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エレクトロニクスを支える電子デバイス:半導体の基礎知識3

半導体の基礎知識

更新日:2020年12月2日(初回投稿)
著者:長岡技術科学大学 名誉教授  産学官連携研究員 内富 直隆

前回は、n型半導体とp型半導体を説明しました。今回は、電子回路の信号処理に欠かせないトランジスタについて解説します。トランジスタの発明によって、その応用範囲は真空管を大きく超えて広がっていき、ついには1つのチップに数億個のトランジスタが集積されるまでになりました。また、近年では情報通信の高度化に伴う電波の周波数資源の開拓に、高周波トランジスタの存在が必要不可欠となっています。

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1. トランジスタの発明

1904年、イギリスの物理学者、ジョン・フレミングによって2極真空管が発明されました。2極真空管は、カソード電極とアノード電極から構成され、無線通信機の検波器(ダイオード)として用いられました。その後、アメリカの発明家、リー・ド・フォレストが、増幅・検波・整流作用を行うグリッド電極を組み込んだ3極真空管(トライオード)を発明します(図1)。この3極真空管は、信号処理を行うアンプやラジオなど、電子回路にとって不可欠な部品となったものの、寿命が短く、消費電力が大きいといった欠点がありました。こうした課題を克服するため、半導体を用いた固体デバイスを創り出す研究が始まります。

図1:ガラスの真空管(例)

図1:ガラスの真空管(例)

真空管と同じ機能を持つ半導体デバイスのアイデアは、1925年、ドイツの物理学者、ユリウス・エドガー・リリエンフェルトによって提唱されています。それは、半導体の表面に電場をかけることで半導体内部の電荷濃度に変化を起こし、電気伝導を変化させるという、電界効果型の固体増幅素子の提案でした。しかし、残念ながらその後の研究に結びつくような内容ではありませんでした。後の1936年、アメリカのベル電話研究所(通称・ベル研)では、マービン・ケリー(後にベル研の所長となり、トランジスタの父と呼ばれます)が真空管に代わる新しい半導体デバイスの増幅器を夢見て、ショクレーを初めとする科学者をスカウトし、研究所内に半導体グループの体制を整えます。ここから、ゲルマニウムとシリコンを用いた固体増幅素子の実現への挑戦が始まりました。

ジョン・バーディン、ウォルター・ブラッテン、ウィリアム・ショクレーの3人は、金属電極と半導体の間の空間に発生する電界によって半導体表面近傍の電気伝導度を変化させる、電界効果型の半導体素子の実現に向けて研究を進めたものの、うまくいきませんでした。そこでバーディンは、半導体表面に存在する電子のトラップ準位の存在を仮定し、このような表面の欠陥により入力電位の変化が半導体内部に伝わりにくくなると考えました。そして1947年、バーディンとブラッテンは、酸化したゲルマニウム表面に金のリング状電極を付けたサンプルを調べていたとき、偶然にその酸化膜を壊してしまいます。それでもなお実験を続けたことで、予想もしなかった実験結果を見いだしました。これが、「点接触型トランジスタ」として知られているものです(図2)。このように、研究に没頭しているときにたまたま起こる出来事で、意図せず重大な新発見をすることをセレンディピティと呼び、点接触型トランジスタの発明はその代表例といえます。

図2:最初の点接触型トランジスタ(ゲルマニウムの表面にくさび型の電極を押し付けたもの)

図2:最初の点接触型トランジスタ(ゲルマニウムの表面にくさび型の電極を押し付けたもの)

これとは別に、ショクレーは「接合型トランジスタ」の提案をします。これは、不純物濃度の少ないn型半導体の領域を、2つのp型半導体の領域でサンドウィッチ状に挟む構造を作れば増幅作用が現れる、という理論的な予想でした。その後、高純度のゲルマニウム結晶の生成が可能になったことから接合型トランジスタが作られ、その動作が実証されました。この業績によって、ショクレー、バーディン、ブラッテンは、1956年にノーベル物理学賞を受賞します。ちなみに「トランジスタ」の名前は、同僚のピアースが提案し研究所内の投票で決められました。

世界最初のトランジスタやその後の集積回路は、ゲルマニウムで作られています。これは、ゲルマニウムの結晶が入手しやすく加工が容易であること、電子やホールの移動度が大きかったことによります。しかし、ゲルマニウムのバンドギャップは0.67eVと、シリコンの1.1eVに比べて小さいことから、温度に弱いという難点がありました。従って、温度の上昇に伴いトランジスタの性能が低下してしまいます。その後、結晶成長技術の進展により、また工業的な大量生産の観点からも、半導体材料はゲルマニウムからシリコンに移っていきます。そして「トランジスタの発明」は、従来の真空管からの置き換えだけではなく、さらに重要な「集積回路」へと発展していきます。

2. 電界効果トランジスタ

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

3. バイポーラトランジスタ

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

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