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作業現場における暑さ対策管理法:工場の暑さ対策の基礎知識6

工場の暑さ対策の基礎知識

更新日:2021年8月18日(初回投稿)
著者:横浜国立大学 教育学部 学校教育課程 保健体育 教授 田中 英登

前回は、暑熱障害予防と感染予防として、作業時におけるマスク着用のポイントなどを解説しました。今回は最終回です。工場などの作業現場において、管理者が行うべき暑さ対策管理と、作業と休憩の目安について解説します。

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1. 暑さ対策としての環境管理

管理者が最も考慮すべき暑さ対策のポイントは、環境条件を把握することです。暑熱環境における作業パフォーマンスの低下や、障害発生を予防するには、環境条件の把握は必須です。

暑さ指標としてWBGT(Wet Bulb Glove Temperature:湿球黒球温度)が重要であることは、第1回で述べたとおりです。では、実際のWBGTと作業との関係を、どのように考えたらよいでしょうか。国際標準化機構(ISO 7243)では、WBGT値を用いて作業現場の暑さ評価を簡便に実施する方法として、身体作業強度、暑熱順化の有無、気流の有無など基準値を示し、この値を超える環境での作業は熱中症リスクが高いと判断します。

表1:WBGT値(暑さ指数)と暑熱許容基準値の目安
身体作業強度 作業内容(例) WBGT基準値(℃)
暑さに順化している 暑さに順化していない
安静 安静 33 32
軽作業 楽な座位作業、軽い手作業、手・腕の作業、乗り物運転、歩行 30 29
中等度作業 継続した頭と腕の作業(くぎ打ちなど)、腕・脚の作業(トラクター運転)、腕・胴体の作業(トラクター組み立て、草むしり)、軽量荷物の運搬 28 26
重作業 重い材料運搬、シャベル・のこぎり作業、草刈り、速歩 25~26 22~23
極重作業 最大速度での激しい作業、階段を上る、走る 23~25 18~20

なお、この基準では、着衣条件を通気性がある標準的な作業服(0.6clo値:cloは衣類の保温性の目安になる数値)としているため、防護服などの厚着や、通気性の悪い作業服を着用している場合には、補正が必要です。

測定したWBGT値は、作業場や工場内でモニタできることが望ましいでしょう。WBGT測定ができない場合でも、最低限、作業現場の温湿度測定は行うべきです。なお、天気予報によって、翌日の気温や湿度などを、ある程度、把握することは可能です。ただし、地点が少しでも外れている場合や、日射や気流などの条件により、身体にかかる温度ストレス量は変わります。

現場の環境条件の測定が行えるようになったら、管理者は、次に挙げる暑さ対策を行うと効果的です。まず、現場の測定環境温度と気象庁や他の天気予報会社の予報を突き合わせ、どの程度の差(予報と現場の差)があるのかを確認します。その上で、前日の予報から当日の温度環境を予想し、作業開始前に、先の熱中症予防のための運動指針を参考に、その日の暑さの目安と注意すべき点について、管理者がメッセージを発します。

なお、湿度が60%以上になった場合には、熱ストレス量が大きくなると判断することが必要です。さらに、5、6月は、基準温度をワンランク上げて判断します(例:25℃であっても27℃の基準値で判断するなど)。初夏は、暑さへの慣れの程度が低く、真夏よりも低い温度で障害が発生しやすいためです。

2. 暑さ対策としての作業時の生体管理

管理者は、環境条件とともに、個々の作業者の体調管理を行うことも重要です。暑熱耐性機能をはじめとする体力の個人差や、その日の体調による影響があります。日本産業衛生学会では、暑熱環境下での作業許容限界値として、体温や心拍数の上限などを示しています。作業継続が可能な体温の上限の目安は38℃です。また、暑熱順化が十分に進んでいる作業者の場合には、38.5℃を目安としています(体温水準が個人によって異なるため、作業前の体温から1~1.5℃上昇した場合と考えてもよいでしょう)。暑熱環境下で、強度が大きい作業を続けると体温が継続的に上昇します。体温が38℃を超える状況が想定される場合には、いったん作業を中断し、休憩する必要があります。

心拍数についても基準が定められています。作業中の最高心拍数が、「180-0.65×年齢」を超えた場合や、心拍数が数分間「180-年齢」を超えている場合にも、作業を中断し、休憩する必要があります。近年では、心拍数をモニタできるウェアラブルセンサも開発されています。これらを利用することも対策として効果があります。

体温や心拍数などの生理指標とともに、作業限度の指標として、主観的な温度感覚や疲労感覚を使うことも有効です。作業者が「とても暑い」、かつ「疲労している」と感じているのであれば、いったん作業を中断し、リセットするという判断が必要です。なお、このように作業が中断した状況下では、なるべく涼しい場所で休憩を取り、水分補給とともに、風に当たる、冷たいタオルで体を拭くなどの体冷却を行います。

3. 個々の健康管理と教育

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