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電力事業が直接制御できない発電設備が増加:スマートグリッドの基礎知識4

スマートグリッドの基礎知識

更新日:2020年7月10日(初回投稿)
著者:YSエネルギー・リサーチ 代表 山藤 泰

前回は、送電系統(グリッド)の広域化を説明しました。1900年代後半頃から、風力発電や太陽光発電が実用化され、送配電系統に接続されるようになりました。これらの発電設備は、稼働当初、系統連系がほとんど認められませんでした。出力変動の予測が難しく、電力事業者が直接稼働を制御できないためです。しかし、オイルショックが契機となり、総合効率の高いコージェネレーション(熱電併給)や、化石燃料を使わない再生可能エネルギーによる発電が拡大したのです。今回は、送配電の精密な制御・スマートグリッドの開発につながる、電力事業が直接制御できない発電設備の増加について解説します。

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1. オイルショックに対応したアメリカの政策がグリッド制御に影響

1970年代に、世界経済を危機的状況に陥れたオイルショック。これに対応するため、当時アメリカのカーター大統領は、PURPA-1978(公益事業統制政策法)を成立させました。コージェネレーションと、80MWまでの太陽光・風力・水力・地熱など、全ての再生可能エネルギーによる発電からの電力を、規模を問わず、各電力事業がそれぞれのAvoided Cost(回避コスト)で買い取ること、および、エネルギー効率向上に向けた施策の実施を義務付けたのです。

この電力買取対象となる設備はQF (Qualifying Facility:適格設備) と呼ばれ、要件を満たした自家発電と再生可能エネルギーによる発電設備の設置数は激増しました。また、系統制御に悪影響を与えるとして、これまで電力事業者が受け入れに消極的だった、他事業者の作った発電設備の接続も義務化されました。このため、系統の制御方法を、これまでのものより精巧なものにせざるを得なくなりました。

非常に高いAvoided Costでの買取義務は、電力料金の高騰を招く結果になったため後に見直されましたが、QFは維持され、接続義務は残りました。また、電力事業は、それぞれの気候条件なども考慮しながら、電力の消費を効率化する方策を、需要家に向けて実施することが義務付けられました。そのため、需要家が行う、建物の高度な断熱方式の採用や、効率の高い電気機器への交換に対して補助金を出すなど、地域の特性に則した具体的な方策を実施しました。その施策では、州政府に効率化目標を示した上で必要な費用を予算として準備した後、認可を受けて料金原価に入れてもらい、さらに実施後の成果を州政府に報告しなければなりませんでした。これによって電力事業は、送配電系統管理だけでなく、電力需要の制御まで自ら行う必要が出てきました。これが、スマートグリッドの発想に結びつくことになります。

2. オバマ大統領のグリーン・ニューディール政策

2008年12月に就任したアメリカのバラク・オバマ大統領は、世界的な経済不況からアメリカ経済を立ち直らせるための政策として、2009年2月17日にAmerican Recovery and Reinvestment Act of 2009(アメリカ復興・再投資法)を発効させました。これに向けた予算の12%となる375億ドルがエネルギー関係に向けられ、特に「エネルギー利用効率の向上」「再生可能エネルギーの導入促進」といった、地球温暖化対応分野に焦点が当てられました。そのため、この政策はグリーン・ニューディールとも呼ばれたのです(ニューディールは、ルーズベルト大統領が1933年に打ち出した景気回復施策)。

エネルギーに関係する具体的なプロジェクトは、まず老朽化した送配電系統の信頼性を向上させ、効率的に電力を送ることができるように設備を更新・増強します。次いで、風力発電や太陽光発電のような、天候によって出力が変動する再生可能エネルギーの導入を大幅に拡大させます。同時に、エネルギー消費を効率化するための電気機器の改良と並行して、エネルギー需要自体の制御を行います。これは、長期にわたるプロジェクトとなりました。このプロジェクトへの投資は各州でも行われ、風力・太陽光発電の導入が多い地域では、重点的に送電網の強化が実施されました。

ルーズベルト大統領のニューディール政策においても、本連載の第2回で述べたRural Electrification Act(農村電化法)によって、農村の協同組合に低利の融資をし、各農家に電灯とコンセントを1つずつ設置するなど、電力系統の拡大に大きく貢献しています。そして、オバマ大統領のグリーン・ニューディールは、その農村電化法以来の大規模な電力系統の強化に貢献したとされています。特に重要だったのは、当時急速に進歩しつつあった情報通信技術を送配電系統の制御に利用したことと、これまで力が入れられていなかった電力消費の制御までが行われるようになったことです。送配電系統に加えて、電力の供給先の電力消費も、情報通信技術を利用して一括制御する全体のシステムが、スマートグリッドとなったのです。このデジタル情報技術を使った制御方法は、アメリカだけでなく、再生可能エネルギーの導入が進むヨーロッパや中国、日本などでも導入されるようになりました。スマートグリッドの具体的な内容そのものは、情報通信技術の進歩に伴って変化し、高度化しています。

図1図2は、太陽光発電と風力発電の進展を表します。

図1 世界の太陽光発電の導入状況 (引用:経済産業省 資源エネルギー庁 エネルギー白書2020、P209)

図1 世界の太陽光発電の導入状況 (引用:経済産業省 資源エネルギー庁 エネルギー白書2020、P209)

図2 世界の風力発電の導入状況(引用:経済産業省 資源エネルギー庁 エネルギー白書2020、P210)

図2 世界の風力発電の導入状況(引用:経済産業省 資源エネルギー庁 エネルギー白書2020、P210)

3. 電力需要の制御(DSM: Demand Side Management)も必要となる

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