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光の干渉:光学の基礎知識4

更新日:2021年7月30日(初回投稿)
著者:筑波大学 名誉教授 青木 貞雄

前回は、光の幾何光学的な性質を利用して、結像方式について学びました。今回は、光の干渉を取り上げます。干渉は、光の波動光学的な性質です。2つの光を重ね合わせると、その強度分布がそれぞれの光の強度の和と異なることがあり、この現象を光の干渉と呼びます。レーザのように単色性がよく、位相のそろった光は容易に干渉させることができます。干渉によってできる干渉縞(かんしょうじま)の変化を精密に計測すれば、光の波長よりも細かい精度で物の動きや形状変化が測定できます。干渉は、光以外の波動でも同じように起こる物理現象なので、多くの分野で利用されています。

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1. 光の干渉性(コヒーレンス)

コヒーレンスとは、波動が互いに干渉することができる性質をいいます(図1)。光の干渉は、複数の波が打ち消し合ったり強め合ったりすることです。コヒーレンスが高いほど、位相がそろい、干渉縞(干渉により生じる明暗の縞)が鮮明になります。私たちが日常、目にしている光源や太陽光のような自然光では、干渉現象が特に目立つことはありません。一般の光源では、個々の原子が独立に時間的に不規則な光を放つので、レーザのように位相はそろっていません。

図1:自然光とレーザ光のコヒーレンス

図1:自然光とレーザ光のコヒーレンス

電極やガスの放電によって放射される光の線スペクトルは、原子の外殻電子間の遷移によって生じます。可視光の場合は、放射時間(Δt)は約10-9秒です。光の速さがc=3×108m/秒なので、放射される光波の長さ(波連)は、原理的には数十cm程度になります。しかしながら、通常の放電管などからの光は、原子間の衝突や、ドップラー効果などによる周波数の広がりが見られ、実際の波連の長さは数ミリ以下になってしまいます。この光波の長さを、可干渉距離(コヒーレンス長)と呼びます。1つの点光源から出た光同士でも、光路差がこの値を超えると干渉しなくなります。以上のような光の干渉性を、一般に時間的コヒーレンスと呼びます。

一方、光源が有限の大きさを持つ場合、単色性がよくても見かけ上の干渉性の低下を招きます。通常の光源の場合、個々の原子から放射される光は互いに干渉することはありません(インコヒーレント光源)。すなわち、1つの光源であっても、実際は互いに干渉し合わない点光源の集まりと見なされます。このことは、有限の大きさを持つ光源は、その大きさによって、干渉性が見かけ上劣化してしまうことを意味します。

ヤングの干渉実験光学系を使って、光源の大きさが干渉性に与える影響を見てみましょう(図2)。光源から注目する平面までの距離をR、その平面からスクリーンまでの距離をZとし、その平面上のどのくらいの領域(ここではダブルスリットS1、S2の間隔2dに相当)が干渉性よく照明されているかを考えます。

図2:ヤングの干渉実験

図2:ヤングの干渉実験

干渉性のよさを表す目安として、スクリーンP上の干渉縞の鮮明度Vを、以下のように定義します。

ここで、ImaxとIminは、それぞれ隣接した干渉縞の強度の極大値と極小値を表します(図3)。

図3:干渉縞の強度分布

図3:干渉縞の強度分布

光源が点光源の場合、極小値は0になるのでV=1となります。ただし、光源に大きさがあると干渉縞の鮮明度が低下します。式を簡単にするために、光源は放射強度が一定の直線状光源とし、その幅の大きさを2rとして干渉縞のボケを見積もってみましょう。すると、鮮明度Vは以下のようになります(計算の詳細は省きます)。

ここで、k=2π/λです。

図4に、光源の広がりのパラメータrと、鮮明度Vとの関係を模式的に示します。図からも明らかなように、光源の広がりが大きいと鮮明度が低下します。特に2krd/R=π、すなわちスリット間距離2d=λR/2rでは干渉縞が消えます。この領域を越えても干渉性は多少は保たれるものの、非常に低くなります。

図4:光源の大きさと干渉縞の鮮明度

図4:光源の大きさと干渉縞の鮮明度

干渉性の高い領域の目安として、2点間のおよその距離として2dc=λR/8rより内側をコヒーレントな領域と呼びます。また、このように光源の大きさによって干渉可能領域が変化する光学的性質を、空間的コヒーレンスと呼びます。

以上のような考察から、レーザ以外の光源(インコヒーレント光)を使って干渉現象を観測するには、光源から出た光を2つに分け、別々の光路を通ってきた光を、上に述べた条件を考慮して、精度よく重ね合わせる必要があります。

干渉させる方法の代表的なものとしては、以下の2つが挙げられます。

1:振幅分割による干渉
2:波面分割による干渉

1は、半透明の鏡やプリズムなどを使って、入射光の振幅を透過光と反射光に分け、再び重ね合わせて干渉させます。重ね合わせを正確に行えば、空間的には、ほぼ元の波面を重ねることができるので、干渉性のよくない光源を用いても実験が可能です。代表的な例として、ニュートンリングやマイケルソン干渉計などがあります。

2は、微小光源からの波面を干渉可能な領域内(コヒーレントな領域)で分割し、重ね合わせる方法です。空間的に離れていた点同士の重ね合わせになるので、光源の空間的なコヒーレンスが相当程度要求されます。ヤングの干渉実験が代表的な例です。

2. 平面波同士の干渉

干渉の実験や解析が比較的容易なものとして、平面波同士の干渉が挙げられます。図5はマイケルソン干渉計と呼ばれる光学系です。一方の光路を基準とし、他方の光路に被測定物を置いて、測定物の微小な動きや媒質の屈折率変化などを測るのに使用します。簡単な光学系で高精度(波長の10分の1以下)の測定ができるので、干渉計の中では最もよく使われています。

図5:マイケルソン干渉計

図5:マイケルソン干渉計

図に示すように、単色点光源Aからの光をレンズで平行にした後、ハーフミラー(半透明鏡)で平面波Bと平面波Cの2つに分け、それぞれの光をミラーで反射させ、再びハーフミラーを介して重ね、レンズによってスクリーン上に光源の像を作ります。実際の干渉計では、一方のミラーが被測定物に設置され、その微小な動きを精密に計測します。ハーフミラーからミラーM1までの往復の光路長(こうろちょう)をL、ミラーM2までの往復の光路長をL’とします。光路の媒質の屈折率は1とし、それぞれの平面波の変位を以下とします。

ψB=a0sin(kL-ωt+α)
ψC=a0sin(kL’-ωt+α)

このとき、スクリーン上の光の変位は、ψ(x,t)=ψBCと表すことができ、スクリーン上の強度は、以下のようになります。

ここで、T0は光波の周期です。2つの光の光路差が

の関係、すなわち光学的距離の差が波長の整数倍(L-L’)=mλのとき、スクリーン上の集光点が明るくなります。一方、半波長の差の場合(L-L’)=(m+1/2)λでは暗くなります。ミラーの移動は光路長を2倍変化させるので、スクリーン上の明暗のみの計測でも、波長の4分の1の精度で変化量が分かります。

・2つの平面波が平行でない場合

光線の向きが異なる2つの平面波が、スクリーン上で干渉する場合の干渉縞の様子を解説します。図6のように、光軸に平行に進む光波の変位をΨBとし、光軸とθの角度で進む光波の変位をΨCとします。スクリーンは、光波Bに対して垂直に置きます。媒質の屈折率を1として、x座標を光軸方向に取り、y軸を光軸に垂直に取ります。また、x軸、y軸に対して垂直な方向をz軸とします。

図6:光線の向きが異なる平面波の干渉

図6:光線の向きが異なる平面波の干渉

平面波Bと平面波Cの波面の法線方向の単位ベクトルは、

uB=(1,0,0)
uC=(cosθ,-sinθ,0)

また、波面上の位置座標はr=(x,y,z)と書けるので、一般的な光波の変位の式E=a0sink(u・r-ct)を使うと、それぞれの光波の変位は、以下のように表すことができます。

ψB=a0sin(kx-ωt)
ψC=a0sin(k(xcosθ-ysinθ)-ωt)

スクリーン上、すなわちx=0で重ねあわせた2つの光波の強度は、以下のようになります。

ここで、強度が最大になる条件は

より、y=mλ⁄sinθの位置で明るさが最大になります。

図7に干渉縞の模式図を示します。干渉縞の縞間隔Δyは、Δm=1とすると、Δy=λ/sinθとなります。例えば、λ=632.8nm(He-Neレーザ)、θ=30°とすると、Δy≒1.2μmが求められます。この光学系は、ミクロン単位の微細パターン形成が容易にできるので、回折格子製作などに利用されています。

図7:光線の向きが異なる平面波の干渉縞模式図

図7:光線の向きが異なる平面波の干渉縞模式図

3. 薄膜の干渉(等傾角の干渉縞)

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