店舗運営における事業システム:店舗運営の基礎知識3
投稿日:
- 2022年01月28日
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カテゴリ:
- 基礎知識
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前回は、コンビニエンス・ストアを中心に展開される、プライベートブランド(PB)による差別化を紹介しました。ビジネスで最も大切なことは、他社との差別化です。とはいえ、店舗運営においては、扱う商品が同じであれば他店との差別化を図ることは難しいといわざるを得ません。もちろん、陳列方法や接客態度で他店と差別化することもできるでしょう。しかし、店舗運営においては、もっと大きな差別化方法が存在しています。それが店舗運営における事業システムです。今回は、店舗運営における事業システムとはどのようなものなのかを解説します。
1. 店舗運営における事業システムとは
店舗運営における事業システムとは、店舗をどのように展開するか、また、取引相手との間にどのような関係を築くかなどの仕組みを体系化することをいいます。製品・サービスの差別化と比較しながら、事業システムの差別化について説明します(表1)。
製品・サービスの差別化 | 事業システムの差別化 | |
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方法 | 製品・サービスに違いを生み出す | 事業の仕組みを通して違いを生み出す |
特徴 |
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製品・サービスの差別化:
製品・サービスの差別化とは、前回紹介したプライベートブランドのように、商品そのもので差別化したり、あるいは、接客態度や陳列方法で差別化を行ったりすることをいいます。これらは、目に見えるかたちでの差別化です。例えば、バーゲンセールを行って価格面での差別化を図ることは、小売業においてよく見られる光景です。目に見える差別化は目立ちやすく分かりやすいため、時には華々しい成功を収めます。しかし、目に見えるが故に真似しやすく、差別化を継続できる時間が短いという弱点もあります。
事業システムの差別化:
事業システムの差別化とは、どのような仕組みで商品やサービスに対し顧客価値を実現するかといった戦略を練って差別化を行うことをいいます。仕組み面での差別化とも呼ばれます。事業システムによる差別化は、目立たず表面に現れにくいが故に消費者や競争相手に気付かれにくい傾向があります。そのため、他社にとって真似しにくく、差別化を長期的に持続できるというメリットがあります。
製造業の場合でいえば、トヨタ自動車の自動車デザインや内装、装備品といった目に見えるものは、ホンダもスズキも日産も、比較的すぐに真似できるものです。しかし、ジャスト・イン・タイム(JIT)の生産方式などは、多数の書物で解説されているほど有名であるにもかかわらず、そうそう真似できるものではありません。そこには複雑に絡み合った、目に見えない仕組みが存在しているからです。
店舗運営の場合においても、事業システムというものが存在しています。その代表的なものが、チェーン化でしょう。小売業の歴史の中でも、チェーン化は小売業の歴史を変えた、最も革命的な事業システムの一つだといわれています。
2. 店舗運営におけるチェーン化
皆さんも、チェーン店という言葉自体は聞いたことがあると思います。また、スーパーやコンビニエンス・ストア、ドラッグストアが、多店舗を運営していること自体を目にしたこともあるでしょう。このチェーン化というのは、実際に目にすることができるとはいえ、その背後には、しっかりとした目に見えない仕組みが存在します。
そもそもチェーン店というものには、その仕組みレベルで、レギュラー・チェーン、フランチャイズ・チェーン、ボランタリー・チェーンの3つの形態が存在します(図1)。
レギュラー・チェーン:
レギュラー・チェーンとは、スーパーやドラッグストアのように、同一資本によって多店舗展開していくことをいいます。単にチェーンと呼ぶこともあります。要するに、複数の店舗が全て直営店ということです。
フランチャイズ・チェーン:
フランチャイズ・チェーンとは、コンビニエンス・ストアのように、本部が店のオーナーと契約して、加盟店になってもらい、多店舗展開していくことをいいます。目に見える状態では同じチェーン店だとしても、レギュラー・チェーンとは仕組みが異なります。
ボランタリー・チェーン:
ボランタリー・チェーンとは、それぞれの店が、仕入れや本社機能など共有できる部分だけで協力関係を結ぶことをいいます。レギュラー・チェーンやフランチャイズ・チェーンに比べてレアケースだといえます。これは、見た目には別々の店舗でありながら、私たち消費者には見えないところで、小売業者がチェーン店と同じメリットを享受している仕組みになっています。
3. 店舗運営におけるコスト削減
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