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真空用材料と部品:真空の基礎知識5

真空の基礎知識

更新日:2019年5月10日(初回投稿)
著者:大阪市立大学大学院 工学研究科 准教授 福田 常男

前回は、真空の測定方法について解説しました。今回は、真空中で使える材料の説明をします。到達圧力を下げるためには、真空容器や容器内の部品などから発生するガスを低減させることが重要です。また、真空容器や配管にはフランジなどの接続部分があるので、大気中からガスが漏れてこないようにシールする必要があります。このようなシール部分からのガス放出や透過も抑える必要があります。真空容器などの漏れを探す方法やその対処法を解説します。

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1. ガスの発生と真空で用いられる金属材料・無機材料

真空容器や真空内で用いる部品は、機械強度などの特性を吟味することはもちろん、真空環境に置いた時にガスを放出しないことが求められます。真空容器の中で発生するガスは二通りあります。一つは、容器や容器内に使用されている部品などの材料中や、材料表面から発生するガスです。もう一つは、容器や配管などの接続部分のガスケットから透過したものです(図1)。ガスの発生量は、ガスの圧力(p)×体積(V)で表すことができ、pV値と呼びます。毎秒当たりのpV値を流量といい、Pa・m3・s-1またはPa・L・s-1で表します。真空容器内に流入するガスの流量Qが小さいほど到達圧力が下がることになります。到達圧力とは、容器内のガスの発生量と真空ポンプの排気量が釣り合って到達できる最低圧力です。式で表すと、真空容器を排気速度Sの真空ポンプで排気した場合、到達圧力はp=Q/Sになります。

図1:真空容器からの脱ガス

図1:真空容器からの脱ガス

以上のことから、到達圧力によって、どの程度ガスの発生量を考慮しなければいけないのかを考えてみましょう。例えば、食品の保存に使う真空パックなどの低真空ならば、ガスの発生量が多い安価なプラスチックを用いても問題になりません。むしろ、大気圧との差による1kgw・cm-2の力に耐える強度があるかが重要になってきます。一方、高真空・超高真空が必要な用途では、できるだけガスの発生量を抑えなければならないので、真空容器や中の部品、配管などは金属やガラス・セラミックスを用いる必要があります。高真空・超高真空でも使えるプラスチックもありますが、第3回で説明したように、真空装置の加熱ベーキングを行う場合には、耐熱性を考慮しなければなりません。それでは、真空に使われるアルミニウム、黄銅(真ちゅう)、鉄、ステンレス鋼などの金属材料について説明します。

アルミニウムは、軽くて熱伝導が良く、延性が高くて機械加工が容易なため、構造材として広く使われています。銅やマグネシウムを添加したアルミ合金は、強度が高く加工性も良いので、真空容器や真空内の部品によく用いられています。アルミ合金の部材をTIG溶接する際、酸化物や炭化物によるホールが形成されやすく、漏れの原因になることがあります。また、アルミの表面酸化膜は多孔質で水分を吸着しやすいため、高真空や超高真空領域で用いるときには注意が必要です。

黄銅(真ちゅう)は、切削性が良いため真空によく使われる材料です。ただし、成分の亜鉛は比較的蒸気圧の高い元素なので、高温になるところに使用する場合は注意が必要です。ニッケルやクロムメッキした黄銅が用いられることもあります。

鉄は炭素の含有量で使用が区別されます。炭素量の少ない軟鋼(炭素含有量:約0.08~0.20%)は、延性に富み加工しやすいため、高真空までの真空容器や配管、真空中の部品によく使われます。後述するステンレス鋼と比べてやや脱ガスが多いので、表面をニッケルやクロムでメッキして低減します。炭素量が多い鋳鉄(炭素含有量:2%以上)は、延性が乏しく、主に鋳造に用いられます。鋳造品は細孔がある場合が多く、中空部分とつながっていて、ガスの発生が長く続き、漏れがあるわけではないのに圧力が下がらないといった原因になることがあります。また、鉄製品はさびが発生するため保管に注意し、真空容器などは定期的なメンテナンスが必要です。

高真空・超高真空で最もよく用いられる金属材料は、300系のステンレス鋼です。ステンレス鋼は強度や延性が高く、加工性が良いので真空容器だけでなく、真空中の部材や真空配管、フランジなどにもよく用いられます。ステンレス鋼は、TIG溶接も容易で信頼性が高く、漏れの少ない真空容器を作製することができます。真空用途には、主にオーステナイト系のSUS304L、SUS316Lが用いられます。

金属以外の無機材料も見てみましょう。ガラスの真空容器は、破損の危険性があるためほとんど使われることがなくなりました。ガラスは可視光に対して透明なので、真空内をのぞく窓材として用いられます。低真空であれば、窓材にはアクリルなどのプラスチックも使用できます。光を導入する場合は、透過できる波長範囲によってガラスの材質を選ばなければいけません。また、真空容器をベーキングする場合には、ガラスの膨張係数が金属より小さいので考慮します。

高真空・超高真空にした容器内での電気計測や電流導入のために、絶縁の気密シール(ハーメチックシール)の導入端子が用いられます。これには絶縁材として、ガラスやセラミックスなどが使われています。ガラスのハーメチックシールには、ガラスと熱膨張係数が近い金属であるコバールが用いられます。セラミックスの場合には、表面をメタライジングして金属をろう付けしたハーメチックシールが用いられます。これは、いくつかのメーカーから既に販売されています。ベーキングの必要のない低真空・中真空では、電流導入にエポキシ樹脂なども使用可能ですが、経時劣化を起こすことが多いです。

2. エラストマ材料とガスの透過

エラストマとは、ゴムなどのように大きな弾性を持つ高分子材料の総称です。真空技術で用いられるエラストマには、真空容器ののぞき窓や配管フランジの接続部分などに真空封止の目的で使われるゴムのガスケットがあります。真空用のガスケットは、多くの場合断面が円形でリング状になっているので、Oリングと呼ばれます。Oリングの形状はJIS B2401-1 Oリング-第1部:Oリングで規定されています。真空関連で比較的多く用いられているものは、運動用Oリング(P)、固定用Oリング(G)および真空フランジ用Oリング(V)です。材質は旧JISの呼び方が一般的で、第1種から第4種まであります。その中で真空用に用いられるのは、主に第1種と第4種です。表1は、真空技術で用いられる主なエラストマとその特性です。Oリングの代表的な材質には、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレン(CR)、シリコーンゴム(VMQ)、フッ素ゴム(FKM)が挙げられます。

表1:主なOリングの材質と識別記号

表1:主なOリングの材質と識別記号

ニトリルゴム(NBR)とは、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体からなっています。アクルロニトリルの含量によってゴムの特性が低ニトリルタイプ、中ニトリルタイプに分類されます。代表的な商品名をブナNといい、旧JISの識別記号は第1種A、第1種Bです。使用温度範囲は-25~110℃でガス透過係数は比較的小さく、酸・ケトン類に弱いです。

クロロプレン(CR)とは、クロロプレンの重合からなっています。モノマーは無色の液体で、特有の臭気があります。代表的な商品名をネオプレンといい、使用温度範囲は-30~110℃でガス透過係数は比較的小さく、酸・ケトン類に弱いです。

シリコーンゴム(VMQ)とは、ケトンの炭素原子をケイ素原子で置換したシロキサン結合による主骨格を持つ、合成高分子化合物の総称です。代表的な商品名はシラスティックといい、旧JISの識別記号は第4種Cです。使用温度範囲は-100~230℃でガス透過係数は大きく、酸・ケトン類に弱いです。

フッ素ゴム(FKM)は、フッ素を含む高分子からなる特殊合成ゴムの総称です。耐熱性や耐薬品性、耐油性などに優れています。代表的な商品名はバイトンといい、旧JISの識別記号は第4種Dです。使用温度範囲は-20~200℃でヘリウム透過係数はやや大きく、アルカリ・ケトン類に弱いです。

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

3. リーク探し

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真空関連産業の詳細は、一般社団法人日本真空工業会のウェブサイトをご覧ください。

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