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免震効果の調査:免震の基礎知識5

免震の基礎知識

更新日:2018年1月11日(初回投稿)
著者:福岡大学 建築学部 教授 高山 峯夫

2016年4月の熊本地震発生時、熊本県内には工事中含めて24棟の免震建物がありました。これらの免震建物のうち、17箇所について実際に現地に行き、調査を行った結果をまとめました。免震構造物により、地震被害はどの程度抑えることができたのか、お伝えします。

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1. 免震建築物の調査概要

熊本市周辺の免震建物17棟に対して、2016年に発生した熊本地震による影響を調査しました。表1に、調査した免震建物をまとめています。調査対象の建築物は共同住宅、医療施設、事務所、倉庫などです。免震クリアランスとは免震建物が動けるように確保している隙間のことです。

表1:調査した免震建物の一覧
建物 用途 建設年 構造 階数 免震部材 免震
クリアランス
(mm)
所在地
A 共同住宅 1998 RC 14 HDR 430 熊本市
RC 11 HDR 430
B 病棟 2002 SRC 13+B1 NRB、LRB、
SD、CLB
500
2010 SRC 13+B1 NRB、LRB、
SD
500
診療棟 2006 SRC 7+B1 LRB 550
C 共同住宅 2002 RC 14 NRB、HDR 600
2002 RC 14 NRB、HDR 600
D 宿泊施設 2002 RC 12 HDR、OD 450
E 共同住宅 2008 RC 15 NRB、USD、
LD
600
F 共同住宅 2008 RC 13 NRB、USD、
LD
G 事務所 2015 S+SRC 7+B1 NRB、USD、
SnRB
650
H 医療施設 2011 RC 5 HDR 600 山鹿市
I 事務所 2014 S+CFT 5+B1 NRB、LRB、
ESD、USD
600
J 共同住宅 2008 RC 15 HDR、ESD、
USD
600 八代市
K 共同住宅 2008 RC 14 NRB、USD、
LD
550
L 倉庫 2013 S+SRC 2 NRB、LRB、
ESD
580 その他
M 医療施設 2014 RC 4 NRB、LRB 500
RC:鉄筋コンクリート造、S:鉄骨造、SRC:鉄骨鉄筋コンクリート造、
CFT:コンクリート充填鋼管構造
NRB:天然ゴム系積層ゴム支承、LRB:鉛プラグ入り積層ゴム支承、
HDR:高減衰積層ゴム支承、SnRB:錫プラグ入り積層ゴム支承、ESD:弾性すべり支承、
CLB:直動転がり支承、OD:オイルダンパー、SD:鋼棒ダンパー、USD:U型鋼材ダンパー、
LD:鉛ダンパー

免震性能の調査として、定性調査と定量調査を行っています。定性調査では、居住者、施設利用者、周辺住民へのヒアリング・アンケートを実施しました。定量調査では、地震時の免震建物の挙動を、けがき記録もしくは免震装置周りの地震痕などを用いて確認しています。けがき記録とは、免震建物に金属針(けがき針)、地盤に金属板(けがき板)を設置し、地震時に金属針が金属板の表面に付けた傷を観察して、建物の変位量を計測する手法です(図1)。けがき記録では、建物の変位量を片振幅と全振幅の最大値で表します。片振幅とは、ゼロ点から極大値、あるいは極小値までの距離のことです。全振幅とは、極小値から極大値までの距離のことです。地震による建物の変位は、図2のように正方向への変形量と負方向への変形量が異なります。そのため、全振幅と片振幅の両方を示すことで、建物の変位量をより正確に表すことができます。

図1:M建物のけがき板

図1:M建物のけがき板

図2:M建物のけがき記録

図2:M建物のけがき記録

2. 免震建築物の調査結果

現地調査を行った5つの事例について、免震装置と地震被害の概要を解説します。

1:B建物(医療施設)

・概要

表1のBは、熊本市内にある医療施設です。近くにある地震観測点では、熊本地震の本震で震度6強の揺れが観測されました。Bには免震建物以外にも、新耐震や旧耐震の建物がありました。

・建築物構造

B建物の免震病棟は、13階建て+地下1階のSRC構造をしています。免震装置として、天然ゴム系積層ゴム支承、鉛プラグ入り積層ゴム支承、鋼棒ダンパー、直動転がり支承を設置しています。免震診療棟の構造は7階+地下1階のSRC構造です。免震装置として、鉛プラグ入り積層ゴム支承を用いています。

・地震による被害

免震構造の病棟と診療棟では、家具・診療器具などの転倒はなく、ほとんど被害はありませんでした。そのため、診療業務は通常通りに行うことができ、免震病棟から患者を避難させる必要もありませんでした。免震診療棟は、停電や断水の影響があったものの、急患の受け入れを迅速に再開できました。一方、旧耐震の建物の一部は大破、新耐震の建築物は一部が破損してしまいました。数日の休診日が必要だったものの、地震による傷病者への対応は可能でした。

・けがき記録

病棟では38cm(片振幅)と60cm(両振幅)、診療棟では41cm(片振幅)と72cm(両振幅)を記録しました。

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

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