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マイクロバブル・ファインバブルと工作機械

マイクロバブル・ファインバブルと工作機械

更新日:2019年6月28日(初回投稿)
著者:有限会社OKエンジニアリング 代表 松永 大
編集:株式会社イプロス Tech Note編集部

バブル(泡)は、古くから人々の暮らしの中にあるものでした。自然界では大きな泡から微細な泡(ファインバブル)まで生成され、存在しています。このファインバブルを意図的に多量に発生させると大きな効果があることが分かってきました。広島で赤潮対策のためにファインバブルを利用したところ、カキの生育を促進させました。このことが報道され、大きな話題を呼びました。これをきっかけにファインバブルへの関心が深まり、研究が進み、水産業や農業、医療、食品工業、化学工業、排水・水浄化などに応用されるようになりました。現状は応用技術が先行し、科学的解明が遅れています。特に生物活性化などのメカニズムは未解決です。ここでは、ファインバブルを発生させるループ流式OKノズルを用いた、工作機械での応用事例を紹介します。現場で困っている問題を解決する手段として参考にしていただければと思います。

1. ファインバブルとは?

ファインバブルとは、マイクロバブルとウルトラファインバブルの総称です。ウルトラファインバブル(UFB)とは、ナノバブル(NB)のことです。マイクロバブルはバブル径1μm以上~100μm未満、ウルトラファインバブル(ナノバブル)はバブル径1μm未満であると国際規格で定義されています (参照:ISO 20480-1、2017 Fine bubble technology-General principles for usage and measurement of fine bubbles-Part 1、Terminology(ファインバブル技術-ファインバブルの使用と計測に関する一般原則-パート1:用語)2017.6.22)。

図1:ファインバブルの分類

図1:ファインバブルの分類

ファインバブルは、泡というよりも白い濁りに見えます。マイクロバブルは目視可能です。ただ、5μm以下は、目視が難しくなります。水に含まれる気体の量によって濁りの濃さが変化します。例えば、加圧溶解タンクで十分気体を溶解させた水をノズルで噴射すると、牛乳のように真っ白になります(図2)。給湯器からのお湯の方が、水道水よりも白く濁るようです。

図2:ファインバブルにより白濁した水槽

図2:ファインバブルにより白濁した水槽

ウルトラファインバブル(ナノバブル)とは、サイズが小さいため肉眼では見えませんが、レーザビームを照射すると間接的に可視化できます。ループ流式OKノズルは、わずか1ml中に約4億個(4億個/ml)のウルトラファインバブルを発生するのが確認できます(参照:有限会社OKエンジニアリング、OKノズルナノバブル-ウルトラファインバブル発生量)。

大気中の真水に含まれるバブルの寿命は数日です。浮き上がることなく水の動きに漂っています。保管状況が良いと、数カ月~1年は存在します。

2. 工作機械でのファインバブル応用事例と効果

工作機械は、使用する上で常に装置が最良の状態であることが求められます。そのために、日頃から綿密な確認や手入れをしなくてはいけません。切削に必ず発生する切屑の除去やクーラントタンクの洗浄などは、効率的な作業を行うための必要事項です。クーラント液にファインバブルを発生させると、加工を行う上で複合的な効果があることを説明します。

1:アルミニウム構成刃先剥離効果

切削中の工具刃先は高温で、高圧がかかります。この時、切粉の一部がツール刃先に溶着して刃先に似た形状のものを生成させます。これを、構成刃先といいます。ファインバブルは、アルミニウム加工時に生成する構成刃先を剥離し、構成刃先をできにくくしています。それにより切削条件に応じた面粗度を確保でき、アルミニウム加工時の不良率を大幅に下げることができています。

構成刃先ができにくくなるメカニズムは以下のことが考えられます。ファインバブル噴射衝突時の破裂の衝撃波、及び切削時の刃先は800℃近くになるのでファインバブルが刃先部に接触した時、急激な熱膨張により破裂した衝撃により構成刃先を剥離します。また、ファインバブルによる刃先の放熱効果もあります。ファインバブルが熱膨張し、切り刃部に構成刃が生成しにくい空間を連続的に作っていることも考えられます。

自動車業界では、自動車の軽量化のため、アルミニウム部品が増えています。今後、アルミニウム製品の加工不良率を下げるため、ファインバブル発生ノズルが工作機械に常備されることが予想されます。

2:小型金型研磨時間短縮

端子金型のような小型金型を作成する上では、精密な切削、研磨が必要とされます。この金型の研削加工事例では、切り込み量は通常4μmでしたが、ファインバブルの研削液を使用することで7μmにすることが可能になりました。このメカニズムは、ファインバブルの破裂の衝撃波によって砥石に付いた切粉を除去し、常に砥石の切り刃が確保されているからだと考えられます。ファインバブルの発生条件や研削条件を工夫することで、加工時間を大幅に短縮できる可能性があります。

3:シリコンウエハの超超鏡面研磨

シリコンウエハとは、半導体を構成する部品素材です。普段生活する上ではほとんど目にすることがありませんが、あらゆる電子機器に採用されています。名称どおりシリコンから作られており、素材形状は薄い円盤状をしています。表面が厳密に平たんになるよう加工されており、この加工がシリコンウエハの性能に大きく関係しています。従って、より滑らかな面粗度が年々要求されます。鏡面研磨とは、微細な砥粒によって工作物の表面の凹凸を均一に仕上げる加工のことをいいます。 一般的に面粗さRz200nm以下になると、鏡のように曇りのない面を作れます。超超鏡面研磨になると面粗度がさらに細かくなります。シリコンウエハの厳密な平たんさを得るために、超超鏡面研磨が取り入れられています。この超超鏡面研磨にファインバブルを使用することにより大きな成果がありました。現場技術者からは以下の報告が上がっています。

・面粗度を上げるため数種類の対策をしましたが、要求される面粗度ができませんでした。しかし、シリコンウエハの超超鏡面加工にファインバブルを使用し、簡単に要求される鏡面がクリアできました。

・研削液配管途中にファインバブル発生用OKノズルを設置し、合格品が供給できることになりました。大変喜んでおります。

ファインバブルによって質の高い鏡面研磨加工ができるメカニズムは、ファインバブル破裂時の衝撃波によって砥石に付着している切粉が剥離され、砥石の切り刃が常に確保されていること、また、ワーク上の研削切粉が洗浄されていることで必要面祖度が得られたものだと考えられます。

図3:シリコンウエハの鏡磨加工に使用されたファインバブル発生装置(OKノズル)

図3:シリコンウエハの鏡磨加工に使用されたファインバブル発生装置(OKノズル)

4:クーラントタンクの清掃と液の浄化

クーラントタンクとは、工作機械に常備されている冷却に用いる容器をいい、タンクに入っている液体をクーラント液といいます。クーラント液は、加工時に発生する熱を冷却し膨張を防ぎます。そのことにより、加工精度を維持して寿命を延ばすこともできます。このクーラント液にファインバブルを利用することで、バイオフィルム除去、潤滑油の浮上分離、水溶性クーラント液の腐敗防止と悪臭抑制に効果があるのが分かり、利用され始めました。その利用例を3つ紹介します。

・バイオフィルム除去

バイオフィルムとは、水の入ったタンク内面に発生する微生物により形成されるヌルヌルした物質です。ファインバブルは、バイオフィルムの発生を抑制し、除去することができます。また、ファインバブルはマイナスに帯電していますが、水面に浮遊するごみや水中に沈んだごみでも、比重が1に近いとプラス・マイナス電荷に関係なく付着、吸着する特徴があります。魚貝類の大型水槽では、壁面に付着したバイオフィルムを除去し、ごみなどに吸着し浮上分離するので、水槽清掃のために用いられています。この清掃方法は、自動車部品を扱うアルミ加工工場などでも利用が始まっています。ファインバブルは、クーラントタンクの壁面のバイオフィルムとともに付着したアルミ微粉の除去も可能です。

・潤滑油の浮上分離

工作機械の加工時、クーラント液に潤滑油が混じっている場合、切削の際に刃物が滑るなどの恐れがあります。ファインバブルは、クーラント液に混じった潤滑油を浮上分離させてあらかじめ除去します。マシニングセンタ(複数の刃物を自動で交換でき、NCのプログラミング制御に従って穴開けや平面削りなどを1台でこなせる工作機械)の加工などにも用いられています。

・水溶性クーラント液の腐敗防止と悪臭抑制

クーラント液は、使用に伴って特に夏場は悪臭も発生させます。悪臭を抑えるには、好気性の菌など微生物を利用すると効果的です。ファインバブルは、タンク内の酸素溶解率を上げて好気性微生物を活性化させます。それにより悪臭を抑えることができます。

以上の3つは、クーラントタンクの内面を清掃するとともにクーラント液も浄化します。これらを実施する場合、ファインバブル発生ノズルをクーラントタンク内、もしくは配管途中に設置することが効果的です(図4)。

図4:クーラントタンクのファインバブル発生ノズル設置例

図4:クーラントタンクのファインバブル発生ノズル設置例

3. おわりに

いかがでしたか? ファインバブルと工作機械について説明しました。ファインバブルは、各産業において既に貢献しています。ファインバブル技術が産業を支える基盤となる日も近いかもしれません。また、川、湖、海の汚染など環境問題へのファインバブルの期待も高まり、使用され始めています。しかし、ファインバブルの効果についてメカニズムが科学的に解明されてないものがあります。特に生物活性化のメカニズムの解明が急務です。本コラムに掲載した工作機械の事例の内容は、全てループ流式OKノズルを使用して効果を上げた応用事例です。今後、この技術が世界中に普及することを楽しみにしています。

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