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金属材料とは:金属材料の基礎知識1

 
金属材料の基礎知識
更新日:2019年6月5日(初回投稿)
著者:東京都立産業技術研究センター 上席研究員 博士(工学) 青沼 昌幸

金属は古くから使われている材料で、非常に奥が深いです。金属材料は長い間、小型の道具、乗り物から建築物まで、幅広く使われてきました。金属材料はまだまだモノづくりの主役であり、金属製品を見かけない日はないでしょう。本連載では、6回にわたり金属材料の基礎を説明します。鉄鋼や非鉄金属、各合金の性質がどのような要素で決められているのかなど、幅広く解説します。

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1. 金属材料とは?

金属材料とは、どのような性質や特性を持っているのでしょうか。それは、加工する上で非常に大事な要素になります。同じ化学成分の鉄鋼材料でも、鍛造品と鋳造品では性質が異なります。また、同じ番号のアルミニウム合金であっても、圧延や熱処理を施してあるかどうかで性質が違います。これらの違いを把握しておかないと、同じはずの材料をいつも通りに加工したのに、いつもと違う出来映えになってしまうということもあります。効率よく質の良い加工を行うためには、それぞれの金属材料がなぜ硬いのか、なぜ強いのか、なぜさびにくいのかなど、基礎的な知識を持つことが大切です。

2. 金属の特徴

金属には、いくつかの特徴があります。展延性があること、電気を通すこと、熱を通すこと、光沢をもつこと、常温で固体であること、などが代表的なものです。例外的には、展延性の著しく低いものや、水銀のように常温で液体の金属もありますが、基本的には上に挙げたことを特徴と考えて差し支えありません。私たちが普段使っている金属材料は、多くのものが合金と呼ばれるものです。合金とは、鉄やアルミニウムなどの純金属に他の元素を加えてできたものです。純金属に他の元素を加えることにより、実用上必要とされる性質を作り出すことができます。金属の代表的な性質には、延性(延びやすさ)、ぜい性(もろさ)、じん性(粘り強さ)などがあります。

3. 金属の強化法

金属の強化法について触れる前に、金属の変形とは何かについて説明します。金属の変形には大きく分けて、弾性変形と塑性変形があります。弾性変形とは、金属に力をかけて変形させた後、その力を抜くと形が元に戻る変形のことをいいます。ゴムのようにというと分かりやすいかもしれません。塑性変形とは、金属に力をかけて変形させた後、形が元に戻らない変形のことをいいます。これは、外力の大きさが弾性範囲を超えた場合に生じます。例えば、鉄の細い棒があったとします。手で軽く振り回せば、何度かしなって元の形に戻ります。これは弾性変形です。しかし、力任せに曲げるとそのままの形になって元に戻りません。これは塑性変形です。曲げ加工やプレス加工では、この塑性変形を利用しています。それでは、板をプレスして塑性変形させる時、その金属の板に何が起こっているのかを説明します。

構造用の金属をよく研磨して拡大すると、まず結晶が集まっているのが見えてきます(図1)。さらに高倍率の顕微鏡で拡大すると、原子が規則正しく並んでいるのが分かります(図2)。

図1:金属の拡大画像(走査型電子顕微鏡)

図1:金属の拡大画像(走査型電子顕微鏡)

図2:金属の拡大画像(透過型電子顕微鏡)

図2:金属の拡大画像(透過型電子顕微鏡)

規則正しく整然と並んだ状態のところに、外から強い力をかけて変形させるとすべり現象が起こり、原子の配列が乱れた場所ができます。すべった部分とすべらない部分の境界線での原子の配列の乱れを転位といいます。つまり、配列の乱れである転位が動きやすい材料は塑性変形しやすく、動きにくければ塑性変形しにくい材料ということになります。塑性変形とは、外から力をかけてこの転位を動かし、原子の並びを変えることになります(図3)。

図3:塑性変形における転位の移動

図3:塑性変形における転位の移動

その金属を塑性変形しにくくするには、転位が移動しにくい状態にすればよい、または転位の移動を妨げればよいということになります。この転位の移動を妨げる方法には、固溶強化、析出強化、加工硬化、結晶粒微細化強化、粒子分散強化などの方法があります(表1)。

表1:金属材料の強化法

表1:金属材料の強化法

固溶強化とは、原子の大きさの異なる他の元素を溶かして、結晶格子の規則性を乱し、転位の動きを抑制することをいいます。析出強化とは、転位が移動しにくい硬質粒子を析出させることにより金属の強度を上げることです。加工硬化とは、塑性変形させて転位密度を増やし、相互作用を利用して転位の動きを抑制する方法です。結晶粒微細化強化とは、転移が結晶粒界(多結晶体において2つ以上の小さな結晶の間に存在する界面)では動きにくいことを利用し、結晶を微細にすることで転位が動きにくい部分を増やす強化法です。粒子分散強化とは、粒子を混ぜて分散させて強度を上げる方法です。

鉄鋼に限らず、アルミニウム合金や銅合金なども、合金元素を加えたり、熱処理をしてこのような効果を得ることができ、多くの金属材料の特性の改善が図られています。これは、市販金属材料の強化と密接にかかわり、以後説明する合金にも使われている強化法です。鉄鋼やアルミニウム合金、銅や黄銅も、これらの方法を組み合わせて強化して使用されています。

いかがでしたか? 今回は、金属の特徴とその強化法について説明しました。次回は、鉄鋼について解説します。お楽しみに!

 

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