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金属における拡散:金属材料の基礎知識3

金属材料の基礎知識

更新日:2020年11月12日(初回投稿)
著者:岩谷産業株式会社中央研究所 技術顧問(大阪大学名誉教授) 中嶋 英雄

前回は、固体の相の温度や組成による変化を紹介しました。今回は、金属における拡散を取り上げます。拡散に関する知識は、金属材料の内部で起こる変化を理解するのに必要不可欠です。時効析出、析出物の粗大化、酸化、回復再結晶、粒成長、クリープといったさまざまな過程は、全て拡散によって律速されています。従って、金属材料を製造、および使用する場合にも、拡散の知識は欠かせません。特に、高機能性やナノスケール加工を必要とする先端技術材料の分野では、拡散の現象論だけではなく、その原子的機構をも理解する必要があります。

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1. 拡散の現象論

コップの水に垂らした1滴のインクは水をかき混ぜなくても広がって全体を淡く色付けます。これは水の中でインクの分子の拡散が起こっているためです。気体や液体に比べて固体中の原子の動きは遅いものの、原子の拡散は進行しています。また、高温になるほど拡散は起こりやすくなります。図1に、純Feと炭素を含むFeの棒を接合し、高温に保持した場合の濃度分布の時間変化を示します。長時間が経過すると炭素が拡散し、炭素濃度は均一になります。初期(t=0)と無限時間(t=∞)の中間の時間では、破線で示したような分布になります。

図1:拡散対の濃度分布の時間変化

図1:拡散対の濃度分布の時間変化

溶質原子の流れJは濃度勾配に比例するので、以下の式で表すことができます。

ここで、Jは溶質原子の流速(単位時間当たりの単位面積を通過する粒子数)あるいはモル数であり、単位はmol/m2sです。Dは拡散係数と呼ばれ、単位はm2s-1と示されます。cは単位体積に含まれる溶質原子の量でモル濃度molm-3です。この式はフィックの第1法則と呼ばれています。フィックの法則とは、拡散による濃度変化を表す法則で、第1法則の他、第2法則があります。

次に、小体積中への溶質の出入りを考えてみましょう(図2)。

図2:溶質濃度変化の説明図

図2:溶質濃度変化の説明図

図2に示すように、時間Δtの間に、x~x+∆xの領域に流入する単位面積当たりの溶質の量は[J(x)-J(x+∆x)]∆tです。これがその間の溶質濃度の増加∆cとなるため、以下の式が成り立ちます。

これに先の式を代入すると、以下に示す式となります(拡散方程式)。

さらに、Dがxに依存しない場合には、以下のように表すことができ、この式はフィックの第2法則と呼ばれています。

拡散方程式に初期条件、および境界条件を設定して方程式を解くと、拡散濃度分布を求めることができます。その一例として、無限に長い棒(x=±∞)の1カ所(x=0)に時刻t=0で全量M(単位面積当たり)の溶質を置いたときの濃度分布は、以下に示す正規分布の形となります。

この式が、拡散方程式と、以下の濃度保存の式を満たしています。

時間がたつにつれて、濃度分布は拡散によって広がっていきます(図3)。時間t経過後の試料中の深さ方向の濃度分布を測定することで、濃度保存の式に基づいて拡散係数を求めることができます。

図3:溶質濃度分布の時間変化(初期条件:t=0のときにx=0にのみ溶質が存在する)

図3:溶質濃度分布の時間変化(初期条件:t=0のときにx=0にのみ溶質が存在する)

2. さまざまな拡散機構

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3. 原子のジャンプ頻度と拡散係数

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4. 短回路拡散

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5. 金属中の拡散係数の温度依存性

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