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モータとは?:モータの基礎知識1

モータの基礎知識

更新日:2018年7月6日(初回投稿)
著者:東京都市大学 工学部 教授 工学博士 百目鬼 英雄

モータとは、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する装置の総称です。電動機とも呼ばれます。身近なところでは、携帯電話や白物家電、PCなどの電気機器には、ほとんど全てに使われています。さらに、産業用途でも、さまざまな駆動のためにモータは使われています。製造業の技術者とモータは、切っても切れない関係といえるでしょう。本連載では、皆さんが中学・高校で学んだであろうフレミングの左手・右手の法則からはじまり、各種モータの動作原理、モータの選定方法まで、全8回にわたり解説していきます。

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1. モータの定義と原理

モータと発電機は、どちらも電気的エネルギーと機械的仕事を変換させる装置です。電気エネルギーを使って機械的仕事を行う装置をモータと呼び、逆に機械的仕事を電気エネルギーに変換する装置を発電機と呼びます。磁場の中にある導体に電流を流すか、磁場の中で導体を動かすかによって、モータと発電機のどちらになるかが決まります。電磁力発生の基本原理は、フレミングの左手・右手の法則で説明することができます。

図1は、磁場中の導体に電流を流すことで、力が発生する様子を示しています。力の発生は、フレミング左手の法則で説明することができます。磁界の強さをB(T)、電流の大きさをi(A)、磁場中の導体の長さをl(m)とすると、マクスウェルの式によりローレンツ力F=Bli(N)の力が発生します。

図1:フレミングの左手の法則に従う力の発生

図1:フレミングの左手の法則に従う力の発生

図2は、磁場中の導体を動かすことで発電電圧が発生の原理を、フレミング右手の法則から説明しています。導体の移動速度をv(m/s)とすると、発電電圧e=Blv(V)が発生します。図2の磁場は永久磁石で作られていますが、巻き線に電流を流したコイルでも、磁場を作ることができます。永久磁石やコイルなど、磁場を作るものは界磁と呼ばれます。

図2:フレミングの右手の法則に従う電圧の発生

図2:フレミングの右手の法則に従う電圧の発生

基本的にモータは、界磁コイルと導体に流す電流の相互作用で回転力を発生させます。モータ開発の黎明期(1830年ごろ)の課題は、発生した力をどのようにモータの回転運動に変換するかでした。界磁によって作られる磁束の方向は一定のため、電流を流した導体を回転させると電流の方向を切り替える必要があります。これを可能にした発明が、ブラシと整流子の機構です。これにより、連続回転を行えるDCモータが実現しました。当時は直流電流が主流だったので、DC(直流)電源で駆動するモータが作られました。

その後、AC(交流)発電機が実用化されたことに伴い、三相交流を電源とするモータも開発されました。ACモータでは、界磁コイルである固定子巻線に三相交流電力が供給されています。三相交流電流の作る磁界の合成は、交流電流の周波数と同期して回転します。従って、ACモータは、DCモータと違い、自動的に電流の方向を切り替えるため特別な機構を必要としません。また、ACモータの固定子巻線によって作られる磁界は回転磁界と呼ばれ、周波数f、極数Pとすると回転数N=120f/P(rpm)で回転します。

現在の大部分のモータは、DC(直流)モータやAC(交流)モータなど、フレミング左手の法則と、それにより発生するローレンツ力(Bli則)で動作しています。しかし、モータ開発の初期の段階では、電磁力の発生原理として、電磁石の吸引力を利用する方法も考えられていました。図3は、電磁力の吸引による力の発生原理です。

図3:リラクタンス力の原理

図3:リラクタンス力の原理

コイルを巻いた磁性体に電流を流すと磁性体が磁化されるとともに、近くの磁性体も磁化が誘導され、磁軸が一致するような方向に力が発生します。この力はギャップ間の磁気抵抗が最小になるように働き、リラクタンス力と呼ばれます。この力を利用するリラクタンスモータは、リラクタンス力が変位によって変化するため、モータとして一定の回転力を得るのが難しいという欠点を持っています。欠点を克服するためには、高度な制御が必要となるため、リラクタンスモータはDCモータやACモータに比べて、利用の広がりが遅くなりました。

2. モータの種類

モータは、電源、回転、界磁、駆動、形態という切り口で分類することができます(図4)。

図4:モータの駆動原理からの分類

図4:モータの駆動原理からの分類

モータをインバータなどで制御できるようになる以前は、モータに供給する電源により大きく2つに大別していました。直流電源駆動と交流電源駆動です。直流電源で駆動するものを直流モータと呼び、直流モータは界磁が巻き線(コイル)か、永久磁石かで分類することができます。小容量のDCモータは高効率を実現するため永久磁石(PM)を界磁とし、大容量のモータには巻線界磁が使用されます。

交流(AC)電源で使用するモータは、交流の作る回転磁界に同期して回転するか、同期しないで回転するかに分類することができます。前者を同期モータを呼び、後者の非同期モータの代表が誘導モータとです。また、回転子に施した短絡巻線を使用して誘導モータとして始動し、同期速度に近い回転速度に達した時点で、同期回転に切り替えるモータも古くからあります。これは誘導モータに分類されます。

同期モータは、商用周波数では始動させることができない欠点を持っています。そのため、産業用モータの大半は、前述のような誘導モータとして始動させ同期回転に切り替えることで、交流電源で始動ができるモータです。同期モータは、界磁を永久磁石や巻線で構成されるモータと、固定子巻線から発生する磁束の誘導によるリラクタンスで構成するリラクタンスモータに分類することができます。巻線型同期モータは発電機など大容量の分野で使用され、それ以外の分野では永久磁石(PM)を界磁とするPMモータが使用されています。慣例として、PM界磁同期モータをPMモータと呼んでいます。

インバータなどドライブ回路により駆動するものは、駆動として細分化しました。駆動は大きく2つに分けることができ、1つは正弦波電流で同期モータとして駆動するもの、もう1つはブラシレスDCモータのように磁極の位置に応じて矩形波で駆動するモータです。界磁にリラクタンスを応用するスイッチトリラクタンスモータ(図4ではSRMと略)は、ブラシレスDCモータと同様、回転子の磁極位置に応じて励磁相(界磁に流す電流の相)を切り替えて矩形波駆動しています。

3. 超音波モータ

電磁力以外の方法でも、電気的なエネルギーと機械的な仕事の変換が可能です。コンデンサの電極間に働く力を利用する静電モータや、圧電素子を利用した超音波モータが知られています。静電モータはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)として一時脚光を浴びたものの、実用化されたものはほとんどありません。一方、後者の超音波モータは、モータを円盤状に構成できるため、カメラレンズの駆動など特殊な用途で使われています。

圧電素子(PZT:Pb(Zr,Ti)O3、チタン酸ジルコン酸鉛)は、電圧をかけると電圧に対し直角方向に伸びる特性を持っています。最初は、この特性を利用して、その変位を直線や回転運動に変えてモータとすることが研究されていました。しかし、その伸縮は数ミクロンにしかなりません。モータとして回転させるためには、圧電体と弾性体を組み合わせ、高周波で振動させて共振させる構造が必要になります。1980年になると、圧電体から弾性体に進行波を発生させることにより、実用的なモータが発明されました。弾性体の共振周波数と一致させて、20kHz以上の可聴域以上の周波数(超音波)で駆動されるため、超音波モータという言葉が使われています。進行波形超音波モータの動作原理図を、図5に示します。

図5:進行波形超音波モータの原理図

図5:進行波形超音波モータの原理図

ステータは圧電素子と弾性体の2層構造になっており、圧電素子は2組の駆動電極から構成されています。そして、それぞれの電極は進行波の1/2波長になるように配置され、交互に逆極性になるように分極されています。弾性体のたわみ振動の固有周波数に近い周波数の交流電圧を駆動電極に印加すると、圧電素子は交互に伸縮して、弾性体にたわみ振動を生じさせます。2つの電極に90度の位相差を持つ交流電圧を印加することで、空間・時間的に位相がずれた2つの定在波が合成され、図4のような進行波が得られます。弾性体表面の波の最大点は、進行波と逆向きのだ円軌跡を描いて運動します。従って、ロータ(動体)とステータの間に高い圧力を加えた状態にすると、ロータは進行波の波頭で弾性体と接触し、振動子表面のだ円軌跡に沿って進行波と逆方向に摩擦駆動されます。

いかがでしたか? 今回は、モータの定義と、モータの種類、そして最後に超音波モータを解説しました。次回は、DCモータについて説明します。お楽しみに!

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