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量子の重ね合わせとは:量子コンピュータの基礎知識3

量子コンピュータの基礎知識

更新日:2022年6月10日(初回投稿)
著者:東京大学 大学院 工学系研究科 物理工学専攻 准教授 武田 俊太郎

前回は、量子コンピュータ誕生の歴史と、計算の仕組みを紹介しました。今回は、量子コンピュータに使われる量子の重ね合わせの性質について、詳しく説明します。

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1. 重ね合わせとは

量子コンピュータは、量子というミクロな粒の不思議な振る舞いを使って計算を行う、現代のコンピュータとは異なる計算の仕組みのコンピュータです。量子は、2つの状態のどちらとも決まらない、重ね合わせ(第2回)という中間的な状態になることができます。その現象を使って、「0と1の重ね合わせ」である量子ビットという情報を表すことで、新しい計算の仕方ができるのです。

この重ね合わせとは、一体何なのでしょうか? 多くの読者が疑問に思っているでしょう。重ね合わせはミクロな世界特有の現象で、目に見えるものではないので、なかなかイメージできるものではありません。しかし、ミクロな世界で実際に起こる物理現象を説明するには、重ね合わせという概念を持ち出さないとつじつまが合いません。その物理的実体を知ってもらうためには、少しだけ物理の話をする必要があります(ただし、どうしても物理の話は聞きたくないという方は、今回は読み飛ばして、第4回へと進んでもらっても構いません)。

2. 二重スリットの実験で量子の世界を垣間見る

量子力学は、日常生活よりもずっとずっと小さな世界の物理法則をまとめた理論です。量子とは、ざっくりいえば、物の構成単位となる小さな粒のようなものです(第1回図1)。その代表例は、身の回りの物質の構成単位である原子や、原子そのものを形作る電子や陽子、また光の構成単位である光子などです。これらの量子は、私たちの日常的な感覚とは違った性質を持っています。量子の性質が現れる最も美しい実験の一つが、二重スリットの実験です。この実験は、量子コンピュータの計算の仕組みの本質的な部分とも深く関わっています。以下で詳しく見ていきましょう。

量子の代表として、電子を考えます。電子を、図1のように細長い隙間を2つ空けた板に向かって打ち出します。電子は、後ろの壁のどこに当たるでしょうか? 電子がもし左の隙間を通ったら、そのまま直進して壁の左寄りの位置に当たるはずです。右の隙間を通ったら、右寄りの位置に当たるでしょう。従って、左寄りか右寄りのどちらかの位置に当たると予想できます。

図1:二重スリットの実験の予想

図1:二重スリットの実験の予想

しかし、実際にやってみると、その結果は予想に反します。何が起こるのでしょうか? 電子1個を発射するごとに、壁のある1点にぶつかります。これを何回も繰り返していきます。すると、電子が当たった位置と当たらなかった位置が、しま模様のように交互に現れます(図2)。これは、当初の予想と違う結果です。

図2:二重スリットの実験の実際の結果

図2:二重スリットの実験の実際の結果

もし同じような実験を、電子の代わりにサッカーボールのような大きな物質で行えば、当初の予想通り、後ろの壁の左寄りか右寄りのどちらかに当たるでしょう。しかし、ミクロな世界の電子では、私たちの知らない「何か」が起こって、違う結果となったのです。

3. 二重スリットの実験をどう解釈するか?

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

4. 二重スリットの実験と量子コンピュータ

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