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包絡解析法による免震層の評価:免震の基礎知識3

免震の基礎知識

更新日:2017年12月7日(初回投稿)
著者:福岡大学 建築学部 教授 高山 峯夫

前回は、免震構造と耐震構造の比較から、なぜ免震構造が地震被害を防げるのか解説しました。第3回では、免震層を評価する手法の一つである、包絡解析法を紹介します。

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1. 包絡解析法とは

包絡解析法とは、建物への入力エネルギーと免震層の吸収エネルギーのバランスを考慮することで、免震層の応答変位や応答せん断力係数を予測する解析法です。免震構造は、免震層に地震動のエネルギーを集中させる明快な構造なので、地震動による建物への入力エネルギーが免震層で全て吸収されると仮定できます。そのため、建物への入力エネルギーと免震層の吸収エネルギーが等しくなります。

包絡解析法を用いると、免震構造物に生じる変位・せん断係数などの応答予測や、免震層の性能(免震周期・ダンパーの減衰量など)の評価が可能になります。時刻歴応答解析(個別の地震波を用いて解析する手法)と異なり、包括的な応答評価が可能です。そのため、時刻歴応答解析による結果の検証や、設計した建物の性能評価に用いられます。今回は、包絡解析法を取り上げ、さまざまなパラメータが免震構造の挙動にどのような影響を及ぼすかを解説します。

2. 地震時の入力エネルギー

免震建物への入力エネルギーを計算してみましょう。建物基礎部には、免震層としてアイソレータとダンパーを使用し、地震エネルギーの吸収は免震層のみで起こるものとします。この時、入力エネルギーと吸収エネルギーは以下の式で表されます。

We(t)+Wp(t)=E(t)

ここで、We(t)はアイソレータの弾性ゆがみエネルギー、Wp(t)はダンパーの消費エネルギー、E(t)は地震動による建物への入力エネルギーです。いずれも、時間(t)の関数です。計算を簡略化するために、免震建物は1自由度系振動モデル(一方向のみに振動する)と仮定します(図1)。

図1:1自由度系振動モデル

図1:1自由度系振動モデル

地震動による免震建物への入力エネルギーは以下の式で表されます。

地震入力エネルギー

ここで、zの2回微分は地震動により建物に生じる加速度、Mは免震建物の質量です。地震入力エネルギーEは、建物質量Mとエネルギーの等価速度VEに変換しておくと便利です。

エネルギー等価速度

3. 地震時の応答モデル

包絡解析法では、アイソレータの復元力特性は弾性型、ダンパーの復元力特性は完全弾塑性型を有していると仮定します(図2)。弾性型では荷重に比例して変形量が増大します。完全弾塑性型は、ある荷重までは比例して変形量が増え、ある変形量以上では荷重が増えないモデルです。

図2:弾性型と完全弾塑性型に荷重を加えた際の変形量

図2:弾性型と完全弾塑性型に荷重を加えた際の変形量

このようなモデルでは、最大変形量δmaxが生じたときのアイソレータとダンパーの吸収エネルギー量は以下のように表されます。

アイソレータとダンパーの吸収エネルギー量

ここで、Kfはアイソレータの水平剛性、δmaxは最大変形量、SQyはダンパーの降伏耐力、Sδpはダンパーの累積塑性変形量です。これらの式を展開すると、ベースシア係数α1と免震層の最大変形量δmaxの式を、免震建築物の振動周期Tfで表すことができます(図3)。この式を用いると、図5図6のようなグラフを描くことができ、それぞれのパラメータが免震性能にどのような影響を及ぼしているかを一目で確認することができます。

図3:ベースシア係数と免震層の最大変形量の式

図3:ベースシア係数α1と免震層の最大変形量δmaxの式

4. ベースシア係数とは

ベースシア係数とは、地震時の建築物の最下層に生じるせん断力を建築物の重量で割った値(層せん断力係数)です。図4に、多質点系振動モデルを示しました。一般的に、建築物は高層階ほど地震時に大きく揺れ、生じるせん断力も大きくなります。ベースシア係数が低くなるように建築物を設計することで、上層階の揺れを抑えることができます。

図4:多質点系振動モデル

図4:多質点系振動モデル

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5. 免震構造の応答予測

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

参考文献:
秋山宏、建築物の耐震極限設計(第2版)、東京大学出版会、1980年
秋山宏、エネルギーの釣り合いに基づく建築物の耐震設計、技報堂出版、1999年
秋山宏、第1層エネルギー集中型柔剛混合構造の地震応答予測、日本建築学会論文報告集、第400号、1989年

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