メニュー

グラフィックス半導体メーカーNVIDIA、次世代自動車の開発をどう変えていくのか?

グラフィックス半導体メーカーNVIDIA、次世代自動車の開発をどう変えていくのか?

自動運転が脚光を集めるにつれて、自動車と情報技術の融合がますます進んでいます。それに伴い、車載コンピュータに求められる性能もより一層高まっています。今回は、米国のグラフィックス半導体メーカーNVIDIA(エヌビディア)が開発した、自動車向けチップセット「NVIDIA DRIVE」について解説します。(自動車ビジネス専門誌LIGAREより、Tech Note向けに再編集)

GPUで15年前のスパコンに匹敵する処理の力と省電力を両立

2015年国際家電見本市のInternational CESで、NVIDIAは 次世代スマートカーへの搭載を狙ったカー・コンピュータ「NVIDIA DRIVE」を発表し、来場者の注目を集めました。

NVIDIA DRIVEには、自動運転に必要なコンピュータ処理を行う際のプラットフォームとなる「DRIVE PX」と、車載ディスプレイを含むコクピット周りで高度なグラフィックスを提供する「DRIVE CX」があります。いずれも世界最速処理を誇るモバイル型のスーパーチップ「Tegra X1」が採用されています。

Tegra X1は、世界トップクラスのパフォーマンスを実現したゲーム用グラフィックス・カード「GeForce GTX 980」と同じ、最新のMaxwell GPUアーキテクチャを採用しており、256コアで1テラフロップスの処理能力を持っています。サイズは親指の爪ほどのサイズで、15年前のスパコンに匹敵する処理能力を持ち、所要電力も10ワット程度という省電力を実現しています。

共同創始者兼CEOのジェンスン・ファン氏は、「スーパーコンピュータに匹敵するNVIDIA DRIVEの機能は、スマート化する次世代自動車の中核になるだろう」とコメントし、自動車開発分野への本格参入をアピールしています。

NVIDIA_DRIVE_PX
図1:自動運転時のプラットフォームとなるNVIDIA_DRIVE_PX
NVIDIA_DRIVE_CX
図2:最先端グラフィックスのためのNVIDIA_DRIVE_CX

グラフィックス開発ツールの提供で車種ごとのデザインも可能に

自動運転技術に先行して、ディスプレイの増加と高画質化などに対応できる車載コンピュータのニーズが高まっています。NVIDIAも、これまでに製品を発表してきました。

そして、今年2015年のCESで、NVIDIAは初めて次世代の自動車に絞り込んだ展示を行いました。メータパネルやナビゲーションでのリアルなCG表現を可能にするDRIVE CXでは、1つのチップで運転中の死角を解消するサラウンドビジョンや、物理的なミラーに代わるデジタル・スマート・ミラーなどを実現し、それぞれの開発ツールも合わせて提供しています。

ゲームでも使われるGPUならではの画像処理機能により、例えば、ナビゲーションの表示では、走行中の道路上で街灯やヘッドライトが当たっている部分だけ明るく見せるといった、複雑で臨場感あるグラフィックスも再現できます。ゲーム開発で培ってきたソリューションを存分に生かし、開発者用ツールでは、クルマの個性に合わせたユーザーインターフェイス周りのグラフィックスデザインをトータルに開発できるようにしています。

クラスターやヘッドユニット、リアシート・エンタテインメント、ドアのコントロールなど、ディスプレイが増えていき、車に使われる総ピクセル数も増えていきます。Drive CXでは1台で16.6メガピクセルをサポートします。ひとつのプラットフォームで、クラスターやヘッドユニット、サラウンドビューまでも動かすことができます。

また、3Dレンダリング能力が向上し、カーナビで3Dマップを表示させたり、クラスターでは木、カーボンファイバー、ブラッシュトメタル、ガラスなどマテリアルや素材感を正確に描写する性能を持っています。

Android AutoやApple CarPlayといったスマートフォンとの連携機能を使う場合には、プロジェクテッドモードにして、レイヤーを重ねて描画することも可能です。他にも開発用にアートセットを提供したり、国内メーカー向けに開発セミナーもすでに実施しています。

DRIVE CXによるクラスターイメージ
図3:DRIVE CXによるクラスターイメージ

ゲーム市場で実績のある独自のディープラーニング研究

注目は、自動運転向けに開発されたDRIVE PXです。ADAS(先進運転支援システム)に必要とされる画像処理については、最大で12台の高解像度カメラからの入力信号に対し、最高で1.3ギガピクセル/秒もの処理が行える性能を持っています。

この画像処理技術により、カメラに映った情報を瞬時に判断し、自動車の周辺にいる人物の年齢や性別、さらにはすれ違うクルマの車種まで分かるようになります。リアルタイムで近くにある物体の3Dマップを自動で作成し、車が自ら空きスペースを見つけて駐車する、オートパーキングを実現するシステム「NVIDIA DRIVE PX AUTO-VALET」も開発されています。

DRIVE PXでは、自動運転に必要な画像認知能力が高まり、以前は70%だった認知率が93%まで上昇し、人よりも正確になっています。その背景にあるのは、コンピュータビジョンとディープラーニングによる学習機能の向上です。今まではイメージ全体が映っていれば、認識できました。GPUを使うことで、クルマの陰に隠れた人間も認識できます。

最初は車や木、スピードサインなどを人がタグ付けするところから、やがて機械自身が学習するようになり、パラメーター化した後DRIVE PXに入力します。一方で車から取り入れた情報とパラメーターを比較することで自家用車、スクールバス、ミラーに映った救急車までを瞬時に判別できます。

また、認知レベルの低いものは一度処理をスキップし、クラウドに接続した際にアップロードされて機械が学習し、賢くなっていきます。そして、この内容を無線通信経由でフィードバックすることで車が進化していきます。DRIVE PXで、この反映させる仕組みを実現しています。

ディープラーニン グを応用したDRIVE PX のデモ
図4:ディープラーニングを応用したDRIVE PXのデモ

ゲーム開発で培われた検証・開発システム

さらに、認識率を高めるためにNVIDIAが独自に開発したのが、ゲーム開発で培われた技術をベースにした検証・開発支援システムです。

自動運転でも自動駐車システムでも、通常は実車に積んだ車載カメラで撮影した映像を利用して開発やその動作の確認を行います。その実車の車載カメラからの映像代わりに、ここでは「駐車シミュレーション」ゲームのリアルなCG映像を入力して、自動駐車システムを動かします。

自動駐車システムは、本来であれば実車のハンドル操作を行うべく、それに応じた制御信号を作り出します。その信号を元の「駐車シミュレーション」ゲームのいわば操作ボタンにフィードバックすることで、自動駐車システムが連続して「ゲーム」をプレイできるようになります。

これによって、システムがきちんと駐車が行えるかをバーチャルな環境で確認できます。最新のグラフィックス・カードを組み合わせれば、実際の車載カメラ相当の非常にリアルなCG映像をリアルタイムに生成することができるのです。

自動駐車システムによるシミュレーション
図5:自動駐車システムによるシミュレーション

DRIVE PXとCXの両者に採用されているスーパーチップTegra X1は、大手メーカーにも採用されています。アウディではTegra X1の学習機能に注目し、これを自動走行の開発に用いると発表しています。またレノボ・モーターズは、Tegra X1のレンダリング能力に着目し、CESに展示されたレノボ・クーペのデジタル・コクピットにこれを採用しています。

DRIVE PXとCXの両者に採用されているスーパーチップTegra X1
図6:DRIVE PXとCXの両者に採用されているスーパーチップTegra X1

NVIDIAは、各メーカーや専門家との情報共有はもちろん、国内の学生を対象にGPUプログラミングのコンテストを実施するなど、人材育成も支援しています。また、GPUコンピューティングの最新情報をテーマに、毎年シリコンバレーで開催するGTCの日本向けイベント「GTC Japan」も開催しており、自動車技術に関する話題も増えています。今後のNVIDIAの動きにも注目していく必要がありそうです。

  • セミナー11月
  • 特集バナー1020_01
  • 特集バナー1020_02
  • 特集バナー1020_03
  • 販促サイト_新規顧客開拓

ピックアップ記事

tags

  • 特集バナー1002_01
  • 特集バナー1002_02
  • 特集バナー1002_03