メニュー

i-Constructionの普及に向けて:i-Constructionによる建設現場の生産革命6

i-Constructionによる建設現場の生産革命

更新日:2017年12月5日(初回投稿)
著者:立命館大学 理工学部 教授 建山 和由

i-Constructionでは、ICTの導入を前提として基準やマニュアルが大きく見直されました。長年あまり変わらなかった基準やマニュアルが変わったことは、画期的です。ただし、それらを満たすための技術は確立されたものではなく、今後は各現場で適した技術の種類と使い方を模索しなければなりません。そのため、現場における技術開発が重要な役割を担うことになります。最終回はi-Constructionの普及に向けて、留意点と期待を述べます。

1. i-Constructionの普及に向けて

i-Constructionは建設業を、従来の「きつい・汚い・危険」の3Kで象徴される産業から、「高水準の給料・休暇・希望」の新3Kに体質改善するためのものです。新3Kのためには、省力化・作業の合理化・作業時間の短縮化・安全性の向上を実現し、生産性向上と環境負荷軽減を確立させなければなりません。しかし、生産性向上や環境負荷軽減を確立させるには、設備の導入や技術力の向上など、資金・技術面での負担が発生します(図1)。

図1:i-Constructionを推進するために越える山

図1:i-Constructionを推進するために越える山

コストをどのように払うかが、大きな課題です。国土交通省では、企業のコスト負担を減らすべく、各種補助を行っています。資金面では、新しい設備やICT機械の導入時に費用の一部を積算に加えるなどの制度があります。技術面では、北海道から沖縄まで全国10カ所にサポートセンターを設け、導入の補助を行っています。今後は土工だけでなく、さまざまな工種に同様の制度が拡大されていきます。このような制度を活用し、i-Constructionにどんどん挑戦していくのが理想的でしょう。

2. i-Constructionと技術開発

i-Constructionで画期的なのは、基準やマニュアルが大幅に見直されたことです。十数年前に進められた情報化施工の導入では、便利さにかかわらず、想定ほど普及しませんでした。主な原因は、基準やマニュアルが情報化施工を前提として作成されていなかったからです。今まで人の手で進めていたことを、一部分だけ機械化しても、情報化施工技術が持つポテンシャルを十分に発揮できなかったのです。しかし今回のi-Constructionは、ICTの利用を前提に基準やマニュアルが大幅に見直されました。例えば測量業務では、UAV(小型無人飛行装置)を使って測量の3次元データが得られるように、手法の基準やマニュアルが整備されました。

ただし、基準やマニュアルが作られた一方で、技術はまだ完全に確立されたわけではありません。今後は基準を満たすように、どの技術をどのように利用するかを、各現場が検討していくことになります。発注者と企業が一緒になって、最適な方法を追求していかなければなりません。そのため、現場で技術開発の機運が高まっていくことが期待されます。

3. i-Constructionで現場回帰

図2は、日本の社会資本整備の推移を表したグラフです。日本の近代的な社会資本は明治以降、鉄道・水道・下水・高速道路と、急速に整備されてきました。このために設計の体系化と基準の設定が進み、施工のマニュアル化が図られました。その結果、基準・マニュアルを順守して、一律管理で効率的に社会資本が整備されてきました。

図2:日本の社会資本整備の推移

図2:日本の社会資本整備の推移(国土交通白書から著者作成)

一方、基準やマニュアルに従ってインフラを整備するため、インフラ整備の主な仕事は管理業務が中心になりました。発注者や企業側は、基準を満たしているか、マニュアル通りに工事が行われているかを確認する管理業務が主になり、建設の仕事から創造性が薄れていきました。特に発注者は、事務所での管理業務が多くなり、現場に足を向ける機会が減っていきました。

管理業務やデータ整理は、ICTが得意とするところです。ICTを活用して管理業務の負荷を削減し、できた時間で技術者は現場に行く。このようにICTを活用すれば、建設は今よりもっと創造性豊かな仕事になるのではないでしょうか。

ICTを活用することにより、これまで関わることのなかった人たちにも建設業に入ってもらい、会社全体として生産性を上げている事例を紹介します。大分県にある株式会社コイシという測量会社は、土木の会社としては珍しく社員の半分が女性です(図3)。

図3:女性社員の活躍

図3:女性社員の活躍(資料提供:株式会社コイシ)

彼女たちの多くは、子どもが小学生になり子育てから少し手が離れたお母さんです。就業形態はフレックス制で自由に仕事の時間を選ぶことができ、働きやすい環境です。会社は彼女たちにCADの技術を教え、データ整理を任せています。測量で上がってきたデータを、彼女たちがCADを使って処理します。これまでは技術者が現場に出て測量し、データを持ち帰って、それを自分たちで整理していました。しかし、今では女性社員たちがデータ作りを担い、技術者は別の現場を担当できるようになりました。建設業を創造性豊かな仕事にするためにできることは多くあります。

本コラムはこれで最終回です。「i-Constructionはうまくいくでしょうか?」と聞かれることがあります。私の答えは「分からない」です。多くの企業や人が様子見ばかりで何もしなければ、i-Constructionは進みません。しかし、多くの人が賛同して挑戦すれば、建設業界は変わります。一人でも多くの人がi-Constructionに挑戦することと、本コラムがその一助となることを期待しています。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ICTの活用事例をチェック!(イプロス建築建材インテリア)

  • セミナー5月
  • 寄稿募集
  • 基礎知識一覧
  • 販促サイト_補助金

ピックアップ記事

tags

  • 特集バナー0409_01
  • 特集バナー0409_02
  • 特集バナー0409_03
  • 特集バナー0409_04