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バイオ技術への応用:プラズマ処理の基礎知識6

プラズマ処理の基礎知識

更新日:2021年3月18日(初回投稿)
著者:東京都市大学 総合研究所 客員教授 市川 幸美

前回は、プラズマの表面処理技術を解説しました。今回は、プラズマのバイオ技術応用について説明します。前回紹介した、大気圧で容易に扱える低温プラズマの出現がバイオ技術にパラダイムシフトをもたらし、次々と新しい知見が得られています。バイオ技術へのプラズマの応用は、まだ研究の歴史が浅く、また生物を対象にすることから現象も複雑で、機構が十分に解明されていない事象も数多くあります。それでも、現在最も注目されている分野であることから、連載の最後に当たり、いくつかの事例を紹介します。

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1. 低温大気圧プラズマとバイオ技術

低温大気圧プラズマジェットは、生体への照射が可能なことから、バイオ技術との相性がよい画期的なプラズマ源です。これまで紹介したように、プラズマ中では高速電子や励起分子、ラジカルが発生します。そして、このプラズマジェットを大気中で生体に照射すると、下流域で空気を巻き込むため、これらの粒子と空気、および空気中の水蒸気が反応し、活性酸素種(Reactive Oxygen Species:ROS)や活性窒素種(Reactive Nitrogen Species:RNS)と呼ばれる、生体に影響を与える活性種が効率よく生成されます。ROSには、原子状酸素(O)、オゾン(O3)、ヒドロキシラジカル(OH)、過酸化水素(H2O2)など、RNSには一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、亜酸化窒素(N2O)などが含まれます。

プラズマを照射すると、こうした活性種やプラズマから供給される荷電粒子、紫外光などが複合的に作用して、生物の細胞や農作物にさまざまな影響を及ぼすことが、2000年以降の研究から分かってきました。研究対象が生命体であることと、研究自体の歴史が浅いことから、詳細な機構まで十分に解明されていない事象もまだ多くあります。しかし、今後の進展に期待できる、興味深い数々の成果が挙がりつつあります。以下に、プラズマの医療応用と農業応用について紹介します(図1)。

図1:低温大気圧プラズマの応用

図1:低温大気圧プラズマの応用理

2. プラズマ医療

プラズマ医療とは、プラズマを利用して人の細胞を直接治療することです。プラズマの医療への応用は、医療器具などの滅菌、ガン治療、止血、細胞への遺伝子導入、免疫治療、創傷治療などがあります(図2)。

図2:プラズマ医療の応用

図2:プラズマ医療の応用

医療への応用としてまず取り上げられるのは、プラズマ照射による医療器具などの滅菌です。プラズマジェットを細菌やウイルス、カビなどに直接照射することにより、それらの微生物を死滅させることができます。プラズマ照射による滅菌の機構は、紫外線やROS、RNS、あるいはそれらの相乗効果による、生体組織の切断や酸化などによります。従来の過酸化水素や酸化エチレンを用いた滅菌法では容易に処理できなかった炭疽(たんそ)菌やウイルスなども、短時間で滅菌できることが分かり、またコスト的にも有利であることから、今後の普及が期待されています。

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3. 農業への応用

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