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暑さ対策の基本~暑さに強くなる・日常生活における対策~:工場の暑さ対策の基礎知識2

工場の暑さ対策の基礎知識

更新日:2021年6月15日(初回投稿)
著者:横浜国立大学 教育学部 学校教育課程 保健体育 教授 田中 英登

前回は、暑熱環境下における体への影響として、暑熱障害(熱中症)の発生と高体温による作業パフォーマンスの低下について説明しました。今回から、数回にわたり具体的な暑さ対策について解説します。今回は、暑さに強くなるための基礎知識として、暑さから身を守るために体が持っている機能について解説します。

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1. 暑熱環境における体の反応

暑熱環境に暴露されると、体温が上昇します。人の場合、全く服を着ていない(裸体)条件では、気温28~30℃が中立温度とされています。この温度では、特に体の機能を使わなくとも体温を一定に保つことができます。しかし、気温がそれ以上になると、何らかの体熱放散を行わなければ体温は少しずつ上昇していきます。また、衣服を着用すると、熱は放散されにくくなり、作業や運動を行うと体内で産熱されるため、熱ストレスはさらに増加します。

例えば、体重50kgの人がやや強い作業を60分間行うと、体内には体温を約8℃上昇させる熱が生まれます。もし、このような状況下で熱放散が全くできなかったとすると、体温は60分間の作業で45℃に達してしまい、生命を維持することは不可能となります。そのため、恒温動物である人間は、過剰に体温が上昇しないよう、体温調節反応を起こすことで体温を適切な範囲に保っています。

人の熱放散反応には、行動性熱放散と、自律性熱放散があります。行動性熱放散には、涼しい日陰に移動する、冷房を付ける、水を浴びるなどさまざまな方法があります。ただし、これらの行動を起こすことにより、作業をいったん停止しなければならず、作業制限がかかります。

一方、自律性熱放散には、皮膚表面近くを走行する血管を拡張し(皮膚血管拡張反応)、体外に熱を放散させる、または汗を皮膚表面上に拍出し、汗が蒸発する際の気化熱により体熱を下げるという方法があります。ただし、気温が30℃以上になると、皮膚血管拡張による熱放散の有効性は低下します。さらに気温35℃以上になると、むしろ体外から熱が入ってきてしまうため、最終的には発汗反応が唯一の自律性熱放散手段となります。自律性熱放散反応は、行動性の反応と異なり、基本的に作業制限は起こらないため、作業を継続しながら熱放散できるのが特徴です。

2. 暑さに慣れるとは

暑さに慣れるには、前述した自律性熱放散が関係します。暑さ対策として考えるべきポイントとして、暑熱障害(熱中症)にならないことと、作業パフォーマンスが落ちないようにすることがあります。図1は、6月と7月の熱中症発生時の気温と湿度の関係を示したものです。熱中症の発症数は、気温の上昇とともに増加します。ただし、気温が同じでも湿度が低いと発症数は減少することが分かります。また、7月に比べて6月は約3℃低い気温で発症していることが分かります。この差はなぜ生じるのでしょうか?

図1:運動時熱中症発生時の相対湿度と気温の月別分布(参考:中井誠一、スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック、日本スポーツ協会、2019、より改編)

図1:運動時熱中症発生時の相対湿度と気温の月別分布(参考:中井誠一、スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック、日本スポーツ協会、2019、より改編)

この差は、一言でいえば、暑さに慣れているかいないかの違いとされています。実際に、6月の気温30℃は、暑いという感覚があります。しかし、7月になると30℃はそれほど暑く感じなくなります。35℃以上の猛暑日が続く時期には、30℃は涼しいと感じるかもしれません。このような温度感覚の違いは、実際に体の生理機能にも変化が起きており、発汗機能が亢進(こうしん)することが分かっています。すなわち、汗をたくさんかけるようになり、体温が上昇しにくい体となっています。これを、暑熱順化と呼びます。

暑熱順化は、暑熱環境に暴露されることと、それに運動などが加わることにより起こります。図2は実験的な暑熱順化の変化を示したものです。この実験では、毎日40℃の暑熱環境に120分間暴露し、そのときの体温、心拍数、発汗量を計測しました。その結果、毎日の暑熱暴露により、発汗量は徐々に増加し、体温の上がり方も徐々に抑えられ、最終的には約1週間で順化が完成することを示しています。

図2:暑熱順化実験による体の変化(参考:Lind AR and Bass DE、Optimal exposure time for development of acclimatization to heat. Fed.Proc., 22:704-708、1963、より改変)

図2:暑熱順化実験による体の変化(参考:Lind AR and Bass DE、Optimal exposure time for development of acclimatization to heat. Fed.Proc., 22:704-708、1963、より改変)

これらの実験から、気温は5月以降、徐々に上昇して真夏の気温に移行するものの、高くなった気温で7日間経過すると、人間の体は、ほぼその気温に慣れてくるということが分かります。逆にいうと、この急激に気温が高くなった時期は、体が慣れていないため体温が上がりやすく、熱中症になりやすいため特に注意が必要です。

図3は、暑熱環境下での作業開始日からの経過日と、熱中症発生数の関係を示したものです。作業初日が最も多発しており、その後、徐々に減少することが分かります。これも、暑熱順化が大きく影響を及ぼしていることを示しています。

図3:夏季の労働開始日からの熱中症発生数(参考:環境省、熱中症環境保健マニュアル、2018)

図3:夏季の労働開始日からの熱中症発生数(参考:環境省、熱中症環境保健マニュアル、2018)

3. 暑熱順化に影響する生活習慣

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