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労働時間の是正:働き方改革の基礎知識3

働き方改革の基礎知識

更新日:2021年7月8日(初回投稿)
著者:関西大学 社会学部 メディア専攻 教授 松下 慶太

前回まで、働き方改革が生まれた背景や、これから目指していく方向性を紹介しました。今回は、働き方改革で、労働時間に着目し、それをどのように変えようとしているのかを解説します。

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1. 長時間労働と過労死

過労死は、日本において大きな社会問題となっています。連日の残業などによる長時間労働で心身が疲労し、時には死に至るというニュースを目にしたことがあるかもしれません。労働によって生じる心筋梗塞などの心疾患、脳梗塞などの脳血管疾患、そして、仕事のストレスが関係した精神障害は業務上疾病と呼ばれ、労災の対象になります。厚生労働省の「令和2年版過労死等防止対策白書」によると、とりわけ精神障害に関する労災請求件数は、平成12年(2000年)の212件から増え続け、令和元年(2019年)には2,060件にまで増加しています(図1)。

図1:精神障害に関する労災請求件数の推移(引用:厚生労働省、令和2年版過労死等防止対策白書、第1-12図)

勤務問題からの自殺者数は、昭和50年代から上昇傾向を見せており、平成23年(2011年)の2,689人でピークを迎えます。その後、徐々に人数は減り、平成28年には2,000人を切りました(参照:厚生労働省、令和2年版過労死等防止対策白書、第3-1図)。しかし、自殺者総数中の割合で見ると、勤務問題を原因・動機とするものは平成19年(2007年)以降増加し、令和元年には9.7%になっています(参照:厚生労働省、令和2年版過労死等防止対策白書、第3-2図)。

これらを引き起こす要因の一つである労働時間は、どう変化しているのでしょうか。図2にあるように、パートタイム労働者の比率が、平成5年(1993年)の14.4%から令和元年で31.5%まで増加している中、パートタイム労働者の総労働時間は徐々に下がり、1,000時間を割り込みつつあります。一方で、一般労働者の総労働時間は、若干の減少はあるものの20年以上ほぼ年間2,000時間の横ばい状態で推移しています。この数字は、国際的に見るとドイツ、フランス、イギリスなどのヨーロッパ諸国より多く、韓国よりは低く、アメリカとほぼ同じになっています(参照:厚生労働省、令和2年版過労死等防止対策白書、第1-19図)。

図2:就業形態別年間総実労働時間およびパートタイム労働者比率の推移(引用:厚生労働省、令和2年版過労死等防止対策白書、第1-2図)

また、長時間労働の一つの目安とされている1週間当たりの就業時間60時間に着目してみましょう。図3にあるように、令和元年の時点で、全年代の男性が約10.3%、同じく女性が約2.6%です。平成12年(2000年)では男性で20%弱、女性で約5%だったことからすると、徐々に減ってきているように見えます。しかし、この数字については、先に見たようにパートタイム労働者の割合が増えたことを差し引いて考える必要があるでしょう。

図3:月末1週間の就業時間が60時間以上の就業者の割合(引用:厚生労働省、令和2年版過労死等防止対策白書、第1-5図)

日本では、労働災害認定で「発症前1ヵ月間に100時間」あるいは「発症前2~6ヵ月間平均で80時間」を超える時間外労働が、過労死ラインとされています。このような長時間労働を抑制することが、働き方改革の大きな目標のひとつとなっています。

2. 36協定とは

36協定とは、労働基準法第36条に基づく労使協定のことを指し、労働時間に関する基本的な取り決めをしています。労働基準法では、原則的に1日8時間・1週40時間以内が法定労働時間として定められています。この法定労働時間を超えて、会社が従業員に残業や休日勤務(時間外労働)をさせる場合には、いわゆる36協定を労組などと締結し、所轄労働基準監督署長へ届け出する必要があります。

これまでの36協定には法的拘束力がなく、また、特別条項を設定すれば上限時間もありませんでした。しかし、2019年に始まった働き方改革の一環として、36協定にも労働時間の上限規制が設定され、それを超過した場合は法的責任も伴うことになりました。この新しい36協定は、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から導入されています。

厚生労働省が策定した「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」では、限度時間(時間外労働の上限)は月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできないとされています。また、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできません。さらに、月45時間を超えることができるのは、年間6カ月までとされています。

3. つながらない権利

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