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コテ先の選び方とフラックスの活用法:はんだ付けの基礎知識2

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更新日:2015年7月17日(初回投稿)
著者:ゴッドはんだ株式会社 代表取締役社長 野瀬昌治

1.コテ先の選び方

はんだ付けを成功させるには、コテ先選びがとても重要です。

糸はんだに入っているフラックスの図

図1:糸はんだに入っているフラックスの図

煙となって蒸発するフラックス

図2:煙となって蒸発するフラックス

フラックス(はんだ付けに必ず必要な溶剤:後で詳しく解説)は、図1のように糸はんだにチューブ状(ごぼう天のように)に内包されています。このため、はんだ付けに使用できるフラックスの量は限られています。ハンダゴテで加熱を始めると、図2のように、フラックスは煙となってどんどん蒸発していくので、フラックスが活性化して働く時間は、数秒間しかありません。つまり、この数秒間にはんだ付けを完了させる必要があります。

第1回はんだ付けの実態でも記述したように、はんだ付けに最適な温度条件は、250℃で3秒間、溶融はんだを作り出すことです。そのためには、ハンダゴテの熱を効率よく、はんだ付け対象物(以下、母材といいます)に伝える必要があり、母材と直接接触して熱を伝えるコテ先の形状選びは、とても重要になります。

現在、日本でハンダゴテを購入すると、図3のように鉛筆を削ったような形状(B型、または円錐状と呼ばれる)のコテ先が多くの場合付属しています。このため、「この形が万能だろう」と考える人が多いのですが、実はこのコテ先が曲者です。この形状では、蓄えられる熱量が小さく、母材と点でしか接触できないため、はんだ付けに十分な熱量を伝えることができません。

市販のハンダゴテに多く採用されている鉛筆形状のコテ先

図3:市販のハンダゴテに多く採用されている鉛筆形状のコテ先
※母材と点でしか接触しない(熱を伝えられない)

コテ先は、一般的にはほとんど知られていませんが、実は30,000種類もの異なる形状が存在します。そして、本来は母材に応じて最適のコテ先を選択して、付け替えて使用するべきものです。上記のような鉛筆形状のコテ先1本だけでは、ハンダゴテの持つ性能の10分の1も引き出すことはできません。

代表的な形状のコテ先

図4:代表的な形状のコテ先

効率よく熱を伝えるためには、例えば図5のようなマイナスドライバー型(D型コテ先)であれば、線あるいは面で熱を伝えることができます。

D型(マイナスドライバー型)コテ先

図5:D型(マイナスドライバー型)コテ先

図6のような丸棒を斜めにカットしたC型コテ先でも、コテ先の当て方を工夫すれば、いろいろな角度から母材に接触させることが出来て、熱を効率よく伝えることが可能です。

C型コテ先

図6:C型コテ先

これまでの話をまとめると、はんだ付けは、母材に合わせてコテ先を選択できるように、形状や太さの異なるコテ先を何種類か持っていることが非常に重要になります。そして、最初に購入したハンダゴテに付属している鉛筆型のコテ先しか持っていないことが、はんだ付けを難しくしています。

残念なことに、このような情報はあまり知られていません。異なる形状のコテ先を購入しようにも、ホームセンターなどの店頭には並んでいないのが実情です。ここで正しい知識を学んだ人は、ぜひインターネットで検索するなど、最適なハンダゴテとコテ先を探してみてください。

なお、ハンダゴテやコテ先選びに自信のない人、面倒な人には、初心者から上級者まで広くお使いいただけるハンダゴテセットをノセ精機でもご紹介しています。よろしければご利用ください。(自分で道具を選ぶのも楽しみの一つです)

はんだ付け職人のハンダゴテセット

図7:はんだ付け職人のハンダゴテセット(小道具もそろっています)

ノセ精機 はんだ付け職人のハンダゴテセット ウェブページ

2.フラックスの活用法

図8:作業後のフラックス

図8:作業後のフラックス

図8は、はんだ付け作業が終わった後に残ったフラックスです。一見、液状に見えますが、実はプラスチックのように固まっています。フラックスは、はんだ付けではとても重要な役割をしています。あまり目立たず、気づきにくい存在ですが、フラックスなしで、はんだ付けはできません。ハンダゴテを使ったはんだ付けの技術は、「フラックスを上手に使う技術」と言い替えることもできます。

フラックスには、3つの大きな役割があります。

  •  金属の表面や、溶けたはんだ表面の酸化膜や汚れを科学的に除去する表面洗浄作用

  •  はんだの表面張力を低下させねばりを弱くして、はんだのぬれ(流れ)を良くする

  •  ハンダゴテを当てている間、金属の表面を覆い、金属の再酸化を防ぐ

通常、フラックスは糸はんだに隠れているため見えません。糸はんだを鋭利なナイフでカットすると、図9のようにチューブ状に含まれているフラックスを観察できます。

図9:カットした糸はんだ(フラックスが断面に見える)

図9:カットした糸はんだ(フラックスが断面に見える)

糸はんだを熱して溶かすと、前出の図2のようにフラックスは煙となって蒸発します。蒸発すると、フラックスはプラスチックのように固まり、効果を発揮しません。糸はんだに含まれるフラックスは極少量ですから、蒸発するまでの時間は、ほんの数秒間しかありません。そしてこの短時間に、はんだ付けを完了しなくてはなりません。

フラックスは、糸はんだが90℃程度まで加熱されると、溶け出して流れ出します。そして、金属表面を覆って表面の酸化膜などを除去しはじめます。なるべく長時間フラックスが活性化するには、蒸発を抑えるためにフラックスの温度上昇も抑える必要があります

ところが、初心者がはんだ付けをする際に、見よう見まねでよくやりがちなのが、図10の例です。熟練のはんだ付け作業者を見ていると、コテ先に糸はんだを当ててはんだを溶かしているだけのように見えます。しかし、糸はんだをコテ先に直接当てて溶かすと、はんだは母材の方へ流れていかず、フラックスだけがどんどん蒸発してしまいます。

図10:コテ先に直接糸はんだを当てて溶かす悪い例

図10:コテ先に直接糸はんだを当てて溶かす悪い例

さらに、図11のように、溶けたはんだ温度の高いほうへ流れる性質があります。コテ先に付着したはんだは、コテ先から母材へ流れずにコテ先の上に載ったまま、溶けたはんだはコテ先温度近くまで上昇してしまいます。これでは、フラックスは早々に蒸発し、オーバーヒート状態のはんだとなってしまいます。

図11:溶けたはんだの性質

図11:溶けたはんだの性質

したがって、はんだ付けの際、母材をはんだの融点以上の温度に温めてから、糸はんだをなるべくコテ先から離れた場所で溶かすと、フラックスが活性化する時間を長くすることができます。また、溶けたはんだは、高温のコテ先に向かって流れていくので、はんだがぬれ広がりやすくなります。

※塗布用液体フラックスについて
糸はんだに含まれるフラックスだけでは、どうしても足りない場合があります。例えば、SOPやQFPなどの実装では、1つの端子当たりのはんだが微量なため、フラックスの絶対量も不足します。こうした時に塗布して使える、便利な液体のフラックスが市販されています。

図12:液体フラックス(HAKKO FS-200 20ml)

図12:液体フラックス(HAKKO FS-200 20ml)

図13:液体フラックスの塗布

図13:液体フラックスの塗布

液体フラックスは、図13のようにはんだ付けしたい箇所に塗布して使用します。フラックスは「ちょい」と塗るだけで、飛躍的にはんだ付けを簡単にします。魔法の液体のようですが、使いすぎてはいけません。フラックス原液には、母材を腐食させてしまったり、電気的な導通の性質があります。よって、母材にフラックスを残したままにしておくと、はんだ付け部分が腐食したり、電気的にショートしたりする恐れがあります。できるだけフラックスの使用は控えめにして、フラックスを使用後は、必ずメタノールやIPA(イソプロピルアルコール)などで拭き取る必要があります。

次回(第3回)は、はんだ付けの基本動作を解説します!

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