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サイズ公差の表し方:機械製図の基礎知識(設計精度保証編)1

機械製図の基礎知識(設計精度保証編)

更新日:2021年1月6日(初回投稿)
著者:Material工房・テクノフレキス 代表 藤崎 淳子
監修:株式会社ラブノーツ 代表取締役 技術士(機械部門) 山田 学

図面は、製造に関わる全ての人に設計者の意図を伝える手段です。設計意図を正しく反映した製品を作るには、材質と形状と寸法に加えて、精度を保証するための情報を図面に記す必要があります。本連載では6回にわたり、図面に設計精度を織り込むための基礎知識と、機械要素の描き方を解説します。第1回は、公差の考え方を説明します。公差とは、部品を加工する際に生じる寸法のばらつきで、許容される誤差です。

なお、2016年のJIS改正により、寸法は大きさと位置に分類し、大きさに関する精度はサイズ公差、位置に関する精度は幾何公差で指示すべきと提言されました。本シリーズでは、幾何公差との関連を同時に説明することが難しいため、従来から日本国内で使用している寸法公差の概念で説明します。

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1. 公差がなかったらどうなるのか

もしも公差という概念が存在しなかったら、寸法数値ぴったりで加工をしなければならなくなります。すると、加工工数がむやみに増える上に、量産性を考えると、加工の歩留まりが悪くなり、製品の単価が著しく上がります。そこで、ある一定の範囲であれば寸法がばらついてもよいことにします。これが、寸法公差です。

前連載、機械製図の基礎知識の第9回で述べた普通許容差は、寸法に表さなくても、ある限られた公差内に加工しなければいけないという、暗黙の了解の下に存在する基準でした。精度を要求しない寸法にはこれを適用します。ただし、加工のばらつきを最小限に抑えたい場合や、寸法誤差が一定の範囲内に収まっていなければならない場合などは、普通許容差よりもさらに厳しい公差を、寸法に続けて記入します。つまり、寸法公差は普通許容差の範囲よりも高い精度を指示するためにあります。この公差が大きいほど歩留まりがよくなり、加工工数を削減できるので、コストを下げることができます。

寸法公差を考えるとき、最も悩ましいのが公差値の決め方です。実は、寸法公差の値には正解がありません。性能とコストは相反する関係にあります(図1)。

図1:性能とコストの関係

図1:性能とコストの関係

公差の数値は、コストを抑えながらも、ある程度の性能を保てるグレーゾーンの中で決めていくしかありません。実際には、自社において実績のある公差値を参考にすることになります。

2. 寸法公差の記入の仕方

長さの寸法公差の記入は、数値によって表す方法が一般的です。公差が基準寸法に対して均等な場合は、寸法数値の後ろに±(プラス・マイナスの記号)とともに数値を記入します。一方、基準寸法に対して不均等の場合は、寸法数値の後ろに公差を2段に重ね、上段に上の寸法許容差を、下段に下の寸法許容差を記入します。寸法許容差の数値には単位を付ける必要はありません(図2)。

寸法公差を記入する文字サイズには、特にルールはありません。寸法数値よりも小さく記入して、見やすくするのが一般的です。また、公差がゼロから始まる場合、ゼロに+や-の符号は付けません。

図2:長さ寸法公差の指示例

図2:長さ寸法公差の指示例

公差は、単に基準寸法に近ければよい場合と、そうでない場合があります。寸法公差には設計意図に応じた次の2つの考え方があります。

・目標とする基準寸法に対して、その寸法を中心に均等に振り分けて記入する場合(図3)。

図3:長さ寸法公差記入例(寸法を中心に均等に振り分けて記入)

図3:長さ寸法公差記入例(寸法を中心に均等に振り分けて記入)

・目標とする基準寸法に対して、ある一方向に片寄せて公差を記入する場合(図4)。

図4:長さ寸法公差記入例(ある一方向に片寄せて公差を記入)

図4:長さ寸法公差記入例(ある一方向に片寄せて公差を記入)

3. 角度公差の記入ルール

角度の公差の記入ルールは、長さの公差の記入と同じと考えて問題ありません。ただし、長さ寸法と違って、必ず角度の単位記号(°)を付ける必要があります。角度の公差を指示する場合、度(°)の他に、分(′)を使うことができます。分(′)は時計と同じで、1度(°)=60分(′)と解釈します。角度の単位に分(′)を使用する場合は、度(°)の単位の後に記入します(図5)。

図5:角度寸法公差記入例

図5:角度寸法公差記入例

4. 累積公差の考え方

公差を記入する場合には、1つの部品に複数の形状があり、それらが相互に関連して寸法が累積する場合(図6)と、個別の形状を持った複数の部品が、積み木を重ねるように相互に関連して寸法が累積する場合があります(図7)。これら2つの事例は、全く同じように考えることができます。

図6:基準面からの公差の累積事例(1つの部品に複数の形状がある場合)

図6:基準面からの公差の累積事例(1つの部品に複数の形状がある場合)

図7:基準面からの公差の累積事例(個別の形状を持った複数の部品が積み重なった場合)

図7:基準面からの公差の累積事例(個別の形状を持った複数の部品が積み重なった場合)

例えば、部品A、B、C、Dの4つの部品を積み重ねたものを、別の枠にできる限りガタ(がたつき)を少なくして挿入したい場合を考えてみます(図8)。

図8:累積公差の検討例

図8:累積公差の検討例

ここで、枠の寸法について2つの検討方法があります。算術的な公差、または、分散の加法性を使った統計的な公差の検討方法です(表1)。

表1:公差検討方法の違い

表1:公差検討方法の違い

それぞれの検討方法を詳しく説く前に、正規分布と一様分布について説明します(図9)。正規分布とは、平均値の度数を中心にして正負の度数が同程度に広がる分布をいいます。富士山のようにきれいな山型の曲線で表されます。寸法が正規分布で表された場合、寸法公差ギリギリで出来上がる製品は極めて少なくなります。

一様分布とは、平均値を中心にした山型にはならず、度数が一様に広がる分布をいいます。寸法が一様分布で表された場合、寸法公差ギリギリで出来上がる製品は多くなります。

図9:正規分布と一様分布

図9:正規分布と一様分布

以下に、算術的な公差、および分散の加法性を使った統計的な公差による検討方法を解説します。

・算術的な公差
算術的な公差は、直列に積み上げた場合の寸法公差を単純に足したものです。生産ロットが少ない場合(汎用機械による加工)や、大量生産品でも図面に記載した基準寸法に対して、ばらつきが正規分布でない場合に使う手法です。算術的な公差Sの求め方は、以下になります。

算術的な公差S=50+50+50+50±(0.1+0.1+0.1+0.1)=200±0.4

従って、枠の寸法は200.4以上に設計しないと、部品Aから部品Dまでの4部品を重ねて挿入できないことになります。

・分散の加工性を使った統計的な公差
分散の加法性を使った統計的な公差は、公差を2乗したものを足してルート(√)したものです。生産ロットが多い大量生産部品(自動化機械による加工)で、寸法のばらつきが正規分布になることを前提にする場合に使う手法です。統計的な公差Sの求め方は、以下になります。

統計的な公差S=50+50+50+50±√(0.1)2+(0.1)2+ (0.1)2+(0.1)2=200±0.2

算術的な公差は、部品点数の増加に比例して大きくなります。一方、分散の加法性を使った統計的な公差では、あまり変化がありません(図10)。

図10:公差検討手法ごとの寸法公差の変化

図10:公差検討手法ごとの寸法公差の変化

いかがでしたか? 今回は、普通許容差よりも厳しい精度を指示する寸法公差の考え方と、長さ寸法、角度寸法における記入ルールを解説しました。公差は累積するものであること、正規分布が成り立つ条件下では、寸法公差ギリギリの部品が出来上がる確率が極めて低くなることから統計的な公差検討を採用できることが理解できたと思います。次回は、サイズ公差と許容差を取り上げます。お楽しみに!

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