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鉄鋼材料の種類と性質:金属熱処理の基礎知識2

金属熱処理の基礎知識1 新たな特性を引き出す熱処理の種類

更新日:2016年3月4日(初回投稿)
著者:仁平技術士事務所 所長 仁平 宣弘

前回は、金属の特性を引き出す熱処理技術を紹介しました。今回は、鉄鋼材料のさまざまな種類と記号、用途に応じた多様な性質について解説します。

1. 鉄鋼材料の種類と種別記号

鉄鋼材料には、主成分の鉄 Fe以外にも、炭素 C、ケイ素 Si、マンガン Mn、リン P、硫黄 Sが必ず含まれています。これらの元素は、原材料の鉄鉱石に混入しているか製鋼過程で添加されるもので、「鋼の5元素」と呼ばれています。

5元素の中で特に重要なのは、炭素です。炭素の含有量によって、鉄鋼材料は大きく2つに分類されます。すなわち、炭素が0.006mass%以下のものが「純鉄(α-Fe)」、0.006mass%を超えるものが「鋼(はがね)」です。ただし、鉄鋼の炭素量は最大でも2mass%程度で、それを超えると「鋳鉄」と呼ばれます。

また鉄鋼材料の耐摩耗性、引張強さ、じん性、耐食性、耐熱性などを向上させる目的で、5元素以外の合金元素(クロム Cr、モリブデン Mo、タングステン W、バナジウム V、ニッケル Ni、ホウ素 Bなど)を添加した鋼種もよく使用されています。

このように鉄鋼材料には多くの種類があります。JISに規定されている鉄鋼材料の中から比較的使用量の多いものについて、その分類と、個々の代表的な種別記号および主な用途を表1に示します。

表1:JISで規定されている主な鉄鋼材料の種類
分類JIS主な用途
規格番号代表的な種別記号
圧延鋼材一般構造用圧延鋼材G 3101(2010)SS400橋、船舶、車両、その他構造物
溶接構造用圧延鋼材G 3106(2008)SM400BSSと同様で溶接性重視のもの
建築構造用圧延鋼材G 3136(2012)SN400B建築構造物
圧延鋼板・鋼帯冷間圧延鋼板・鋼帯G 3141(2011)SPCC各種機械部品、自動車車体
熱間圧延軟鋼板・鋼帯G 3131(2011)SPHC建築物、各種構造物
線材ピアノ線材G 3502(2013)SWRS80Aより線、ワイヤーロープ
軟鋼線材G 3505(2004)SWRM12鉄線、亜鉛めっきより線
硬鋼線材G 3506(2004)SWRH47B亜鉛めっきより線、ワイヤーロープ
冷間圧造用炭素鋼線材G 3507-1(2010)SWRCH20Aボルトや機械部品など冷間圧造品
冷間圧造用ボロン鋼線材G 3508-1(2010)SWRCHB334ボルトや機械部品など冷間圧造品
冷間圧造用合金鋼鋼材G 3509-1(2010)SCM440RCH高強度・高靱性を重視した冷間圧造品
機械構造用鋼機械構造用炭素鋼鋼材G 4051(2009)S45C一般的な機械構造用部品
焼入性を保証した構造用鋼鋼材G 4052(2008)SCM440H肉厚の大型機械構造用部品
機械構造用合金鋼鋼材G 4053(2008)SCM440高強度・高靭性を重視した機械構造用部品
工具鋼炭素工具鋼鋼材G 4401(2009)SK85プレス型、刃物、刻印
高速度工具鋼鋼材G 4403(2006)SKH51切削工具、刃物、冷間鍛造型
合金工具鋼鋼材G 4404(2006)SKS3、SKD11冷間鍛造型、プレス型など各種金型
特殊用途鋼ステンレス鋼棒G 4303(2005)SUS304耐食性を重視した各種部品、刃物
耐熱鋼棒及び線材G 4311(2011)SUH310耐食・耐熱性を重視した各種部品
ばね鋼鋼材G 4801(2011)SUP10各種コイルばね、重ね板ばね
高炭素クロム軸受鋼鋼材G 4805(2008)SUJ2転がり軸受
快削鋼鋼材G 4804(2008)SUM24L加工精度を重視した各種部品
鋳鉄ねずみ鋳鉄品G 5501(2010)FC300機械のカバー、エンジン部品、機械部品
球状黒鉛鋳鉄品G 5502(2006)FCD600水道用鋳鉄管、自動車用部品、構造用部品

1文字目の「S」または「F」は、それぞれSteel(鋼)、Ferrum(鉄:ラテン語)の頭文字です。その後に続くアルファベットは、鉄鋼材料の用途や、含有している合金元素を表しています。例えば、「SUP(ばね鋼)」のUはUse(用途)、PはSpring(ばね)を、「SCM(クロムモリブデン鋼)」のCはクロム Cr、Mはモリブデン Moを意味しています(表2)。

表2:主な鉄鋼材料の記号(JISより)
記号意味記号意味
SSSteel StructureSCM**HSteel Cr Mo ** Hardnability(焼入性)
SMSteel MarineSKSteel Kougu(工具)
SNSteel New structureSKHSteel Kougu High speed
SPCSteel Plate ColdSKSSteel Kougu Special
SPHSteel Plate HotSKDSteel Kougu Dies
SWRSSteel Wire Rod SpringSUSSteel Use Stainless
SWRMSteel Wire Rod MildSUHSteel Use Heat resisting
SWRHSteel Wire Rod HardSUPSteel Use sPring
SWRCHSteel Wire Rod Cold HeadingSUJSteel Use Jikuuke(軸受)
SWRCHBSteel Wire Rod Cold Heading Boron(ホウ素)SUMSteel Use Machinability(被削性)
S**CSteel ** Carbon(炭素)FCFerrum Casting(鋳造)
SCMSteel Cr MoFCDFerrum Casting Ductile(延性)

また多くの種別記号では、アルファベットの後に1~3桁の数字が続きます。これらは炭素または合金元素の含有量や、引張強さなどを表し、意味は分類によって異なります(特に意味のない番号の場合もあります)。種別記号の詳細はJISで確認できます。

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2. 鉄鋼材料の熱膨張係数

温度の上昇に対応して物体が膨張する割合を、熱膨張係数といいます。熱膨張係数には「体膨張係数(体積が変化する割合)」と「線膨張係数(長さが変化する割合)」があり、鉄鋼材料では線膨張係数で表示されるのが一般的です。鉄鋼材料の線膨張係数は、合金元素の種類や含有量により大きく変動します。

例えば炭素鋼の場合、炭素量が多いものほど線膨張係数は小さくなります。また同一鋼種であっても、熱処理条件や金属組織によって、線膨張係数は多少の影響を受けます。

以下に示すのは、炭素鋼および2種類のステンレス鋼の、0~100℃における線膨張係数です。ステンレス鋼は、炭素鋼よりも大きく寸法変化することが分かります。またステンレス鋼でも、合金元素の含有量により線膨張係数が異なります。

  • 炭素鋼: 約11×10-6/℃
  • 18Cr-8Niステンレス鋼: 約17×10-6/℃
  • 25Cr-20Niステンレス鋼: 約14×10-6/℃

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3. 鉄鋼材料の熱伝導率と電気抵抗率

鉄鋼材料の熱伝導率は、炭素やその他合金元素の含有量が多いほど、小さくなります。例えば常温における純鉄の熱伝導率は、約50W/m・℃なのに対し、より炭素量の多いばね鋼の熱伝導率は純鉄の約1/2、ステンレス鋼では約1/3となります。

また同一鋼種であっても、熱処理条件や金属組織によって熱伝導率は異なります。ただし高温になるにつれその差異は小さくなり、800~1,000℃になると、すべての鉄鋼材料の熱伝導率は約20W/m・℃に収束します。

一方、鉄鋼材料の電気抵抗率は、炭素やその他合金元素の含有量が多いほど、大きくなります。例えば、20℃における炭素鋼の電気抵抗率は12~20μΩ・cm、ステンレス鋼は50~70μΩ・cmです。これは、前述の熱伝導率とは逆の傾向にあります。

すなわち、炭素やその他合金元素の含有量が少ないほど、熱をよく伝え、電気をよく通します。ただし高温になるにつれその差異が小さくなるという点においては、熱伝導率と同様です。1,000℃のときの電気抵抗率は、鋼種に関係なく約120μΩ・cmとなります。

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4. 鉄鋼材料の結晶粒度と特性

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

5. 硬さと機械的性質の関係

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

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