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技術英語・工業英語の3つのCとは:技術英語・工業英語の基礎知識1

技術英語・工業英語の基礎知識

更新日:2018年10月16日(初回投稿)
著者:公益社団法人日本工業英語協会 専任講師 福田 尚代

技術英語(あるいは工業英語)は、テクニカル・ライティングまたはテクニカル・コミュニケーションともいわれます。発祥の地アメリカでは、「科学技術情報を、対象とする読者に合ったレベルで正確に、分かりやすく伝えることである」と定義されています。現在では、工業分野に限らず、製品・技術・サービスに関わる情報全般に適用されています。本連載では、全6回にわたり、技術英語の基礎をお伝えしていきます。

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1. 3つのC

実務で使う英語は、読み手に内容を正確に伝える、あるいは意図する通りに行動を起こしてもらうことが目的です。書き方が間違っていると、この目的を果たすことができません。例えば、「カードを穴に差し込んでください。」は、次の2文で意味が異なります。holeが1つしかないのにaを使えば、読み手は他にもholeがあるのかと戸惑ってしまいます。

Insert the card into a hole. (複数あるholeの1つに差し込む)
Insert the card into the hole. (唯一のholeに差し込む)

ますますグローバル化するビジネス環境においては、瞬時に英語で返信することが日常的に求められます。また、自社の技術を正確に発信しなければビジネスチャンスを逃してしまいます。そんな状況において、情報を正確に発信するスキルの強化は欠かせません。そのためのキーワードは3つのC 、Clear(明確)、Concise(簡潔)、Correct(正確)です。

図1:3つのC

図1:3つのC

2. 明確に(Clear)

日本語には、物事を控えめに表現することが美徳であるという、日本人の気質が反映されています。けれども英語は、論理的で事実を重んじる言語です。あいまいな日本語を直訳すると、当然英語もあいまいになり、意図が正確に伝わらない文章になってしまいます。まず、日本語で考える時点で具体的で分かりやすい語句や数値・データを使うように心掛けると、読み手にとって理解しやすい英文になります。

例えば、メールの相手に Please send me the report as soon as possible. とする代わりに、by March 12と明確に日付を伝えます。あるいは、「この装置はノイズに効果的だ。」は、具体的にどういう意味かを考え、「この装置はノイズを低減する。」とすれば、仕上がる英語は This device reduces noise. となり、1回読めば理解できる英文になります。

「人間の脳はエネルギーをたくさん使う。」(The human brain takes a lot of energy.)とする代わりに、「人間の脳は体重の2%を占めるだけだが、エネルギーの20%を消耗する。」(The brain accounts for only 2% of a person’s body weight, but it consumes 20% of the energy.)とすれば、誰が読んでも同じ内容として理解することができます。

図2:明確に(Clear)

図2:明確に(Clear)

3. 簡潔に(Concise)

簡潔に書くためには、語数を減らして読み手の負担をできるだけ少なくする必要があります。同じ意味であればなるべく語数の少ない表現を選びましょう。

昨日あなたのメールに返信しました。
I made a reply to your email yesterday.
→ I replied to your email yesterday.

パラメーターの調整を行った。
We carried out the adjustment of the parameters.
→ We adjusted the parameters. (「~を行う」は、具体的な動詞一語で表現するとよいでしょう。)

notを含む否定文はなるべく避け、ポジティブに表現すると、文は短くなります。

このエンジンはほとんど保守の必要はない
→ This engine needs little maintenance.

コンピューターは、ラジエーターの近くに置かないでください。
→ Keep the computer away from a radiator.

似通ったアイディアは、同じ文法表現(パラレル)にするだけでも、読みやすさがぐんとアップします。

この機械は、大型・重量で、価格も高い。
The machine is big, heavy, and costs much money.
→ The machine is big, heavy, and expensive.

新しいタブレットは、データ容量が増え、バッテリー寿命は長くなり、電力消費量が減った。
The new tablet increased the data capacity, has longer battery life, and the power consumption was reduced.
→ The new tablet increased the data capacity, extended the battery life, and reduced the power consumption.

”One of these days is none of these days.”(「いつの日か」は永遠に訪れない。)―Henry George Bohn、”The more we do, the more we can do.“(さらにやれば、さらにできる。)―William Hazlittなど、心を動かす名言は、パラレル表現の宝庫です。リズムが良く簡潔な表現は、技術英語でも大いに参考になります。

図3:簡潔に(Concise)

図3:簡潔に(Concise)

4. 正確に(Correct)

相手に伝える情報は、正確であることが大前提です。そのためには、正しい英語表現でなければなりません。冒頭の「カードを穴に差し込んでください」の文では、日本語にない冠詞による意味の違いについて述べました。このように、日本語と英語の違いをしっかり把握することが必要です。例えば、「コンピューターに接続しているコード類を全て取り外してください。」は、次の1と2、3と4のどちらが適切でしょうか。

(1. Remove, 2. Disconnect) any cords (3. connected, 4. connecting) to it.

removeは、「元の場所にない状態にする」が本来の意味ですので、ここでは2. Disconnect(接続を断つ)が適切です。connectは、 “人 connect A to B” で、「人がAをBに接続する」という使い方が基本であるため、コード類が自らコンピューターに接続しているconnectingではなく、接続されている3. connectedとします。このように、和英辞書で訳語を探すだけ、あるいは日本語をそのまま訳すだけでは正確な英語にたどり着かない場合があります。

日本語につられる誤訳も見逃せません。例えば、「LCD画面」のLCDは、Liquid Crystal Display の頭文字なので、LCD display と訳すのは誤りで、LCD と訳します。また、カタカナ語も要注意です。クーラー(coolerは冷却材。air conditionerが正しい)、クレーム(claimは強く要求すること。苦情や文句はcomplaint)、コンセント(consentは同意。socketが正しい)など、そのまま英語にしてしまわずに、心配なときは辞書で調べるようにしましょう。

図4:正確に(Correct)

図4:正確に(Correct)

今回は、技術英語の概要を皆さんにご紹介しました。次回からは、3つのCに基づいた1文の書き方について説明します。お楽しみに!

参考文献:福田尚代、速効!英文ライティング、日本能率協会マネジメントセンター、2017年

  
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