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実験に学ぶ!燃料電池の仕組み

今回より「実験に学ぶ!シリーズ」をスタートします。技術者であれば、内容は変われども学生時代から慣れ親しんだ実験。高等専門学校の協力のもと、各回のテーマを実験風に解説します。先生からの課題もありますよ。ぜひ、チャレンジしてみてください!

第1回のテーマは「燃料電池」。トヨタ自動車のミライを始め、燃料電池は徐々に市場にも登場し始めています。ただ、その原理を熟知している人は少ないのではないでしょうか?学生時代に勉強した人も、忘れてしまってはいませんか? 今回は東京高専2年生の実験資料をもとに燃料電池について学びます。

(監修:国立東京工業高等専門学校 電子工学科 水戸 慎一郎氏)

1.燃料電池の動作原理

図1:高分子電解質型燃料電池の発電概念図

図1:高分子電解質型燃料電池の発電概念図

図1は高分子電解質型燃料電池の発電の仕組みを表した概念図です。陰極と陽極で高分子電解質膜を挟んだ構成となっています。これを単電池といいます。高分子電解質膜は水素イオンが移動しやすいように水で湿らせておく必要があります。

燃料となる水素ガスが燃料極(陰極)側に送られ、一方の空気極(陽極側)には空気中の酸素ガスが供給されます。燃料極側では水素ガスが水素イオン(プロトン)と電子に分かれ、水素イオンは陰極‐陽極間の高分子電解質膜を通り、空気極へ移動します。電子は外部回路(負荷)を通って空気極へ移動します。空気極では酸素ガス、水素イオン、および電子が化学反応して水を生成します。以下に各電極での反応式を示します。

燃料極:H2 → 2H+ + 2e

空気極:O2 + 2H+ + 2e → H2O

全体反応:H2 + O2 → H2O

水の電気分解は電気エネルギー(約1.2V)を与えて水素と酸素を発生させます。燃料電池の発電の仕組みは、水の電気分解の逆反応であるため、理論的には同じだけの電気エネルギーを発電することができます。実際には、熱損失があるため燃料電池から取り出すことのできる電圧は、0.6‐0.8V程度です。実用上は、このような単電池をたくさん集めたセルスタック構造にします。

2.実験の目的

高分子電解質型燃料電池を例に、燃料電池の発電の仕組み、他の発電方式との違いについて理解します。また、電池の出力特性を調べることにより電源の特性を学び、電源の等価回路要素である起電力、内部抵抗について理解します。

3.装置構成と実験方法

3-1. 装置構成

図2:実験装置の概要

図2:実験装置の概要

図2は、実験装置の概要を示した図です。各部の構成、働きは以下の通りです。

  • 燃料供給側:太陽電池、水タンク、電気分解器、水素貯蔵タンク
    太陽電池を使用して、水を電気分解し、燃料となる水素を発生させます。
  • 発電側:水素貯蔵タンク、燃料電池
    供給水素と空気中の酸素を反応させて、発電します。
  • 負荷側:プロペラ、可変抵抗(非付属)
    燃料電池で発電した電気エネルギーを仕事に変換します。

※使用する水は「純水」を使用します。水タンク、水素貯蔵タンクはどちらも純水で満たしておきます。

3-2. 実験方法

実験には純水を使用します。指示に従い、タンクに投入します。

3-2-1. 燃料電池でプロペラを回す

図3のように、燃料電池を電源として、プロペラ(負荷)と可変抵抗を接続した回路を構成します。この回路によって、燃料電池の端子電圧と、回路に流れる電流を測定します。初めに、可変抵抗は両方とも最大にしておきます。

【水素の発生実験】

  1. 太陽電池と電気分解器を接続し、電気分解器の端子間電圧(a-b間)を測定する。照射する光はハロゲンランプを使用します。
  2. 端子電圧の上昇を確認し、電気分解器側から水タンクに気泡が流れ込む電圧を記録します。

【プロペラ回転実験】

  1. 貯蔵タンクに水素が溜まると、次第に燃料電池の端子電圧(c-d間)が上昇することを確認します。
  2. 負荷の可変抵抗を少しずつ下げて、回路に流れる電流を観察し、プロペラが回転し始める電流値と端子電圧値を記録します。
  3. プロペラが回転している状態で可変抵抗を少しずつ上げて、プロペラが止まる時の電流値と端子電圧値を記録します。

図3:プロペラ回転(負荷)回路

図3:プロペラ回転(負荷)回路

3-2-2. 燃料電池の出力特性

負荷側の回路だけ接続を変えて、図4のように電池の出力特性を測定する回路を構成します。可変抵抗は両方とも最大にしておきます。

  1. 回路の一端(d端子など)を外し、無負荷状態での端子電圧を測定し、記録します。(ある程度、値が落ち着くまで待ちます)
  2. 外した配線を再度接続し、燃料電池に負荷を接続した状態で端子電圧(c-d間)と電流を測定し、記録します。
  3. 可変抵抗を少しずつ下げて、電流を変化させた時(300 [mA]まで)の端子電圧(c-d間)を測定します。
  4. 燃料電池の出力特性をグラフにプロットします。

図4:燃料電池の出力特性測定回路

図4:燃料電池の出力特性測定回路

4.実験の課題

  1. 高分子電解質型燃料電池の構造、および特徴を調べて、述べてください。
  2. 燃料供給側の電気分解器で、気泡が現れ始めた電圧値はいくらであったか。また、この電圧は何のために必要なのか、述べてください。ヒント:酸化還元電位、活性化エネルギー
  3. 燃料電池の出力特性を片対数グラフにプロットしてください(図5)。電流値を横軸(対数目盛り)、電圧を縦軸(方眼目盛り)とします。また、出力特性からどのようなことが分かるか、考察してください。ヒント:最大出力動作点
  4. 燃料電池の起電力、および内部抵抗はいくらであったか、述べてください。
  5. プロペラが回転し始める時の電力と、回転しているプロペラが止まる時の電力の違いを考察してください。ヒント:起動電流

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図5:典型的な電圧-電流特性
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