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粉体工学の基礎知識

粉体工学の基礎知識

著者:株式会社ナノシーズ 技術顧問 工学博士 羽多野重信

第1回:粉の歴史とその恩恵

1.粉の歴史

これから皆さんと、粉(こな)について調べてみることにしましょう。
著名な物理学者の寺田寅彦氏は粉を「粉体」と呼びました(参考:寺田寅彦、自然界の模様『科学』3、1993年、P.77-81)。学問分野は粉体工学と呼ばれ、他の分野に比べると歴史は浅く、日本では、粉体工学会の前身の粉体工学研究会が1957年に名古屋で発足した時が本格的な始まりといってよいでしょう。

しかし、日常品としての粉体の歴史は古く、とくに化粧用の顔料としての粉体は、すでに旧石器時代には使われていたとされていますので、約50~60万年の歴史ということになります。日本書紀にも鉛白系の化粧品が用いられていたという記述があります。

約1万年前の石器時代には穀物を石ですりつぶして粉とし、風力を利用して大きさ別に分けていたともいわれています。
さらに、日本の縄文人は、首飾り、耳飾り、腕輪、などで身を飾ることを好んでいたようで、これらの装身具は土を固めて焼くという方法を既に編み出していたといえます。

図1のように、まず原料粉体である土から粗大粒子やごみを取り除き(ふるい分け)、水で練り(捏和(ねっか)、混練(こんれん))、形を整え(成型)、焼く(焼成)と、これはまさに粉体技術の諸操作を駆使しているわけで、実に驚かされるところです。

図1: 縄文時代の粉体技術

図1:縄文時代の粉体技術

2.身の回りの粉体

私たちの身の回りを見てみると、実に多くの粉体が使われていることに気がつきます。

今、会社で仕事をしているとします。スチール机の材料は鉄鉱石から。その塗装にはもちろん粉体の顔料が使われています。机の上には、粉体を成型したプラスチック製品が置かれています。机、本棚など木製家具の多くは、木材をいったん粉末状にしてプレス成型したものです。

目の前にあるパソコンをはじめ、OA機器、事務用品のほとんどが粉体を経て作られています。机の上にある書類は原料の木材チップの段階で粉体技術が生きています。印刷に使うインクは粉体の顔料から。コピー機の中にはトナーという黒い粉体が入っています。

ちょっと一服するときの机の上のコーヒーはブルーマウンテンを細かく挽いた粉。となりのYさんは胃の調子が悪いので顆粒の胃薬を飲んでいます。コーヒーカップは陶磁器製で粘土から。蛍光灯や電球のフィラメントは粉末冶金の技術。

鉄筋コンクリート10階建ての会社のビルは粉体であるセメント。一歩外に出ると歩道には透水性のブロックが敷きつめられていて、これも粉体の技術。その上を走っている自転車、車道を走っているクルマ、これらの構成部品のほとんどが粉体を経て造られています。

このように、原料、中間製品、最終製品などと考えていくと、私たちは粉体からずいぶん多くの恩恵を受けて生活しているといえます。

コラム:ピラミッドの粉体技術

1955年のアメリカ映画に「ピラミッド」(原題は「Land of the Pharaohs」)という映画がありました。監督はハワード・ホ-クスで、のちに「ベン・ハー」に出演するジャック・ホーキンズが主演しています。この映画の中で、驚くべき粉体技術が登場します。

ピラミッドの中にはミイラや副葬品が埋葬されていいて、これを狙う泥棒が後を絶たず盗人対策は非常に重要な課題であったようです。内部の通路は全て迷路にして、いくつかのダミーの墓室をつくることによって盗人が入りにくい構造になっているものもありますが、これだけではまだ完璧とはいえず、ここでその粉体技術の登場です。

図2のように、本物の墓室に通じる通路の下にもう一つの通路を作り、上の通路から下の通路まで貫通する穴をあけ底に簡単な栓を設けます。そして砂を一杯になるまで充てんしてその上に柱を立て、さらにその上に大きい石をのせたような構造にします。

図2:ピラミッドの盗人対策

図2:ピラミッドの盗人対策

こうしておいて埋葬品を納めたあと、下の通路いっぱいの大きさの石を滑り落とします。すると天井に設けた簡単な栓は砕かれて、中の砂がサラサラと流れ出てやがて柱が下に落ち、大きな石は通路を見事にふさぐという仕組みです。

粉体は上から加圧されたとき容器の壁で力の一部が支えられ、容器の底に伝わる力は減少するという性質があります。この映画に登場する技術は、粉体の特性を実にうまく利用したワザであるといえます。

 

第2回:基礎物性

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1.粒子径と粒度分布

粉体物性は、単一粒子の物性(一次物性)と、集合体としての物性(二次物性)に分けられます。ここでは、一次物性を粒子固有の物性という意味で基礎物性として紹介します。

粉体を構成する粒子の大きさを表現するとき、粒度という言葉が使われることがあります。これは、粉体を構成している粒子の大きさの程度を表わす場合に用いられ、メッシュのような長さ以外の尺度をいいます。これに対して、長さで表わす場合に粒子径(または粒径)が用いられます。

粒子径の大きさを表わすには、以下のような方法があります。

幾何学的径

粒子の投影画像から得られる幾何学的な大きさ
(長軸径、短軸径、定方向径など)

相当径

粒子の投影面積や体積などを円ないし球に相当させる
(周長円相当径、投影面積円相当径、体積球相当径など)

有効径

特定の物理学的法則を用いて粒子径に換算
(ストークス径、レーザー回折・散乱法による粒子径など)

粒子の大きさには、特殊な場合を除き必ず分布があります。これを粒度分布(または粒子径分布)といいます。粒度分布は個数を基準にする場合と質量を基準にする場合があり、一般的には質量基準で表わします。

分布の表現には図1のように、積算分布、ヒストグラム、頻度分布があります。積算分布は、右上がりの曲線となるふるい下積算で表わします。また、対数正規分布やロジン・ラムラー分布で表わすと直線になることが多いので便利です。

最近では、レーザーを用いた光回折・散乱法が、測定時間が短い、再現性がよい、サブミクロン域まで測定できる、などの理由で標準的な方法として広く用いられています。

図1:横軸を対数目盛とした場合のグラフ表示

図1:横軸を対数目盛とした場合のグラフ表示

2.密度と形状

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3.比表面積と細孔

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参考文献:羽多野重信 ほか、はじめての粉体技術 新訂版、森北出版、2013年

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第3回:粉体の特性

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1. 付着力と付着・凝集性

粉体を構成している個々の粒子間には、相互に及ぼし合う力が働いています。この性質を付着性あるいは凝集性といいます。しかし、両者を区別せずに付着・凝集性ということが多いようです。

粒子の付着力は粒子径のほぼ1乗に比例し、重力は粒子径の3乗に比例します。

したがって、両者の関係は、図1のように数10μm付近で交差します。この部分から右側を重力支配の粉体、左側を付着力支配の粉体と呼んでいます。

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図1:粒子の自重と付着力の関係

粒子間に働く主な付着力は以下の3つで、実際にはこれらが複合して付着力が発現します。

・ファンデルワールス力(Van der Waals力)

粒子間に働く基本的な相互作用力で、粒子径、接触状態、粒子の
組成などによって異なります。

・静電気力

粒子間の摩擦や衝突、それに伴う破砕などで発生します。湿度が低い
場合に大きく作用します。

・液架橋力

粒子間の接触部分に生じる狭い空間に液体が存在することにより発生します。湿度が高い場合に大きく作用します。

測定方法は、単一粒子を扱う場合と粉体層を対象とする場合に分けられます。単一粒子の付着力の測定法は、図2のような、スプリングバランス法(原子間力顕微鏡(AFM)を用いる測定法)、遠心分離法、衝撃分離法などが提案され、測定装置が市販されています。

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図2:単一粒子の付着力の測定法

粉体層の付着力(引張り破断強度)の測定法は、図3のような、水平引張り型と垂直引張り型があります。昔は市販の製品がありましたが、現在は販売されていないようです。

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図3:粉体層の付着力測定法

2. 充填性

充填性は、各種容器、型枠などに粉体を充填する場合の操作性に大きく影響する特性です。充填性の指標は比較的簡単な装置で測定することができます。

最もよく使われている指標は空間率εで、粉体のかさ体積に占める空間の割合で表わし、式のように定義されます。

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ここで、ρbは粉体のかさ密度、ρpは粉体の粒子密度、Mは粉体の質量、Vは粉体のかさ体積です。

この式で用いられているかさ密度ρbは、空間率εとの間で互いに換算できる値で、粉粒体の質量や体積を求めるのに便利なことから、充填性の指標として用いられています。測定方法は、分野ごとにJISで規定されています。測定装置の一例を図4に示します。

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図4:かさ密度測定方法の一例(JIS Z 2504)

ほかに、粉体の充填の度合いを示す指標として、表1に示すような方法があります。

表1:充填の度合いを示す指標

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また、以下のような充填方法を用いて、経過時間や回数によるかさ密度または空間率の変化を測定することで、充填のしやすさを評価することができます。

・タッピング法

粉体を充填した容器を一定高さから一定間隔で落下させる。

・振動法

粉体を充填した容器を振動させる。

・遠心法

粉体を充填した容器を遠心機により回転させる。

その他、ピストン、棒などでつき固めて加圧する方法などもあります。
なお、初期充填もきわめて重要な操作です。粉体の性状に応じた再現性のよい充填方法を選ぶことが大切です。

3. 流動性

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4. 粉体層に働く力

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第4回:さまざまな分野で使われる粉粒体

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「粉の歴史とその恩恵」の回でご紹介したように、粉体が使われている場面は実に多岐にわたります。ここでは、代表的な製品を例に、どのような粉体が使われているのか見ていきましょう。

1. 食品

食品は、視覚、臭覚、味覚、触覚、聴覚などの、いわゆる五感でおいしさが判定されるため、たとえば、舌ざわりにざらつき感が出てくる粒子径は20~30μm以上であるなど、その制御はきわめて重要です。ここでは、代表的な食品粉体として、小麦粉と調味料について紹介します。

小麦は、図1のように、皮部、胚乳部、胚芽部からなっていて、縦方向に深い粒溝があります。この部分は食用には適しませんので、米のように削り取る方法ではなく、粉砕・分離を経て小麦粉として使われます。

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図1:小麦粒の断面

また、胚乳部に多く含まれるたんぱく質の一種グルテンは、粉状でないと効果を示さないことからも、ほとんどの場合、粉にして加工食品用原料として用いられます。

小麦粉は強力粉と薄力粉、その間の中力粉に分類されています。これは原料の種類と粒子径によって分けられています。

強力粉は硬質小麦を用い、粒子径は50~70μm程度で、主としてパンや中華麺の原料として用いられます。薄力粉は軟質小麦を用い、20~40μmに調整され、菓子やてんぷら粉として用いられます。また、粒子径によってもグルテンの含有率が変化しますので、分級することによってさまざまな用途の小麦粉が作られています。

調味料は、グルタミン酸ソーダをはじめ、風味調味料、香辛料、核酸系調味料などに分類されます。これらを組み合わせたものなどを含めると非常に多くの種類があります。

[調味料の製法]

晶析法:
液体原料を濃縮晶析により結晶を分離する方法で、食塩、グルタミン酸ソーダ、各種アミノ酸などの製造に用いられます。

乾燥法:
液体原料を直接乾燥して粉体にする方法で、味噌、醤油、酢、その他天然調味料などの製造に用いられます。

混合法:
各種粉体調味料を原料として、粉砕、混合、造粒などの操作により、目的の機能をもった調味料を製造する方法。風味調味料、複合調味料など、粉末調味料の多くがこの方法により製造されています。

2. 化粧品

化粧品は長期にわたり人体に使用されることから、多くの基準や規格が定められています。化粧品用の粉体は、ファンデーション、口紅の着色料、マスカラ、アイライナーなど仕上げ化粧品が中心です。

主な顔料を表1に示します。化粧品用の粉体は粒子径が0.01μm~20μm、粒子形状は扁平状、真球状、中空状、不定形などさまざまです。この違いが、使用感、肌への付着性、伸び、紫外線遮断効果などに大きく影響します。

表1:化粧品に用いられる顔料
白色顔料 酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム
着色顔料 無機:硫黄化鉄、群青、酸化クロム、カーボンブラック
有機:β-カロチン、カルミン、カーサミン、タール色素
体質顔料 カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム など
パール顔料 オキシ塩化ビスマス、雲母チタン など
その他の粉末 金属石鹸:ステアリン酸の金属塩
ポリマー:ナイロン、ポリエチレン
天然物:シルクパウダー、でんぷん類
金属:アルミニウム、金箔 など

最近ではUV化粧品として、図2のように、雲母やマイカなどの扁平粒子に数μmの球形樹脂をコーティングして、延びや紫外線遮断効果をさらに高めているものがあります。

また、二酸化チタンに格子欠陥を持たせたものは光感応パウダーと呼ばれ、強い日ざしの室外に出ると色が若干濃くなり、自然な白さを保つファンデーションとして使われています。

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図2:UV化粧品のしくみ

3. 医薬品

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4. セラミックス

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5. 粉末冶金

金属材料から製品を作るには、通常は、鋳造、鍛造、切削加工などの工程で造られます。しかし、タングステンやモリブデンなどのように融点が非常に高い材料は溶かすことが難しいため、粉にして固めようという発想から生まれた技術が粉末冶金で、融点以下の温度で焼結することができます。

製造工程は、金属粉の混合、成型、焼結と、通常の金属加工に比べ簡単です。製造工程の概略を図3に示します。

図17:粉末冶金の工程の概略

図3:粉末冶金の工程の概略

機械部品を製造する場合の原料は、平均粒子径が数10μm程度のものがよく用いられます。複雑な形状をした小型部品を製造する場合は、射出成型と呼ばれる方法によって行われます。この場合には、5~10μm程度の球状粉が用いられます。さらに、超硬合金は数μmあるいはサブミクロンの粉体が使われます。

6. OA機器関連

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第5回:粉体に関するトラブルの実態と対策

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1.トラブルの実態

皆さんは、次のような経験はありませんか?

  • 塩や砂糖がいつの間にか固まってしまい容器から出てこない(固結)
  • ふりかけやゴマ塩などを振り出す時、塩が先に多く出てきてしまう(偏析)
  • ごまのすり具合やコーヒー豆の挽き加減(粒度)によって出来上がった物の味や風味が異なる

このような粉体のトラブルを工学的に分類すると、付着・凝集、固結、閉塞、偏析、発じん、帯電、摩耗などとなります。

一般社団法人日本粉体工業技術協会が行なったアンケートによる調査では、図1のように、トラブルが発生する産業分野は、ほぼ生産量の多い順(無機材料、医薬品・農薬、食品・飼料の順)になっているようです。

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図1:産業分野別に見た全トラブル頻度(引用:日本粉体工業技術協会、粉体工業におけるトラブルとその対策に関する調査研究、1993年)

工程別では、図2のように輸送・供給など粉体のハンドリング工程が全体の約70%を占めています。

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図2:工程別トラブル件数(引用:日本粉体工業技術協会、粉体工業におけるトラブルとその対策に関する調査研究、1993年)

さらに、ハンドリングを困難にしている要因は、図3のように粉体と容器や機器の内壁との接触面における付着、粉体同士の凝集・固結、容器内や排出時の偏析・偏流、貯槽などの容器に入れる際の発じん・飛散などが全体の約70%を占めていることが分かります。

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図3:ハンドリングを困難にしている要因(引用:日本粉体工業技術協会、粉体工業におけるトラブルとその対策に関する調査研究、1993年)

このように、粉体に関わるトラブルは粉体物性が大きく関与していますので、必要な粉体物性をいかに的確に把握し評価できるかが大きなポイントになります。ここで、トラブルを起こしやすい粉体物性と運動との関係を表1にまとめました。

表1:トラブルを起こしやすい粉体の物性と運動条件(引用:日本粉体工業技術協会、粉体工業におけるトラブルとその対策に関する調査研究、1993年)

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粉体物性として、粒径、水分、付着点数(付着強度を0~9の10段階に区分)、圧縮率、C.R.H(Critical Relative Humidity:固結が起こりにくい関係湿度)、硬さ比などを考慮します。そして、粉体の運動速度は5m/sを境界として高速と低速に分け、トラブル内容と関係付けています。このような事例に基づいて、粉体物性とトラブルの関係を把握していくことが大切です。

2.トラブルの対策

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