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マイクロプラスチックによる問題とは?:マイクロプラスチック問題を考える1

マイクロプラスチック問題を考える

更新日:2019年2月25日(初回投稿)
著者:プリディクション郷事務所 兼 化学工学会SCE・Net 郷 茂夫
編集:株式会社イプロス Tech Note編集部

「マイクロプラスチックが、生態系や人体に悪影響を及ぼしている」最近、こんな報道をよく目にするようになりました。ただ、プラスチックの廃棄問題はずっと以前からありました。このコラムでは、マイクロプラスチックの定義や性質、マイクロプラスチックにより起こる問題などを、分かりやすく解説していきます。(全3回)

1. マイクロプラスチック問題とは

マイクロプラスチックとは、一般的に5mm以下のプラスチック材料の微小片や微粒子を指します。陸上のマイクロプラスチック製品が廃棄された場合、またはその元となる大きなプラスチック廃棄物が、廃棄物処理網をすり抜けたり(処理設備で除去されずに素通り)、雨水・河川を通じて、広く海洋に拡散しています。大きなプラスチック廃棄物は拡散の過程で自然の力により細かく破砕され、マイクロプラスチックになるものが多くあるのです。

図1:マイクロプラスチックの拡散のイメージ

図1:マイクロプラスチックの拡散のイメージ

マイクロプラスチックは、毒性化学物質や添加剤物質などを表面に吸着する傾向があります。このようなマイクロプラスチックを海洋生物が誤飲・誤食し、化学物質は食物連鎖を通じて濃縮されていきます。最終的には、人間にも毒性化学物質のリスクが及ぶ可能性があります。これが、メディアでもよく取り上げられるマイクロプラスチックの問題です。

なお、ボトル、フィルム、シート、成形品、漁網のロープ、ブイなど、相対的に大きなサイズのプラスチック廃棄物も、海洋生物と陸上生物に誤飲・誤食されることがあり、生物に深刻な直接的危害(内臓器官の閉そくや損傷)を及ぼしています。これは上記のマイクロプラスチック問題とは区別されるものなので、注意してください。原因は、ともに廃棄物の処理や処分が不完全であるためです。

2. マイクロプラスチックに関する用語

このコラムで繰り返し出てくるマイクロプラスチックに関係する用語を、解説します(表1)。用語の違いを理解することが、原因や対策を考える上で大切です。

表1:マイクロプラスチックに関係する用語
用語定義
プラスチックプラスチックの原料は、主に炭素と水素からなる高分子化合物で、石油や天然ガスなどから作られる。得られたペレット状の材料を溶かして、成形したものがプラスチック製品。熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、熱硬化性樹脂(エポキシ、不飽和ポリエステルなど)に分けられる。物質の定義は、学術上も法令上もほぼ一致。なお、合成ゴムや合成繊維はプラスチックではない
マイクロプラスチック大きさが5mm以下のプラスチック類と定義した叙述が多いが、厳密な定義はない。球・角片・糸状など、さまざまな形状がある。プラスチック以外に、ゴム、繊維、建物塗装粉などの物質を含む解釈もあり、注意が必要
プラチック廃棄物プラスチック製品や半製品が廃棄されたもの。包装容器類の廃棄物の量が多い
始源廃棄物マイクロプラスチックの元になる廃棄物。プラスチック以外に、ゴム・繊維・塗料なども含む。本コラムでのみ用いる用語

また、海洋に拡散した廃棄物の内訳数字の統計はありませんが、陸上のプラスチック廃棄物の排出量の内訳を参考までに紹介します(図2)。ゴム、繊維、塗装材は含まれていないので、注意してください。分野別では包装・容器・コンテナ類が46.0%を占め、樹脂別ではポリエチレン33.9%、ポリプロピレンが22.2%を占めています。なお、4章で、陸上で発生するマイクロプラスチックの内訳推定を紹介しています。

図2:2017年の廃プラの総排出量

図2:2017年の廃プラの総排出量(データ出典:一般社団法人プラスチック循環利用協会、プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化処理処分の状況2017年)

3. 海洋汚染の歴史

環境白書で、海洋汚染のテーマが最初に取り上げられたのは、1969年でした。当時の問題のほとんどは、油の汚染でした。1990年頃から、プラスチック廃棄物の海面浮遊汚染が記述されるようになりました(日本近海のみ)。その後、研究機関や研究者が海洋汚染に警鐘を鳴らしてきましたが、2016年頃までは、日本でも世界でも海洋汚染に対して、本格的な対策が取られるには至りませんでした。人工のプラスチック類、合成ゴム、合成繊維、建物外面塗料などが大量生産され始めて、既に50年を超えています。1960年代から、プラスチック廃棄物の一部は、海洋に流れ込み続けているのです。国内の廃棄物環境の歴史から見て、陸域汚染の克服が終わり、今、海洋汚染問題が広く関心を持たれるようになったわけです。

マイクロプラスチックという意味の言葉が使われるようになったのは、2004年のサイエンス誌に「Lost at Sea: Where Is All the Plastic?」というタイトルの論文が出てからです。以降、多くの調査研究報告が公開されています。そして、2017年以降、メディアで大々的にマイクロプラスチックによる海洋汚染が報道された結果、一般の人も関心を持つようになりました。

マイクロプラスチックが海洋中に拡散、蓄積される経緯を少し詳しく見ておきましょう。図1をご覧ください。微小なプラスチックは家庭、オフィスや工場から下水道に流されるものがあり、それらは下水処理センター施設では十分に除去されず、海に放流されています。大きなプラスチック廃棄物は家庭、オフィス、工場などから収集され、焼却や埋め立てられたり、リサイクルされます。この収集、物流とリサイクル処理の過程で、こぼれ落ちたり、すり抜ける廃棄物があります。雨は家、道、畑、軽率なポイ捨てゴミを洗って、雨水下水管を通って海洋に放出されます。川、湖、水路側溝を流れるゴミまじり水はそのまま海洋に流れます。島、岸辺や船からの海洋への不法投棄や、ごみ収集地や埋め立て地からの漏出・飛散もあるでしょう。こうして海洋に排出された大きな始原廃棄物は自然の力(太陽光、波の力、石や砂の打壊力など)で小さく劣化してマイクロプラスチックとなり、元々の陸からのマイクロプラスチックと合わさって、海洋に蓄積されていきます。

4. 海洋汚染における汚染量の推定

海洋へ廃棄物が放流される量や蓄積量について、確かな統計数字はありません。時々ニュースにも取り上げられることがありますが、全て推定値であることに留意してください。例えば、以下のような報告があります。中国やアジアの国々が多くのプラスチックゴミを海洋に放出しており、国際的に協調して対策を打つ必要があります。

・陸上から海洋に流出したプラスチックごみ量(2010年)ランキング
1位中国353万t、2位インドネシア129万t、3位フィリピン75万t、4位ベトナム73万t、5位スリランカ64万t、20位アメリカ11万t、30位日本6万t(※推計量の最大値を記載、出典:Jenna R. Jambeckら8人、Plastic waste inputs from land into the ocean、サイエンス、2015年

・陸上発生の1次マイクロプラスチックの発生量(プラスチック、ゴム、繊維を含む)
合計0.95×106t/年、車タイヤの粉270×103、ペレットの粒230×103、布190×103、建築塗装130×103、道路塗装80×103、化粧品35×103(出典:Chris Sherrington、Plastics in the Marine Environment、Eunomia、2016年) 

・海洋プラスチックごみの総量は2億5千万トンと推定されており、2014年時点で海に生息する魚の総重量の1/5に達している(出典:Jenna R. Jambeckら8人、Plastic waste inputs from land into the ocean、サイエンス、2015年

・2016年1月に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)で、2050年には魚の総重量を上回る予測が示され、海洋プラスチックごみ問題が大きな注目を集めた。(出典:The New Plastics Economy、Rethinking the future of plastics、World Economic Forum、2016年)

・海に面した192カ国のプラスチック廃棄物発生量約2億7,500万tのうち、480~1,270万tトン(全体の1.7~4.6%)が海に流出したと推計される(出典:Jenna R. Jambeckら8人、Plastic waste inputs from land into the ocean、サイエンス、2015年

・年間で約1,200万tの海洋プラスチックごみが発生し、そのうち1%が海の表面を漂い(漂流ごみ)、5%が海岸に漂着し(漂着ごみ)、残りの94%は海底に堆積する(出典:Chris Sherrington、Plastics in the Marine Environment、Eunomia、2016年

注意したいのは、マイクロプラスチックによる汚染の事実解明が未だ不十分であり、研究者や専門家の間でも、情報、データ、知見にかなりのギャップがある点です。人間を含めた生物への健康に影響する可能性があるので、研究成果が出るのを待って、冷静に対処した方がよいでしょう。

いかがでしたか? 今回はマイクロプラスチックの定義や、海洋汚染について説明しました。次回は、物質としてのマイクロプラスチックに焦点を当て、定義や範囲、吸着性能などを解説します。お楽しみに!

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