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なぜ、断熱が必要なのか:断熱の基礎知識1

断熱の基礎知識

更新日:2017年9月28日(初回投稿)
著者:有限会社ADS計画研究所 代表取締役 堀 清孝

私たちの生活には、なぜ断熱が必要なのでしょうか。その答えを簡単にいうと、快適に過ごしたいからです。日本には四季があり、温暖な地域にある3大都市圏(東京・名古屋・大阪)でも、冬と夏の温度差は30℃前後に達します。快適な期間は、一年を通じて半分程度でしかありません。また、地球温暖化や都市化などによる気温上昇は、日常生活に大きな影響を与えています。夏の恒例になってしまった、熱中症の危険を知らせるニュースはその典型です。第1回は、断熱の必要性について、気温の現実と断熱の歴史からひもといてみます。

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1. 上昇する外気温

断熱を学ぶ前に、最近の日本の外気温について見ていきましょう。日本の外気温は上昇しており、それは桜前線、熱帯夜の日数、冬の気温の変化に表れています。

1:桜前線が象徴する都市部の気温上昇

桜の開花は、気温と密接に関係しています。開花の時期は、2月1日から毎日の平均気温を足して400℃に達した日(400℃の法則)、あるいは最高気温の合計が600℃を超えた日(600℃の法則)ともいわれています。図1は、気象会社のウェザーマップが発表した桜の開花予想から作成したマップです。2017年の開花予想は、東京が3月21日、名古屋は3月28日、大坂は3月30日、福岡は3月25日でした。これらの都市圏だけ桜前線が大きく突出しており、都市圏平均気温の上昇が見て取れます。

図1:都市圏だけ突出する桜前線

図1:都市圏だけ突出する桜前線(ウェザーマップ 2017/5/18発表を基に著者作成)

2:増加している熱帯夜

気象庁は明治以降、各地の温度を計測・記録し続けています。夏の気温について調べるため、1920年から2016年の8月における最低気温の平均値を調べました。そして、その値が23℃未満なら濃い水色。23℃以上25℃未満は淡い水色。25℃以上ならオレンジ色で塗り分けました(図2)。25℃を超える年が多くなっていることが分かります。これは、熱帯夜が増えていることを意味します。昭和時代の夏は熱帯夜が少なかったため、うちわと扇風機のみでも比較的過ごしやすいものでした。しかし現代の夏の夜は、エアコン無しでは快適に過ごせなくなっています。

図2:東京・名古屋・大阪における8月の最低気温の平均値

図2:東京・名古屋・大阪における8月の最低気温の平均値

3:顕著な暖冬傾向

気温上昇は夏だけでしょうか? 実は、この傾向は他の季節にも当てはまります。1920年から1929年の10年間と、2000年から2009年の10年間の、毎年8月の最高気温と最低気温の平均値、そして2月の最低気温の平均値を調べ、その変化を東京・大阪・名古屋・鹿児島・秋田でまとめてみました(図3)。夏は最高気温の上昇よりも、最低気温の方が大きく上昇しています。さらに、冬の気温上昇は夏の3倍以上にもなります。顕著な暖冬傾向が、この結果から分かります。

図3:季節の違いによる、最高気温の平均値と最低気温の平均値推移

図3:季節の違いによる、最高気温の平均値と最低気温の平均値推移

2. 断熱制度の変遷

快適な生活に欠かせない断熱。実は、まだ40年程の歴史しかありません。図4に、戦後のエネルギー政策と公庫の政策をまとめました。最初の断熱基準(断熱の目安)が発表されたのは、第1次、第2次石油ショック後の1980年です。2つの石油ショックは、エネルギー源を中東の石油に依存してきた日本経済を脅かしました。しかし、省エネを進めなければならない状況が、住宅の断熱技術を生むきっかけとなったのです。そして、1980年にできたのが「昭和55年基準(旧省エネルギー基準)」、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)の「省エネ等級2」にあたります。当時、天井の断熱はグラスウール40mm(木造住宅、非気密、10K)が妥当とされていた時代です。その後の1992年に改正され、地球温暖化が注目を集めた1997年の京都議定書を経て、1999年に「平成11年基準(次世代省エネルギー基準 省エネ等級4)」が制定されました。このとき、天井の断熱材の基準は、グラスウール200mm(10K)と大きく変わりました。

図4:戦後のエネルギー政策と公庫の政策

図4:戦後のエネルギー政策と公庫の政策
※1980年から2013年までの基準は、エネルギーの使用の合理化などに関する法律(省エネ法)で規定されていました。2016年から、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)に移行し、若干の改正の上、現在は平成28年省エネ基準となっています。ただし、断熱基準そのものは、平成11年の省エネ基準とほぼ同じ水準です。

その後、この基準は2013年に計算方法が全面変更され、2015年、2016年に小改正がありました(図5)。しかし、断熱に必要な厚みなどの基準自体は、平成11年基準の内容とほとんど変わっていません。このように断熱の基準は、石油は無尽蔵ではないという経済環境の圧力と、地球温暖化による気温上昇という2つの要因で進化していったのです。

図5:住宅性能表示制度、省エネルギー関連項目の改正

図5:住宅性能表示制度、省エネルギー関連項目の改正(国土交通省 社会資本整備審議会 第32回建築分科会、資料5、2013年、P.1を基に著者作成)

3. 体感温度に影響を与える要因

私たちは、今日は32℃になるから暑そうだというように、気象庁が発表する外気温で寒暖を比較・考慮しがちです。しかし実際の体感温度は、外気温だけが作用しているわけではありません。さまざまなシチュエーションが、体感温度に影響を与えています。代表的なものが、地表の温度差と日陰・日なたの違いです。

1:地表の温度差

地表温度は日差しによって上昇し、地表の条件によって大きな差が生じます。図6は、ある日の同じ時間、同じ日差しで7か所の地表温度を調べた結果です。このとき、外気温は31℃程度。一方、地表温度は場所により大きく異なり、アスファルト舗装部分は最も高温の50℃前後を記録しました。しかし、下草がある土部分やグラウンドなどの地表温度はあまり上がっていません。つまり、アスファルトで囲まれた都会の道路面は暑く、樹木が多い芝生は外気温とあまり変わらないのです。

図6:8月の外気温と路面の温度

図6:8月の外気温と路面の温度(著者計測値)

2:建物も日陰と日なたで大違い

太陽の直射日光を浴びた建物の面は、高温になります。図7は日なたと日陰時の外壁の温度を計測した結果です。日差しを浴びた建物の外壁は、外気温よりも高くなります。

図7:日射による外壁温度の変化

図7:日射による外壁温度の変化(著者計測値)

いかがでしたか? 今回は、断熱の必要性について、気温の現実と断熱の歴史から説明しました。冒頭では日本の外気温の変化を確認し、最後に日なたと日陰では大きな温度差が生じることを解説しました。また、気象庁の発表する外気温とは、実は日陰の気温のことなのです。このことは、熱をはじく遮熱技術の発展へとつながります。次回は、断熱と遮熱のメカニズムをご紹介します。お楽しみに!

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