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決済システムの重要性:決済システムの基礎知識1

決済システムの基礎知識

更新日:2019年11月1日(初回投稿)
著者:麗澤大学 経済学部 教授 中島 真志

私たちは日常生活やビジネスの中で、モノやサービスを買ったり、売ったりする取引を行っています。こうした取引では、銀行口座などによる決済システムを使うことがあります。最近では、世界各国でモバイル・ペイメントの導入が広がっています。本連載では7回にわたり決済システムの基礎知識を解説します。第1回は、決済システムの重要性を紹介します。

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1. 決済とは

「決済」とは、一般的に「資金の受け渡しを行うことにより債権・債務関係を解消すること」と定義されます。例えば、消費者が商品を買うために商店に行きます。消費者が先に商品を受け取った場合、この段階では、まだ代金が支払われていないため、消費者と商店とは「債権・債務関係」にあるといえます。商店は「債権」(代金を受け取る権利)を持ち、消費者は「債務」(代金を支払う義務)を負っています。

次に、消費者が商店に代金を支払います。この段階で、「債権・債務関係」は終了し、商取引は最終的に完了します(図1)。

図1:決済とは

図1:決済とは

このように、全ての取引は、決済によって完結します。これは、モノやサービスなどの実物取引に限らず、株式や債券などの金融取引においても同様です。このため、決済という行為は、現代社会の商取引や金融取引において必要不可欠であるといえます。

2. 決済のための手段

一言で「決済」といっても、さまざまな局面があります。最も分かりやすい決済の局面は「現金による決済」です(図2)。例えば、消費者がコンビニなどの商店で買い物を行った場合には、しばしば現金による決済が行われます。しかし、こうした現金による決済は、いつでも行えるとは限りません。数百万円、数千万円といった高額な支払いが発生する場合には、安全性の観点や、お札を数える手間などから、現金決済は必ずしも適しません。例えば、自動車やマンションなどの購入がそれに当てはまります。また、インターネット・ショッピングで、東京の消費者が、大阪の業者から商品を購入するような「遠隔地間の決済」においても、直接、対面での現金受け渡しが難しいことから、現金決済はなじみません。

図2:現金による決済

図2:現金による決済

このように「高額の決済」や、「遠隔地間の決済」が必要な場合、決済は現金ではなく、「銀行預金」を用いて行われます。「預金による決済」では、支払人と受取人が、いずれも同一銀行に口座を有していれば、同一銀行内における口座間の資金移動によって、決済が完了します(図3)。同一銀行内の口座間の資金付け替えは、一般に「内部決済」と呼ばれ、1つの銀行内で完了します。

図3:預金による決済

図3:預金による決済

ところが多くの場合、送金人と受取人は、それぞれ異なる銀行に口座を有しています。この場合、1つの銀行内で決済は完結せず、送金人の銀行と受取人の銀行の間で、送金指図の内容を伝え合うとともに、2つの銀行間で資金の受け渡しを行うための何らかの手段が必要となります。このようなとき、2つの銀行間で、送金指図の伝達や資金決済などの役割を果たすのが「決済システム」です(図4)。

図4:異なる銀行間の決済

図4:異なる銀行間の決済

つまり、たまたま送金人と受取人が同じ銀行に口座を有しているといった例外的なケースを除くと、複数の銀行間で資金決済を円滑に行うためには、銀行と銀行の間に「決済システム」が入り、一定の機能を果たすことが不可欠となります。

このように、決済システムは、当事者間の決済を円滑に行うための仕組みです。これなしには、人々の経済活動は成り立ちません。このため決済システムは、電気・水道・ガスなどと並んで「社会インフラ」の1つとされています。

3. 決済システムの分類

決済システムは、「大口決済システム」と「小口決済システム」に分けることができます(図5)。

図5:決済システムの分類

図5:決済システムの分類

「大口決済システム」は主として、金額の大きい大口取引を決済するシステムです。銀行間の資金取引、国債売買のための資金の支払い、円とドルを交換する外為取引など、金融市場における取引や、インターバンク取引が対象となります。1件当たりの金額が大きいということは、資金決済にかかるリスク(決済リスク)が大きいことを意味します。金融機関や金融市場にとって重要な決済を取り扱うため、各国では中央銀行がその運営を担っています。日本でも、日本銀行が大口決済システムである「日銀ネット」を運営しています。

一方、「小口決済システム」は、主として、企業や個人による比較的少額の決済を扱うシステムです。消費者から企業への支払い、公共料金の支払い、給与振込、個人間送金などが対象です。企業間の取引(B to B)、企業と個人の取引(B to C)、個人間の送金(P to P)などの取引が、このシステムを通じて決済されます。対象とする取引の範囲がかなり広範囲にわたるため、膨大な決済件数を有するのが特徴です。日本では、全銀ネットが運営する「全銀システム」が、この小口決済システムに当たります。

4. 銀行間送金と顧客送金

決済システムが取り扱う送金は、「銀行間送金」と「顧客送金」に分けることができます(図6)。

図6:銀行間送金と顧客送金

図6:銀行間送金と顧客送金

「銀行間送金」は、銀行が自行の取引に基づいて行う送金のことで、「インターバンク・ペイメント」ともいわれます。銀行間送金は、金融市場における銀行間の資金取引に基づく送金です。そのため、必然的に大口決済となり、大口決済システムを通じて決済が行われます。

一方、「顧客送金」は、銀行が顧客からの依頼を受けて、顧客のために行う資金移動のことをいい、「カスタマー・ペイメント」とも呼ばれます。顧客送金は、商取引などに基づくリテール決済や給与振込、公共料金の支払いなど、小口の送金のほとんどが該当します。このため、小口決済システムを通じて決済が行われます。

いかがでしたか? 今回は、決済システムの重要性を解説しました。次回以降は、「決済高度化」といわれる改革の動きについて、大口決済システム、小口決済システムそれぞれの観点から解説します。お楽しみに!

参考文献

中島真志・宿輪純一、『決済システムのすべて(第3版)』、東洋経済新報社、2013

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