ねじの製図:機械製図の基礎知識(設計精度保証編)5
投稿日:
- 2021年04月20日
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カテゴリ:
- 基礎知識
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前回は、表面性状の考え方を紹介しました。今回は、ねじの製図について解説します。ねじの製図には、これまでに学んだ機械製図とは異なるルールがあります。ねじの種類と、図面での表し方について、詳しく説明します。
1. ねじの種類
ねじには、外側にねじ山を持つおねじと、内側にねじ山を持つめねじがあります。また、右に回転させて締め込むねじを右ねじ、左に回転させて締め込むねじを左ねじといいます。一般的なねじは、右ねじです。
ねじには、さまざまな分類方法があります。
・ねじ山の形による分類(表1)
(例)三角ねじ、角ねじ、台形ねじ、鋸(のこ)歯ねじ、丸ねじ、ボールねじなど
名称 | 特徴 | 形状 |
三角ねじ | 一般的に締結用に用いられます。 ピッチの単位によって、メートルねじ(ミリメートル)、ユニファイねじ(インチ)があります。ねじ山の角度は60°です(写真上)。 管(くだ)用ねじはインチねじの一種です。ねじ山の角度は55°です(写真下)。 |
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角ねじ | ジャッキや万力、バイスの締め付けなど、大きな力の伝達用に用いられます。 |
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台形ねじ | 旋盤など工作機械の送り用ねじとして用いられます。 |
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鋸(のこ)歯ねじ | ねじ山の断面が、角ねじと三角ねじを組み合わせたのこぎりの刃のような形状をしています。一方向からのみ大きな力が作用する場合に使用します。 |
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・ボルトやナットなど、形状や寸法、強度などによる分類
(例)十字穴付きねじ、六角ボルト、六角ナットなど
・ねじ山のピッチによる分類
(例)メートル並目ねじ、メートル細目ねじ、メートル台形ねじ、管用ねじなど
ピッチとは隣り合ったねじ山の中心同士を結んだ間隔をいいます(図1)。
ねじ山のピッチで分類されるねじには、次のようなものがあります。
- メートル並目ねじ(M):(例)M8
- メートル細目ねじ(M):(例)M8×1
- ミニチュアねじ(S):(例)S0.5
- メートル台形ねじ(Tr):(例)Tr10×2
- 管用テーパおねじ(R):(例)R3/4
- 管用テーパめねじ(Rc):(例)Rc3/4
- 管用平行めねじ(G):(例)G1/2
- ユニファイ並目ねじ:(例)3/8-16UNC
- ユニファイ細目ねじ:(例)No.8-36UNF
管用ねじは、主に肉厚の薄い管や流体機器などの接続として、ねじ部の耐密性を主とした目的に使用されます(表2)。
管用ねじの種類 | ねじの記号 | 特徴 | |
管用平行ねじ | 平行おねじ | G (A、またはBを付ける) 例:G1/2A |
機械的接合を主目的とする。管用平行おねじと管用平行めねじを組み合わせて使い、どちらも記号Gを付けて表示する。ただし、おねじには有効径の許容差によって等級を表す記号(A、またはB)を付ける。 |
平行めねじ | G※1 | ||
管用テーパねじ | テーパおねじ | R | ねじ部の耐密性を主目的とする。ねじ全体が 1/16テーパになっており、水道管などに見られる白いシールテープをねじ部に数周程度巻きつけた後、締め込むことで耐密性を高める。 |
テーパめねじ | Rc | ||
平行めねじ | Rp※2 |
ユニファイねじは、アメリカで使われているインチ規格のねじです。日本国内でも、カメラと三脚を固定するねじや、折りたたみ傘の先端の保護キャップ、航空機などに使われています。
2. おねじとめねじの図示の仕方
ねじは、一般的に軸に直角な方向から見た図を正面図とし、JISによって図示方法が決まっています。図2に、ねじ部の名称を示します。呼び長さと、ねじ長さの違いを理解しましょう。なお、呼び長さをL(エル)長さともいいます。
機械製図では、ねじは太い実線と細い実線を組み合わせた二重円を用いて表します。おねじは外径の線を太い実線で、ねじの谷底の線を細い実線で表します。一方、めねじは内径の線を太い実線で、ねじの谷底の線を細い実線で表します。
ねじの谷底を表す細い実線は、円周の3/4にほぼ等しい円の一部で表し、やむを得ない場合を除いて、右上方1/4円を空けるのがよいと規定されています(図3)。やむを得ない場合とは、寸法の矢が右上方からしか引き出せない場合や、図形の省略によってねじの投影図が半分しか描けない場合などです。その場合、右上方以外で1/4円を空けることができます。
ねじ部には、一般的に三角のらせん状の突起があります。しかし、機械製図では、この詳細な形状は描かず、代わりに簡略図を用います(図4)。
隠れたねじを表すときは、ねじ山の頂、および谷底は、ともに細い破線で表します(図5)。
断面図で表すめねじにハッチングを施す場合は、ねじの山の頂を示す線まで延ばして描きます(図6)。
3. ねじの寸法記入
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