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軽金属合金の強化法:金属材料の基礎知識6

金属材料の基礎知識

更新日:2021年3月26日(初回投稿)
著者:岩谷産業株式会社中央研究所 技術顧問(大阪大学名誉教授) 中嶋 英雄

前回は、炭素鋼、および合金鋼の強化方法を紹介しました。今回は、最終回です。チタン、アルミニウム、マグネシウムなど、軽金属合金の強化法を取り上げます。

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1. チタン

チタンは1,155K(約882℃)に同素変態点を持ち、それより低温ではhcp構造のα相、高温側ではbcc構造のβ相となります(第1回参照)。同素変態とは、純金属の中には、温度、圧力などの外的条件に応じて異なった結晶構造で存在するものがあり、これらの結晶構造の間で起こる変態のことをいいます。融点は1,941K(約1,668℃)と高く、比重は鉄とアルミニウムの中間です。また、熱膨張係数やヤング率(縦弾性係数:材料のひずみと応力の関係)が鉄よりも小さく、熱や電気の伝導性が著しく低いことが特徴です。一方、化学的性質から見ると、耐食性に優れていることが際立った特徴です。

チタンのα相はhcp構造であり、塑性変形には図1に示すように、すべりと双晶が関係します。塑性変形とは、外力を取り除いても変形したままのことです(第4回参照)。金属材料の塑性変形には、すべり変形と双晶変形があります。すべり変形は、ある面上を金属原子が一定の方向にすべることによる変形です。双晶変形は、ある面を境にして結晶格子が対称にずれる変形です。互いに特定の面を鏡映面とするような位置関係にあります。

一般にhcp構造は塑性変形が困難です。ただし、チタンは結晶の軸比c/aが理想軸比よりも小さいため、各すべりが活動しやすく、変形双晶(塑性変形によって形成された双晶)の発生が変形能を補っています。

図1:αチタンのすべり系と変形双晶系

図1:αチタンのすべり系と変形双晶系

しかしながら、それらの塑性挙動は、不純物、組織、温度などの影響を受けます。また、加工硬化(金属材料が塑性変形によって硬化する現象)、延性、変形能、あるいは集合組織の形成にも変化を生じさせます。図2に、不純物(酸素、窒素、炭素)が、チタンの硬度に及ぼす影響を示します。酸素が最も強い影響を与えることが分かります。

図2:チタンの硬さに及ぼす酸素、窒素、炭素含有量の影響

図2:チタンの硬さに及ぼす酸素、窒素、炭素含有量の影響

また、図3に示すように、酸素含有量が多くなると靭(じん)性の劣化を招きます。

図3:チタンの機械的性質と酸素の関係

図3:チタンの機械的性質と酸素の関係

チタンの特徴は、軽くて強いことです。耐食性にも優れています。図4に、チタン(JIS 2種、JIS 3種)とステンレス鋼(AISI 304)の耐力・密度比の比較を示します。室温から500K(約227℃)付近では、チタンはステンレス鋼より優れた耐力を示すことが分かります。

図4:チタンとステンレス鋼の耐力・密度比

図4:チタンとステンレス鋼の耐力・密度比

2. アルミニウム

アルミニウムは、その比重が鋼の1/3と小さいため、軽量化構造材料として利用されています。また、銅に次いで高い電気伝導度を示します。ただし、微量のクロム(Cr)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)を含有することで、電気伝導度は著しく低下します。なお、極低温では、銅よりも比抵抗(電気抵抗)が小さくなります。

弾性率を示す縦弾性係数(ヤング率)、剛性率、ポアソン比はそれぞれ75.7GPa、26.0GPa、0.33です。これらは、構造物の強度設計をする際に欠かせない値となります。活性な(さびやすい)金属で、酸素の存在により酸化します。ただし、表面に緻密なアルミナが形成され、内部の酸化を防止します。

・アルミニウムの機械的性質
アルミニウムの機械的性質は、純度、加工量、熱処理によって異なります。強さは冷間加工率の増加とともに加工硬化により上昇し、伸びは低下します。また、焼なましによって軟化します。焼なましとは組織を均一にしたり、軟らかくする熱処理です。

アルミニウムは、軟鋼のような降伏点を示しません(第4回参照)。合金元素を添加すると、固溶硬化、析出硬化などにより材料を硬化します。一般に、合金元素の固溶量の増加とともに強さは上昇します。これは、アルミニウムと合金元素との原子半径の差が大きいほど顕著で、格子ひずみにより強化されます。図5に示すように、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)の固溶量とともに、焼なましたアルミニウム合金の格子定数は変化し、それに伴って硬さが上昇します。固溶限を越えると、第2相が析出(過飽和な固溶体から溶質原子が母格子とは別の新しい相を形成する現象)、あるいは晶出(液体から結晶が析出すること)するため、硬さに変化が生じます。

図5:アルミニウムの溶質原子による格子定数と硬さの変化

図5:アルミニウムの溶質原子による格子定数と硬さの変化

・アルミニウム合金の時効析出
アルミニウム合金は、時効析出によって高強度化できます。時効析出には、溶体化、焼入れ、焼戻しの熱処理を行います。溶体化熱処理は、鋳物(いもの)の場合は、凝固時に晶出した非平衡相を固溶化させ、冷却時に析出した相を再固溶させるために行われます。また、展伸材では、凝固時の非平衡晶出相は均質化熱処理によって鋳塊の状態でほとんど固溶されます。そのため、溶体化は、熱間加工や中間焼なましなどで析出した相を再固溶させ、高温で、組成が均一な固溶体を得ることができます。

また、溶体化による高温状態で水中に焼き入れると、固溶体の状態を室温まで持ち来すことができます。この固溶体を、過飽和固溶体といいます。過飽和固溶体は不安定なため、室温で長時間保持すると相分解が生じ、第2相が析出します。これを自然時効(常温時効)といいます。この析出を促進するため、比較的低温に加熱する熱処理を焼戻しといいます。これを、自然時効に対し、人工時効(高温時効)と呼びます。

一般に、析出過程は、過飽和固溶体、G.P.ゾーン、中間相、安定相の順序で進行します。過飽和固溶体は、平衡溶解度以上に溶質を固溶している固溶体で、G.P.ゾーンとは、過飽和固溶体中に析出の先駆として見え始める固溶成分濃度の高い小領域のことです。(図6)。中間相とは、固体と液体のちょうど中間的状態で、安定相とは、結晶が最も安定して反応が止まったように見える状態をいいます。

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3. マグネシウム

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