雷雲から地上に向かうリーダを下向きリーダと呼びます。逆に、地上の建造物(鉄塔、電柱、送電線、建物)や樹木の電界が高くなる先端部分から発生し、雷雲に向かうリーダを上向きリーダと呼びます。リーダの進行方向は地上に向かうとは限らず、雲方向や水平方向にも進みます。このため雷放電は、雷雲内で放電が完結する雲間放電が9割以上を占め、一部が大地に向かい落雷(対地雷撃)となります。

対地雷撃は雲から地上まで、放電長が約1~2kmにもおよぶ長大放電です。稲妻はぎざぎざに曲がり、枝分かれしています。図4は、横軸(時間軸)を動かしながら写真を撮ったとした場合の、雷撃の状態を表したものです。右下がりの直線は光が雲から大地へ、右上がりの直線は光が大地から雲へ向かって動いていることを示しています。

図4:落雷

図4:落雷

まず雲から大地へ向かって、階段状リーダ(stepped leader)と呼ばれる放電路が伸びはじめます。階段状リーダは、約1μsの間に50mぐらい伸びたあと約50μs休み、次は約2μsの間に約100m伸びて約50μs休むというように、およそ50mずつ伸びては休みながら伸びていきます。この伸びをステップ長、停止時間をステップ間隔といい、平均値は40~50m、50μsが測定されています。階段状リーダは大地に垂直に伸びるとは限らず、分岐したり、途中で伸びが止まって別な部分から伸びたり複雑な形状を示します。

下向き階段状リーダが地上に近づくと、地上から伸びる上向きリーダと出会う現象が起こります。交合すると、雷雲が負に帯電しているならば大地から正電荷が向かい、雷雲内の電荷を中和します。強い発光となり、これを主放電(帰還雷撃)と呼びます。リーダの交合点から大地への放電は強い発光で、短時間で起こるため、ファイナルジャンプと呼ばれます。

階段状リーダの先端が地上へ達すると、主放電(return stroke)が光速の数分の1の速度で大地から雲へ向かいます。このとき、下向きリーダのチャネル(雷道)は大電流の加熱によって数1,000℃~数10,000℃のプラズマになり、強い光(稲妻)と、急激な発熱によって大気が膨張するときの衝撃波(雷鳴)を発します。これが第1雷撃で、雷撃のうち約半数はこれで終了するものの、残りの半数は第2雷撃以降が続く多重雷になります。第1雷撃で電荷の中和が不完全であれば、残りの電荷は第2雷撃以降の放電エネルギーとなります。第2雷撃からは、雲から連続的に矢形リーダ(dart leader)が伸びて、地上に達すると主放電が上空に伸びます。

リーダの段階では弱い発光であり、また短時間の現象のため、肉眼で確認するのは困難です。従って、私たちが目にする稲妻は主放電となります。落雷では、稲妻が上空から大地へ光が伸びるように見えます。しかし、実際には地上から雲へ向かって上昇しているわけです。

・雷の特性量

雷を特徴づける各種の量について説明します。雷を知るには、リーダを含めた放電時の発光を静止写真、高速ビデオ、高速流し撮りカメラなどで記録する光学的手法と、電流や電磁界などの電気的特性を測定する電気的手法が使用されます。

年間雷雨日数:
観測ステーションで1年間に雷鳴が聞こえた日数を年間雷雨日数(IKL:Isokeraunic level)と呼び、雷対策の基礎データの1つです。年間雷雨日数は、各地の落雷の発生の尺度として長らく使用されてきました。年間、1km2当たりの落雷数(大地雷撃密度)は、雷雨日数を10で割って求めています。雷雨日数は世界各地で計測されており、中でもIKLが高い地域は、日本では北関東、南九州、南四国、南紀州などの太平洋岸、山形、越後、越前などの日本海側で約30~40日となります。アメリカ南部フロリダでは、約100日にもなる地域があります。電磁界観測法では、主放電の大電流で発生する磁界・電界・電磁界を測定し、IKLよりも正確に雷放電を捕捉することができます。

電流:
電流は、雷の大きさを表す量として使用し、送電・配電・建造物などへの落雷の可能性や、被害を予測するために使用する重要量です。マストやタワー、鉄塔に落雷するときの電流(数kAから数100kA)の波高値と波形を、電流計で測定します。また、電磁波の測定からも電流を推定することができます。

電界:
電解は、電圧がかかっている空間の状態を表します。静電界を計測するフィールドミルと呼ばれる電界計があり、雷雲や電荷群が接近する時の電界を計測できます。しかし、落雷時に急変する電界測定のような短時間の測定には向いていません。雷放電の電磁界変化のように、急変する電界を測定するためにはアンテナを用います。電荷の変化による電界変化はスローアンテナで、主放電による放射電磁界はファーストアンテナで観測しています。雷雲内のリーダの進展では、VHF周波数帯の電磁波成分が多く放射されるため、アンテナを使用することで、光学的な観測の困難な雷雲内現象を観測することができます。電磁波から放電位置を決める方法として、以下の3種類が使用されています。

1:到達時間作法 複数のアンテナへの電磁波の到達時間差から、放射位置を求める方法。
2:干渉法 複数のアンテナへの電磁波の位相差から、放射位置を求める方法。電波天文学で使用される。
3:交会法 4つの指向性アンテナで放射電磁パルスを受信し、信号強度から放電パルスの到来方向・位置を推定する方法

レーダ観測:
レーダ観測は、発射した電波が戻ってくるまでの時間から雨や雪までの距離を測り、戻ってきた電波の強さから雨や雪の強さを観測する方法です。マイクロ波帯(波長1~10㎝)のレーダを使用すると、雲内の雨滴やあられ、雹(ひょう)などによる電波の散乱エコーが発生します。気象レーダは、その散乱の強度や広がりから雷雲の観測をすることができます。最近では、さらに高性能なドップラーレーダや二重偏波レーダも使用されるようになってきました。ドップラーレーダは、粒子の移動速度を測定できるため、雲内の風の状態を観測できます。また、二重偏波レーダは粒子形状を推定でき、雷雲中の氷晶の分布まで明らかにできるため、電荷の形成過程の解明が期待できます。

雷の電圧:
雷の電圧は、数億ボルトといわれます。しかし、これは電圧計で測定したものではありません。たとえ数100m以上離れた2点間にバルーンやロケットを使った測定線を張ることができても、その測定線で電荷が変化してしまうため、電圧を測定することは困難です。電圧は電界の積分になるので、大地から雷雲までの電界を積分できれば、雷雲の電圧が得られます。雷雲下の地表面の電界は30~100kV/mとなるので、1kmの高さの雷雲の電圧は、雷雲まで一定電界を100kV/m とすれば、電界と1,000mの積から、1億ボルトと見積もることができます。他の方法として、雷電流と放電チャネルのインピーダンス(電圧と電流の比)から電圧を求めることができます。

落雷のエネルギー:
雷撃1回で中和される電荷量を約5Cとすれば、雷撃エネルギーは約250kWhとなります。この電力量は、一般家庭の1カ月分程度です。ところが、ミリ秒以下で発生するためにピークの大きなエネルギーとなり、ピーク時の電力量は大規模発電所に相当します。このことから、雷放電のような短時間に発生する大きなエネルギーを利用するパルスパワー技術も生まれています。

いかがでしたか? 今回は、雷発生のメカニズムと雷放電の特徴を紹介しました。次回は、雷による障害や被害である雷害について解説します。お楽しみに!

関連記事

    同じカテゴリの記事

      ピックアップ記事

      tags