メニュー

生物処理法の種類:水質汚染対策の基礎知識7

水質汚染対策の基礎知識

更新日:2017年1月17日(初回投稿)
著者:株式会社プリディクション郷事務所 兼 化学工学会SCE・Net 郷 茂夫
編集:Tech Note編集部

前回は、物理的、化学的汚水処理技術について解説しました。今回は、汚水処理技術の中の生物処理法を見ていきます。生物処理法は、1914年にイギリスで開発されたといわれます。100年に及ぶ歴史の中で、排水や汚水の処理に利用され、数々の改良法が発展してきました。現在利用されている生物処理法は、おそらく数十種類に及ぶでしょう。

今すぐ、技術資料をダウンロードする!(ログイン)

1. 生物処理法とは?

生物処理法とは、排水の中に含まれる汚濁物質を、自然界に存在する各種の微生物や細菌を利用して有機物を分解する自然の浄化機能を応用した処理方法です。代表的な生物処理法は、活性汚泥法です。活性汚泥は、原生生物・細菌を含む生物群のこと(スラッジ状で汚泥と呼ばれる)です。活性汚泥法で利用する微生物は細菌が主体で、真菌類(カビ)、藻類、原生動物などから構成される微生物生態系です。これらの微生物の活動や食物連鎖により、水を浄化します。つまり、生物処理法は化学薬品を扱うこととは違い、「生き物を飼う」ことです。好む環境を整えて餌を与えなければなりません。餌の多くは有機物であり、菌や微生物の栄養源になるもので、基質(Substrate)といいます。

有機性排水の処理の概要

図1に、大まかな生物処理の工程を示します。予備的処理または一次処理で、油や固形物を除去します。一次処理水を調整槽で水質・水量を均一化した後、生物処理によりBOD(生物化科学的酸素要求量:Biochemical Oxygen Demand)を除去します。さらにその後、高度処理(生物処理、物理化学的処理、両者併用されることもある)を行う場合もあります。

water-pollution7-img1

図1:生物処理の基本フロー(引用:産業環境管理協会、新・公害防止の技術と法規 2014 水質編、2014年、P.71)

好気処理法と嫌気処理法

生物処理法は、有機物の分解・代謝の経路により分類すると、大きく2つのルートがあります。酸化分解による好気処理法と還元分解による嫌気処理法です。

・酸化分解による好気処理法:好気微生物の代謝反応では、有機炭素成分は二酸化炭素と水に 窒素成分は亜硝酸塩や硝酸塩に、硫黄成分は硫酸塩になります。

・還元分解による嫌気処理法:嫌気徴生物の代謝反応により、有機物はアミノ酸、有機酸、アルコールなどを経て、CO2、H2、H2S、 NH3、N2、CH4などの生成物になります。

一般に好気処理は、嫌気処理に比べてエネルギー生成効率が高く、そのため菌体生成量(余剰汚泥)も多いといえます。以後の解説では好気、嫌気、無酸素状態という用語を多用します。おのおのの意味は、次のようになります。特に嫌気状態と無酸素状態を明確に区別してください。

・好気状態(OxicまたはAerobic):生物が利用可能な遊離の酸素分子が存在する状態

・嫌気状態(Anaerobic):溶存酸素(DO)も、結合性、硝酸性の酸素(NOXのO)も存在しない状態

・無酸素状態(Anoxic):溶存酸素がなく、亜硝酸NO2や硝酸NO3の形の酸素だけが存在する状態

バルブをチェック!(イプロス製造業)

2. 活性汚泥法

活性汚泥の原理、様々な種類の活性汚泥プロセス、運転条件、などについて解説します。

活性汚泥法の原理

有機物を含む汚水をばっ気(微生物群に必要な酸素を供給するためのエアバブリング操作)していると、微生物が増殖して浮遊性のフロック(活性汚泥)が形成されます。フロックは、多数の好気性徴生物や有機・無機性の浮遊物質などで構成されます。フロックは、排水中に含まれる溶解性有機物を吸着して酸化するとともに、凝集して沈降分離が容易となります。

活性汚泥法の処理プロセスの基本構成

伝統的プロセスを図2に示します。最初沈殿池、ばっ気槽(吸着・酸化)、最後沈殿池(汚泥を沈降分離する)、滅菌放流、汚泥返送、余剰汚泥の抜出から構成されています。

water-pollution7-img2-2

図2:活性汚泥処理の基本的プロセス(引用:産業環境管理協会、新・公害防止の技術と法規 2014 水質編、2014年、P.75)

活性汚泥設備の操作条件に関わる因子と用語

表1に、操作因子、運転指標を示します。最適に保つことで効率よくCOD(化学的酸素要求量:Chemical Oxygen Demand)が除去できるようになります。ここでは用語の意味も付け加えています。

表1:活性汚泥の操作因子、運転指標
操作因子、運転指標用語の意味
1. 活性汚泥(SS)生物処理法とは?で解説済み
2. BOD負荷1日(d)に系外からばっ気槽に流入するBOD量(kg/d)
3. 容積負荷(Lv)ばっ気槽容積m3当たり1日(d)に流入するBOD(kg/d)
4. MLSS(S値)S(MLSS)は、活性汚泥法におけるばっ気槽内の活性汚泥量をmg/Lで表し、活性汚泥浮遊物質という。一般的に1,500~2,000程度
5. BOD汚泥負荷(Ls)MLSS1kg当たり1日に流入するBOD(kg/d)、BOD・SS負荷ともいう。一般的に0.2~0.4
6. 汚泥容積指標(SVI)活性汚泥法では、沈殿池でSS と処理水を効率良く分離することが極めて重要である。その管理指標として汚泥容積指標(SVI)が用いられます。SVIは、ばっ気槽内汚泥混合液を1Lのメスシリンダーに入れ、30分間静置して活性汚泥を沈降させて測る。1gの活性汚泥が占める容積(mL)で表す。
正常な活性汚泥のSVI:50~150の範囲にある。200を超える(スラリーが膨潤した状態)と沈殿池で汚濁界面が水面近くまで上がり、 汚泥が処理水中に流出する。糸状性微生物の異常増殖により、これがバルキング現象である
7. 返送汚泥率(R)ばっ気槽では、BOD汚泥負荷を一定に保つためにMLSS濃度を調節する必要がある。一般にRは流入排水量の20~30%程度が適当
8. 汚泥生成量(⊿S)ばっ気槽のMLSS濃度を一定に保つために、除去されたBOD当たりの汚泥生成量を把握し、生成した汚泥を余剰汚泥として系外に抜き出す必要がある
9. 汚泥滞留時間(SRT)汚泥滞留時間は、汚泥の増殖および最終沈殿池内に存在する汚泥量を考慮したものです。一般にSRTは3~6日
10. 水理学的滞留時間(HRT)滞留時間の概念には水理学的滞留時間も用いられます。HRTは流入水が系内に滞留している平均時間を示すもの。一般的に6~8時間
11. pH調整微生物の多くは、中性付近(pH 6.0~8.0)に増殖の最適pHを持つため、pHはこの範囲で維持が必要
12. 栄養塩添加生物処理工程におけるpH調整のポイントおよび、栄養塩の添加ポイントを図1 に示している
13. 栄養塩バランス、比率目安BODを効率的に酸化分解するのに必要な栄養塩類の量とバランスについては、経験則をもとに、BOD:N:P=100:5:1 を目安とする
14. 水温微生物の増殖は温度の影響を受ける。特に低水温時での処理プロセスの機能低下に対しては注意が必要

活性汚泥法の発展技術

活性汚泥法は、さまざまに発展してきました。分注法(ステップエアレーション法)、完全混合法、接触安定化法、オキシデーションデイッチ法、回分式活性汚泥法、酸素活性汚泥法、ポンプ循環式深層ばっ気法、膜分離活性汚泥法などの型式があります。その中の2つについて解説します。

・回分式活性汚泥法:単一の槽に反応槽と沈降層の機能を持たせ、排水の流入、反応、沈降、処理水の排出を1サイクルとして、繰り返し処理を行う方法です。連続式に比べ固液分離の安定性が高く、1サイクル中に嫌気・好気の条件を自由に設定できるなど、負荷条件の変化に幅広く対応できるため、中小規模工場排水向けに多く採用されています。

・膜分離活性汚泥法:沈殿槽の代わり(最終沈殿池は不要)に、膜により固液分離をする膜分離活性汚泥法が広く実用化されている。膜はMF膜やUF膜が多く用いられます。膜分離を採用すると、固液分離やバルキングなどによる汚泥流失に悩まされることがなくなります。また、汚泥濃度を8、00012、000mg/Lが容易に制御できるようになりました。これは通常の活性汚泥法よりも、相当高いMLSS 濃度で運転できるということです。また、膜自体もバルキング耐性は高いのが特長です。膜に生物を宿すわけではないので、生物膜法とは違うことに注意してください。ここは単に分離機能だけです。

活性汚泥の運転管理の重要事項

表2に、活性汚泥の運転管理の重要事項を示します。

表2:活性汚泥の運転管理の重要事項
維持管理の課題運転上の対策
BOD負荷
(基本条件で重要)
沈殿池での活性汚泥の沈降性に影響:BODの負荷管理で調整する
BOD負荷が小さい場合:SVI が小さく、汚泥の沈降性が良好となる
ばっ気槽への酸素供給ばっ気槽内の溶存酸素濃度:1mg/L程度以上に保つ
溶存酸素濃度が急上昇した場合:生物活動の低下やpH異常、毒性物質の流入、返送汚泥の停止などの原因がありえる

バルブをチェック!(イプロス製造業)

3. 生物膜法

生物膜法とは、担体(吸着や触媒活性を示し、他の物質を固定する土台となる物質)に微生物を貼り付け、汚水の汚濁物質を分解させる方法です。担体に付着した微生物は生物膜と呼ばれます。生物膜法は、活性汚泥法に比べて、返送汚泥の調整などの細かな維持管理が必要ないため、管理しやすいのが特徴です。

生物膜法の原理

好気性微生物を利用する原理は、活性汚泥法と同じです。生物膜法は、微生物を砕石などの固体表面に膜状に固定して有機物を分解処理する方式です。有機物の分解により微生物は増殖し、表層の好気ゾーンと奥側の支持体付近の嫌気ゾーンが形成されます。生物膜法では、基質および基質の酸化・同化作用に必要な酸素は、生物膜表面より拡散により内部に移動しつつ生物反応により濃度が低下するという濃度分布を示します。

生物膜法と活性汚泥法との対比

生物膜法と活性汚泥法との対比について、利点と欠点をまとめたものを示します。

生物膜法の利点

・維持管理が容易、建設費も安い

・返送汚泥の必要がない

・ろ材や接触体の表面に浄化微生物が固着しているため、バルキングの発生がない

・阻害性物質の流入や負荷変動などに対し抵抗力が強く、変動後の立ち直りが早い

欠点

・SSの除去能力が低く、処理水の透視度が比較的悪い

・高負荷の場合には、固定床では剥離した微生物が支持体を閉そくするなどのトラブルを起こしやすい

生物膜法装置の種類(好気処理)

散水ろ床法(生物膜法の起源的装置)、回転接触体法(回転円板法)、接触ばっ気法、生物ろ過法、好気ろ床法(生物ろ過法)、担体添加法などがあります。

生物膜処理装置の運転管理の重要事項

表3に、生物膜処理装置の運転管理の重要事項を示します。

表3:生物膜処理装置の運転管理の重要事項
維持管理の課題管理・対策
生物膜の内部では嫌気性になる生物膜の表面積のみで負荷を設定する(基本設定条件)
低負荷で余裕のある運転を行う
余乗汚泥が沈殿池に堆積する避けられず、ある程度汚泥がたまり、濃縮したら引き抜く 

バルブをチェック!(イプロス製造業)

4. 嫌気処理法

嫌気処理法とは、下水汚泥や食品工場排水などを、酸素が存在しない条件下で嫌気性微生物を使用し、メタンと二酸化炭素に還元分解することで、安定化・減容化する処理法をいいます。工業上では、メタン発酵法とほぼ同義語です。また、嫌気性消化法ともいわれます。

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

5. 生物的硝化脱窒素法

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

6. りんの除去

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

7. 窒素およびりんの同時除去

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

8. ラグーン処理法

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

9. 汚泥の脱水、焼却

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

  • セミナー3月
  • 販促_無料出展

ピックアップ記事

tags

  • 特集バナー0304_01
  • 特集バナー0304_02
  • 特集バナー0304_03
  • 特集バナー0304_04
  • 特集バナー0304_05
  • 基礎知識一覧