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グリッドとその制御:スマートグリッドの基礎知識1

スマートグリッドの基礎知識

更新日:2020年3月19日(初回投稿)
著者:YSエネルギー・リサーチ 代表 山藤 泰

グリッドとは、発電された電力を需要先まで送るための送配電系統のことです。発電所は、発電量と電力需要が等しくなるように、秒単位で制御されます。そして、その制御にICT(情報通信技術)を利用している送配電系統を、スマート(賢い)グリッドと表現しています。本連載では、第7回にわたり電力事業が始まって以来の系統制御の歴史などを通して、スマートグリッドの基礎知識を解説します。

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1. グリッドとは

発電所で作られた電力は、それを必要とする消費先まで送られます。このとき、消費地までの距離や、住宅と工場などで大きく異なる消費量を考慮する必要があります。今世紀に入る頃まで、発電所は水力、火力、原子力などの相違はありますが、そのほとんどが大規模なもので、数も多くありませんでした。そのため、需要地へ電力を供給するには、遠距離の送電でも損失の少ない超高圧にして需要地近くの変電所まで送り、そこで消費先の必要とする電圧に落として、配電します。発電所からの高圧送電線が数多く設置され、それが変電所でさらに低圧細分化されるため、全体を見ると枝分かれした網(グリッド)のようになります。このことから、送配電系統をグリッドと呼ぶようになったのです。

発電所で作られる電力は、世界的に50あるいは60Hz(ヘルツ)の交流です。これを、まず数10万~100万V(ボルト)程度に昇圧して高圧送電線で変電所まで送り、そこで電圧を落とした後、多数の電線に分岐して送電します。その電力は、最終的には工場や住宅で必要な電圧まで落とされ、地域へ供給されるのです。日本の場合、身近なものとしては、道路脇の電柱に取り付けられた変圧器があり、そこには6,600Vで送られていま。ここから住宅へ供給される電力は、100あるいは200Vになります。発電所と、こうした変圧器を結ぶ無数の電線網がグリッドです(図1) 。

供給される交流電力の周波数は、国あるいは地域によって50Hzか60Hzに分かれています。大まかにいえば、アメリカでは60Hz、ヨーロッパでは50Hzです。日本国内では、東日本が50Hz、沖縄も含めた西日本が60Hzという、独特な周波数構造になっています。周波数の異なる電力は、直接相互融通ができません。異なる周波数地域を結ぶためには、一度高圧直流に変換し、それを再度高圧交流にしていますが、その容量の小さいことが問題となっています。また、電圧も国によって異なり、家庭用でも100~250Vの幅があります。海外旅行の場合には、行き先の電圧に注意する必要があります。各国の末端電圧と周波数は、ウェブ上で検索できます。

図1:送配電系統の模式図

図1:送配電系統の模式図(引用:電気事業連合会ウェブサイト

2. グリッドの制御

周波数は、一つの系統全体で常に同一かつ安定していなければなりません。このことは、グリッドの制御と密接に関係します。発電所では、電力需要(消費量)に対応する量の発電をします。そして、電力の需要量は常に変動するため、それに追随した発電が必要になります。需要が増えた時に発電が追随できなければ、送配電系統の周波数と電圧が下がってしまいます。また、需要が減ったときには、逆の変化をします。発電所の稼働は、この周波数の変動が一定の許容範囲を超えないよう、制御される必要があります。変電所でも、その下流の需要変動に対応した制御をしています。これが、グリッド制御の基本概念です。

電力需要は、季節や天候、また時間帯によって、大きく上下します。従って、発電を制御する電力事業者は、需要に対応した発電所とその発電量を決めるため、電力の需要予測をしなくてはなりません。翌日の電力を安定供給するために、どの発電所をどの時間帯にどのように稼働させるのかということを、長期間積み上げてきたデータから想定し準備します。例えば、原子力発電所や石炭火力発電所は、出力を素早く変えるのが難しい一方、水力や石油・ガス火力発電所は、柔軟に出力を変えることができます。さらに、発電単価(円/kWh)の安い発電所から稼働させる、という条件も考慮されます。そして当日、電力の周波数が需要の大小で変動することを、極力少なくするように、発電設備を稼働させます。日本の場合、その変動偏差値について±0.2Hz程を目標値としています。ヨーロッパでは、より小さな変動幅になるよう調整しています。これが、グリッド制御の根幹なのです(図2)。

イギリスのあるNPOが作成したウェブサイト(Dynamic Demand: http://www.dynamicdemand.co.uk/grid.htm#)では、この周波数が絶えず変化しているのを見ることができます。イギリス全体で、周波数が同時に動いているのです。例えば、イギリスで電力需要が増える朝方の時間帯では、周波数は低くなりがちで、発電所が発電量を増やすことにより50Hzに戻しますが、時には周波数が上がりすぎてしまうこともあります。また、https://gridwatch.co.uk/frequencyで、イギリスの周波数変動を図表にして表示しています。一度のぞいてみてください。

図2:周波数変動説明図

図2:周波数変動説明図

3. グリッドのスマートな制御

電力の需要と供給を一致させるためには、需要に関係する天候や気温など、さまざまな条件の変化や推移を予測し、それに対応した発電設備を稼働させる必要があります。電力事業が始まった19世紀の頃、需要が主に照明であった時代に比べ、さまざまな電気器具や設備が導入され、工場などで大量に電力が消費されるようになった現在、需要予測は急激に難しくなっています。電力を供給する地域も広域化すると、天候などの変化も各地域単位で知る必要が出てきます。このため、それらの情報を集約し、いくつもの発電所の稼働を制御する中央指令組織が設定されるようになりました。

需要予測に必要な情報には、地域のお祭りのような行事や、工場の臨時休業なども含まれます。これらの情報を取りまとめて需要を予測し、各発電所がどのように稼働するかを、中央指令から指示します。その後は、周波数のずれを戻すように、各発電所が出力調整を行います。これらは、主としてアナログデータに従った系統制御だといえます。電力事業が始まってから100年ほどは、発電所と送配電系統は、全て電力事業者が保有・管理していました。さらに、電力需要の変動も急激ではなかったため、人の経験と予測によって系統を制御することは、難しくありませんでした。ところがその後、自家発電設備、太陽光発電、風力発電といった、電力事業者の管理範囲にない発電設備が登場すると、その出力に起因する需要変動が大きくなり、系統全体の変動を制御することが困難になりました。例えば、工場などで自家発電設備が稼働すると、そこでの電力需要は、送配電系統から見ると下がることになるため、これまでの需要予測のやり方では把握が難しくなります。

そこで、最新の需要予測では、天候や需要の変化を細かく把握するため、測定値のデータをデジタルデータとして、通信網で系統制御の中核に送る方式に移行しています。今後最も重要となるのは、スマートメータが全需要先に設置されることです。現在、スマートメータの設置は世界的に進展しており、これによって需要先の個別の需要変化を、きめ細かく把握できるようになります。このデータが、デジタル通信網を通して管理センターに集約され、正確な需要予測および対応が可能になります。このように、デジタルデータを使って制御される送配電系統が、スマートグリッドです。スマートグリッドに完成形はありません。今後、蓄電池のような新しい分散型電源の設置が拡大すれば、それに応じて形を変えていくと考えられます。

いかがでしたか? 今回は、グリッドとその制御、そしてスマートグリッドの概念について解説しました。次回は、電力事業の歴史とグリッドの関係について解説します。お楽しみに!

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