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水質汚濁指標と汚濁メカニズム:水質汚染対策の基礎知識2

水質汚染対策の基礎知識

更新日:2016年10月26日(初回投稿)
著者:株式会社プリディクション郷事務所 兼 化学工学会SCE・Net 郷 茂夫
編集:Tech Note編集部

前回は、水質汚濁物質の発生源と排水ルートについて、解説しました。今回は水質の汚濁状態を定量的に把握するための水質汚濁指標と、汚濁のメカニズムについて、説明します。

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1. 水質汚濁程度を表す水質指標

水質指標とは、水質の汚濁状態を定量的に把握するための指標のことをいいます。代表的な汚濁指標名と定義、意味づけ、測定法、留意事項などを示します。これらの指標の組み合わせにより、ある水域についての適切な水質を表示します。この指標の中の重要なものについて、環境基準や排出基準が設定されているわけです。なお、有害な重金属(カドミウム、水銀)や有害な有機化合物(PCBやベンゼンなど)は、水質指標ではなく有害な化学物質そのものということです。詳しくは、連載第3回目で扱います。

有機性汚濁指標

有機性汚濁を表す指標としては、BOD(Biochemical Oxygen Demand)、COD(Chemical Oxygen Demand)、SS(Suspended Solids)などがよく知られています。

表1:有機性汚濁指標
指標特徴
DO(Dissolved Oxygen:溶存酸素量)

・水中に溶解している酸素の量:溶存酸素濃度が高い方が一般に好気性生物は生息しやすい。

・便利データとして、水中の飽和酸素濃度は水温20℃のとき8.84mg/Lである。

BOD(生物化学的酸素要求量)

・検水を好気性生物が十分生育できる状態(DOの十分ある状態)にして、20℃で5日間放置したとき消費されるDOの量。

・BODは生物によって「代謝されやすい有機物の量」を表現しているもので、有機物の全部の量を表すものではない。有機物分解の消費ほかに、アンモニア態窒素や亜硝酸態窒素が細菌によって酸化されるときにも、酸素は消費される。

COD(化学的酸素要求量)
CODMn
CODCr

・検水を酸化剤で処理して有機物を分解し、酸化剤の消費量をCODとする。酸化剤の種類、 酸化条件(処理温度、処理時間など)によって測定値は大きく変わる。酸化される範囲には、有機物だけでなく無機物も少し含まれる。

・日本では、酸化剤として過マンガン酸カリを用いる方法CODMn(JIS法)が標準法とされている。 海外では重クロム酸カリを酸化剤とする方法CODCrが一般的であり、両者の値には大きな差がある。後者が大きい値を示すことが多い。

日本の指標選択

・公共用水域の環境基準は、河川についてはBODを、湖沼と海域についてはCODを指標としている。

全有機炭素 (TOC)

・物理的燃焼による有機物由来の炭素量を表す。(生物分解性に関係ない)

・TOCの測定は、有機物中の炭素を直接燃焼させて発生したCO2量から求める。ほぼ100%分解して得られる値であり、有機物の全量を表す指標として用いられる。

SS(浮遊物重量)

・水中に懸濁している直径2mm以下の不溶解性物の量:0.12 mmの孔径のGFP(ガラス繊維ろ紙)でろ過し、 105~110℃で蒸発乾固したときに残る物質がSSである。

・SSが多い場合の弊害:(a)濁りや透明度低下、(b)葉類の光合成を阻害、(c)魚類のえらの閉塞死を引き起こす、(d)沈殿堆積してヘドロ化、(v)土壊の透水性低下により作物の育成を阻害、根腐れを引き起こす。

透視度

・水の透き通りの度合いを示す指標:ガラス管の底部に置かれた板上の二重線を、明らかに見分けられる最大の水柱の高さで表される。

大腸菌群数

・野生生物や家畜および健康な人のふん尿などの影響の指標。

富栄養化指標

富栄養化とは、水中の栄養成分の量が徐々に増えていくことを意味します。その結果、水中の微生物(特に植物プランクトンが重要)の生態に大きく影響します。ちなみに、栄養成分の全く無い水は透明できれいですが、生物は生息できません。生命をはぐくむ水には、ある範囲の栄養成分が無くてはならないのです。「うわぁ、きれいな水」と思っても、それが直ちに良い環境というわけではありません。

富栄養化の原因となる物質指標には、窒素とりんがあります。三大栄養素の1つのカリウムは水中に豊富にあり、制限因子とはなりません。(参考:植物プランクトンの体組成は、元素の割合では有機体炭素が全体の38% 、窒素は8.6%、りんは0.65%程度。)

表2:富栄養化の原因となる物質指標
指標特徴
窒素

・4つの存在形態:水中での窒素の存在形態は、有機性窒素、アンモニア性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素の4形態が存在する。 これらの総量が総窒素として表される。

・酸化過程:たんばく質やアミノ酸→微生物などが分解→アンモニア性窒素→生物化学的に酸化を受け亜硝酸性室素→硝酸性望素まで酸化される。同時に酸化の過程で酸素が消費される。

・利用しやすい形態:植物プランクトンなどの藻類に利用されやすい窒素の形態は、硝酸やアンモニアの無機体窒素である。

りん

・存在形態:水中のりんの存在形態には、りん酸イオン(りん酸体りん)と全りん(Pを含む有機化合物なども含む)がある。りん酸体りんは、さらに溶存イオンとして存在しているものと懸濁(けんだく)成分に付着、吸着しているものとに分けられる。両者を含めて水中の全体のりんを完全に分解し、全体量を測定したものが全りんである。

・利用しやすい形態:河川などを通じて流入したりんの中には、植物プランクトンに利用されやすいりん酸体りんがある。それが枯渇すると増殖が制限される。

富栄養化の程度を表す指標は、植物プランクトンの量としてのクロロフィルa、透明度、pH(Potential Hydrogen)などの指標があります。

表3:富栄養化の程度を表す指標
指標特徴
クロロフィルa
(藻類の量)

・葉録素の主成分で漢類の量を示す指標:近年は、閉鎖性水域での植物プランクトン量の指標として測定される。

透明度
※透視度と区別すること

・直径30cmの白い円形板を水中に沈めていき、目視できなくなった水深で示される:物理的に光が届く範囲を目視で確認する方法である。

・透明度の値からある程度の富栄養化を知ることができる。現場で簡単に測定でき、極めて有用な指標である。

pH
(水素イオン指数)

・富栄養化すると、植物プランクトンなどによる光合成が活発となり、水中の炭酸水素イオンが消費され、水素イオン濃度が減少し、pHは上昇する。

・富栄養化していない清澄な淡水のpHは弱酸性であり、pH値から富栄養化程度や植物プンクトンの量をある程度推定できる。

その他の水質障害指標

上記以外の指標には、富栄養化による障害指標(植物プランクトンが産生する生体毒性物質や異臭味物質:ジェオスミンやミクロシスチンなど)、汚染微生物指標(通常の塩素消毒によっては死滅しない菌:O157やクリプトスポリジウム)、水質指標生物と水質階級(特定の水質に生息する水生生物の存在量:ウズムシ類、サワガニ、ヒル類など)があります。

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2. 富栄養化の影響

富栄養化とは、水中の栄養成分の量が徐々に増えていくことを意味します。極貧栄養から富栄養、過栄養に達するまでの非常に長い時間(数万年から数百万年)の自然現象です。 しかし、近年の人間活動によって、特に湖沼やエスチャリー(Estuary:後で解説)で、栄養成分の水域への負荷が加速的に増大しました。栄養成分が過剰となり、植物プランクトンに代表される生物の異常増殖が起こっています。

富栄養化が進んだ湖沼水域での現象

植物プランクトンが異常増殖して、緑色、褐色となり、水面に広がる水の華と呼ばれる現象が起きます。赤褐色の場合は淡水赤潮と呼ばれています。湖面の美観を損ねたり、臭気を発したりします。浄水施設では殺菌のため塩素を添加します。ある種の有機物が反応して、発がん性の疑いがあるハロメタンが生成する場合もあります。

過度の富栄養化がもたらす被害の例

(a) 赤潮や水の華の発生による水産業の被害:植物プランクトンにより、えらの詰まりが生じ魚類が死滅します。水生植物群落の減少により、産卵場と避難場所が減少し、魚類の生産性が低下します。

(b) 湖沼水の異臭、微生物の分泌する悪臭による水道水への被害

(c) 湖沼や内湾の環境の悪化:動物プランクトンの種類と現存量が減少します。夜間に植物プランクトンの光合成がないため酸素欠乏になり、動物プランクトンは、激減します。

(d) その動物プランクトンが死滅して水底に沈むと、腐って(有機物が酸化的分解をして)、水底の酸素を消費します。水底が酸素欠乏になり、底生生物の種類と現存量が減少します。

3. 水質汚濁メカニズム

河川、湖沼や海湾水域の水質が悪化するのは、水質汚濁物質や有害物質がそれらの水域に流れ込むからです。しかし、これらの物質の水中濃度が高くなって、水質が悪化するだけではありません。自然界の現象はもっと複雑です。ポイントは、微生物の存在です。自然界の代表的な異常現象には、水が停滞しやすい湖や閉鎖性海湾では、植物プランクトンが大増殖して起こる赤潮があります。また閉鎖性海湾域では、夏には底層が貧酸素または無酸素状態になりやすく、底層水が海表面に上昇し、青潮と呼ばれる現象が起こります。これらの現象について、そのメカニズムを解説します。

河川での水質汚濁物質の挙動

河川には、未処理または十分に処理されていない排水や汚水が流れ込みます。しかし、自浄作用として、栄養塩となる窒素やりんの除去も期待されています。具体的には、(a) 懸濁物質除去、(b)植生に付着した微生物による有機物の分解作用、(c)植生に付着した藻類や植生自身による栄養塩の吸収などが河川では起きています。

河川は空気に接触しているので、水中の溶存酸素の状態を予測できます。微生物による好気的な分解は、水中の溶存酸素濃度に依存しており、有機物が河川などの水域に流入した後の、溶存酸素濃度の変化(溶存酸素垂下曲線)で推定できます。この溶存酸素の状況により、自浄作用の促進または停滞を判断することができます。

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

4. 閉鎖性海域で出現する貧酸素水塊

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5. 生態系モデルの開発

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