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超音波とは:超音波の基礎知識1

超音波の基礎知識

更新日:2019年2月28日(初回投稿)
著者:東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 教授 中村 健太郎

超音波は、人が聞くことを目的としない、高い周波数をもつ音や振動です。計測やイメージング、洗浄、加工などに用いられています。また、空中、水中、固体などの媒質に適したセンサや周波数フィルタなど、さまざまな電子デバイスにも応用されています。本連載では6回にわたり、技術者に必要な超音波の基礎知識を解説します。第1回は、超音波の概要と応用例を紹介します。

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1. 超音波とは何か?

音は空気の振動です。私たちの耳に聞こえるのは、振動数が1秒間に2万回以下の音です。すなわち、周波数20kHz以下の音を人は感じることができます。一般に、周波数が20kHzより高い音を、超音波といいます。超音波を伝えるものを媒質といいます。超音波は、空気のほか、水中や固体中にもよく伝わります。水中や金属などの固体中は電波や光が伝わりにくいため、よく伝わる超音波にとっては活躍の場といえます。

超音波が伝わる媒質に目印となる点を付けると、点は振動します。この点の振動の振れ幅を変位振幅、振動の速度を粒子速度と呼びます。図1は、媒質に付けた点が動いたある瞬間を捉えた図です。

図1:縦波超音波(疎密波)

図1:縦波超音波(疎密波)

この波動は、振動方向と伝搬方向が平行であることから、縦波と呼ばれます。また、目印の点が詰まった密な部分と、まばらになった疎な部分が一定間隔で繰り返し並んでいることから、疎密波と呼ばれることもあります。

媒質が密に縮んだり、疎に伸びたりすると、圧力の変動を伴います。すなわち、超音波の伝搬には、粒子の動きと圧力の変動という2つの側面があり、波動現象である電磁波が磁界と電界という2つの物理量で表せることに対応しています。このように、超音波は媒質のひずみ(変形)や圧力の変動を伝えます。ただし、伝える速度(伝搬速度)は媒質によって異なります。

金属などの固体中では、押したり引いたりする縦波に加えて、横ずれ(せん断変形)も伝えることができます。これを波として伝えるのが横波です(図2)。横波では、伝搬方向と振動方向が直交しています。

図2:横波超音波

図2:横波超音波

固体中では、縦波も横波も伝えることができます。同じ媒質中でも、縦波と横波では伝搬速度が異なり、横波の伝搬速度は縦波の約半分です。

常温の空気中における伝搬速度は約340m/s、マッハ1です(1,220km/h)。音や振動の伝搬速度は、音速と呼ばれます。表1は、さまざまな媒質中における音速の代表値です。

表1:さまざまな媒質中の音速(出典:国立天文台編、理科年表、丸善出版、2004年、P.418-421)
媒質縦波音速(m/s)横波音速(m/s)
空気340
ヘリウム970
1,500
エタノール1,207
アルミニウム6,4203,040
5,0102,270
5,9503,240
ナイロン2,6201,070
ポリウチレン1,950540
クラウンガラス5,1002,840

空気の音速は、1℃当たり約+0.6m/sの温度依存性があります。水の音速は、温度や圧力、溶解している物質、その濃度によって変わります。また、同じ名称の固体材料でも、製法や成分によって音速が微妙に異なります。

2. 超音波の応用と周波数

超音波の応用は、計測応用とパワー応用に大別されます。計測応用は、超音波を信号として用い、計測やセンシング、イメージングなどに利用されます。一方、パワー応用は、超音波をエネルギーとして活用します。

計測応用では、使う超音波の波長によって空間分解能が決まるので、応用の種類によって使用周波数が選ばれます。波動現象を使う以上、回折が起きるため、分解能は波長程度に限られます。これは、光学顕微鏡では光の波長であるμmオーダより細かいものを見ることができないのと同様です。例えば、音速をcとすると、波長λと周波数fの間には、c=f×λの関係があります。そのため、同じ媒質中で波長を短くするには、周波数を上げる必要があります。しかし、周波数を上げると減衰が増えるため、むやみに上げるわけにはいきません。従って、必要な分解能と測定距離から、適切な周波数が選ばれます。図3は、超音波の応用と使われる周波数の分布図です。

図3:超音波応用と周波数

図3:超音波応用と周波数

3. 計測応用とパワー応用

計測応用とパワー応用について、詳しく説明していきます。

・計測応用

計測応用の基本的な手法は、パルス波やバースト波を送信して、目標物に反射した超音波が戻ってくるまでの時間を計測するものです。空中では、自動車やロボット、ドローンの近接センサとして、主に40~60kHzが使われています。空気中の音速は約340m/sなので、波長は6~8mmです。水中応用としては、漁業に用いられる本格的なものから、レジャー用の個人向けのものまで、さまざまな魚群探知(魚探)装置が普及しています。魚探装置には、深度や魚の種類などに応じて、50kHzや200kHzなどの周波数が使われています。水中の音速は約1,500m/sなので、50kHzの波長は30mm、200kHzでは7.5mmです。

超音波が応用される医療用診断装置には、媒質を人体とするイメージング装置があります。人体は、水に近い音響的性質を示すので、音速は水と同程度です。腹部用エコーには数MHzの周波数が使われ、波長はサブミリメートルです。人体内の構造や、病変部のわずかな音響的性質の差による反射波(エコー)を受信し、映像化します。また、ドップラー効果によって媒質の流速を測定する応用には、風速計や流量計、医療用の血流イメージングなどがあります。

固体中の計測応用の中心は、非破壊検査です。非破壊検査は、各種配管やタンク、鉄道の線路、車輪などの亀裂検査に欠かせない手法です。主に数MHzの周波数が使われます。対象の多くは金属で、波長は約1mmです。対象によっては、横波を使う場合もあります。

超音波振動を使う電子部品には、クロックや基準周波数を作る水晶振動子をはじめ、フィルタ素子などがあります。テレビやスマートフォンなど、身近な電気製品にも利用されています。また、スマートフォンやカーナビ、カメラに搭載されているジャイロセンサも、振動を利用している点では超音波デバイスと考えられます。

・パワー応用

超音波のパワー応用にも、多くの種類があります。代表的なものは、眼鏡屋の店頭などで見かける超音波洗浄器です。これら汎用の洗浄機で使われている超音波振動は、数10kHzです。これに対し、半導体製造、精密機械分野、病院などでは、より高度な洗浄能力が求められます。半導体精密洗浄には、1MHz程度が使われます。

集積回路の細線や、バンプの接合には、数10~100kHzの超音波振動が使われます。プラスチックの接合や、かしめ加工には、数10kHzの超音波振動が使われることがあります。また、機械加工の切削や、穴開けの工具を超音波振動させることで、仕上がりの精度や加工速度が上がる効果が知られています。特にガラスやセラミックスなど、もろい材料の加工に効果を発揮します。金属の曲げやかしめに超音波振動を使うと、正確な加工が行えます。

材料や薬品製造の分野では、水と油を混ぜる乳化や化学反応促進などに、超音波が利用されています。超音波の化学作用に関する研究分野は、ソノケミストリーと呼ばれます。以上のように、さまざまな製造業の表には出ない場面で、パワー用途の超音波が使われています。開拓すべき他の用途も、多いことでしょう。

いかがでしたか? 今回は、超音波の概論と応用例を紹介しました。次回は、超音波の発生と検出について解説します。お楽しみに!

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