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マイクロプラスチックの生物影響と対策:マイクロプラスチック問題を考える3

マイクロプラスチック問題を考える

更新日:2019年3月20日(初回投稿)
著者:プリディクション郷事務所 兼 化学工学会SCE・Net 郷 茂夫
編集:株式会社イプロス Tech Note編集部

前回は、マイクロプラスチックの生成メカニズム、有害化学物質の吸着性能について解説しました。今回は、マイクロプラスチックの生物への影響と、マイクロプラスチック問題の対策を解説します。

1. マイクロプラスチックの生物への影響

今騒がれているマイクロプラスチック問題とは、有害化学物質が生物に与える悪影響の問題です。有害化学物質の摂取量が許容値より多ければ、人間も含めて全ての生物に身体的影響が出るリスクが高くなります。従って、有害化学物質の暴露許容値やさまざまな安全規制を定めています。マイクロプラスチックは、海洋に漏れ拡散した有害化学物質を吸着し媒介しているのではないかと、クローズアップされているのです。

・海洋生物が有害化学物質を体内に取り込むルート

海洋生物が有害化学物質を体内に取り込むルートは、主に3つあります。1つ目は有害化学物質を高濃度に吸着したマイクロプラスチックを誤摂取する、2つ目は、マイクロプラスチックを経ないで直接的に、海水中に溶けている有害化学物質をエラなどの呼吸器官から取り込む、3つ目は既に有害化学物質を取り込んだプランクトンや小生物を摂食するルートです。現段階では、どのルートが多いかは分かっていません。1つ目から侵入してくるものが多いのではないかと危惧されています。

・海洋生物による有害化学物質摂取と濃縮

海洋生物に摂取された有害化学物質は、まず消化器官から吸収され、次いで体内(臓器や身肉、骨など)に移動するといわれています。体内での濃縮され方については多くの文献や研究があり、有害化学物質の種類や生物種や身体部位、環境海水条件などにより変わるようです。多かれ少なかれ、海洋生物の身体内でかなり濃縮される(海水中の濃度より高くなる)ということは、正しいといえます。

・海洋生物と人間への健康影響

海洋生物における有害化学物質の健康リスクは、摂取量が多ければ、高くなるでしょう。そのリスクに関連して、海洋生物への危害についての多くの報告があります。海洋生物の食物連鎖を通じて、有害化学物質が上位者に移動し濃縮され、最終的には人間にも有害化学物質リスクが及ぶ可能性はあります。しかし、因果関係の明確な定量的データは今までのところありません。

2. マイクロプラスチック問題の対策

・マイクロプラスチック問題の対策の原則

既に海洋に放流、拡散してしまっているプラスチックのゴミを回収することは、非常に困難です。海中に浮遊するマイクロプラスチックや、海底に沈んだゴミの回収もできません。従って、マイクロプラスチック問題の対策の基本は、マイクロプラスチックを陸から海洋に出さないことと、新たなマイクロプラスチック生成を抑制することです。それは微小プラスチック廃棄物や始源廃棄物を遮断するということで、最終的には、プラスチックの廃棄処理の基本的な環境問題に行き着きます。

・マイクロプラスチックの抑制、防止具体策

第2回でも掲載したマイクロプラスチックの移動・生成変化の図を図1に再掲します。

図1:マイクロプラスチックの移動・生成変化(再掲)

図1:マイクロプラスチックの移動・生成変化(再掲)

図1の1:1次マイクロプラスチックの陸での発生の対策

微小サイズの製品の対策は、マイクロプラスチック製品の使用量を減らす取り組みです。化粧品などに混合されるマイクロビーズについては、使用禁止などの規制が多くの国で作られています。EUでは2014年12月にEU環境理事会の会合で、化粧品や洗剤へのマイクロプラスチックの使用禁止を求める共同声明を提出し、米国連邦議会は2015年12月にマイクロビーズ除去海域法が可決されました。2018年に日本でも日本化粧品連合会がマイクロビーズの自主規制を表明し、欧米に追随しています。しかし、1次マイクロプラスチックについては、対象製品が広く、実態把握も不十分であり、日常生活や産業に必需品である場合が多く、実際はほとんど手が付けられていない状態といえるでしょう。

図1の3、4、6:プラ廃棄物処分方法と廃棄物管理の問題の対策

マイクロプラスチック問題の対策で、最重要の箇所です。日本では、第4次循環型社会形成推進基本計画が、2018年6月19日に閣議決定され、プラスチック資源循環戦略が策定されることになりました。この内容が対策の柱です。具体的には、使い捨て容器包装などのリデュースなど環境負荷の低減に資するプラスチック使用の削減、未利用プラスチックをはじめとする使用済プラスチック資源の徹底的かつ効果的・効率的な回収・再生利用(リサイクルのこと)、バイオプラスチックの実用性向上と化石燃料由来プラスチックとの代替促進などを、総合的に推進するというものです。

上記の国の環境戦略に、新しいアイデアを加えている五十嵐敏郎氏の論文「マイクロプラスチックを発生させないための対策」(出典:五十嵐敏郎、海洋プラスチックごみが生物多様性に及ぼす影響について、縮小社会研究第2号、2018年3月)から、7つのポイントを列記します。詳細は原文を参照してください。この問題の解決のためには、マイクロプラスチックの生成機構と対策案の模索、研究が必要です。

・全ての人々がプラスチック廃棄の意識を向上させて、適切な廃棄処分を行う。
・生分解性ポリマーへの代替する。ただし、生分解性ポリマーは分解劣化時間はプラ合成樹脂より早いものの、有害化学物質を吸着するマイクロプラスチックになることに変わりはないことに注意する。
・使い捨てプラスチックの製造・販売を規制する。
・リサイクルしやすいプラスチック製品を開発する。
・プラスチックのリサイクルを困難にしている要因を軽減するため、新たな意匠の製品開発が必要である。
・非破壊劣化診断による劣化管理と寿命予測で非管理の短期使用から管理された長期使用にプラスチックの需要構造を変える。
・小さな破片まで劣化しない樹脂・添加剤系を開発する(海洋での大型プラごみの回収チャンスを増やす)。

図1の6:海洋に浮遊する大きなプラ廃棄物問題の対策

海洋に浮遊する大きなプラごみの回収掃除方法について、実効的なものは少ないです。しかし、海流と波の力によって、大きなプラ廃棄物は陸の岸辺に打ち上げられる傾向があり、注目すべき自然の力の事実です。その岸辺に打ち上げられた廃プラ回収清掃が重要です。

図1の2、5:発生してしまった1次、2次マイクロプラスチックの陸から海洋への拡散の対策

これはかなり難しい対応となります。下水処理場での捕集効率を上げる対策、リサイクル工場や埋立場、焼却場での捕集対策が中心となるでしょう。

3. おわりに

マイクロプラスチック対策は、結局プラごみの廃棄処分問題の対策に行き着きます。資源の有効活用には、Reduce減らす、Reuse繰り返し使う、Recycle再資源化するという3種類があります。ただ、日本において廃棄プラスチックの回収率は既にかなり高く、現在以上に大きく高めることは難しいかもしれません。新素材(生分解性材料など)への転換も、強度や成型性、コストの問題が残っており、すぐには対応は困難でしょう。紙などの自然素材への戻りも既に始まっていますが、包装材料としての欠点もあります。従って、当面の策は、使い捨てのような用途を再考し、プラスチックの使用量を削減することと廃棄物管理の周知徹底を図っていくことが肝要と思われます。

このような状況下において、世界の海洋汚染問題の解決には国際間の協力が不可欠です。先進各国の首脳レベルにおいても、海洋廃棄物問題への認識が高まってきており、2018年G7サミット海洋プラスチック憲章では、使い捨てプラスチックから代替物への転換が年限を定めて明記されました。プラスチック削減に先進各国が、規範を示すことは重要です。一方で、最新の科学的知見を基盤に、プラスチックを使うリスクと使わないリスクを最小化できるよう、持続的なプラスチック削減に向けた行動計画が策定されるべきでしょう。

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