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硬さ試験とは

硬さ試験とは

更新日:2018年11月6日(初回投稿)
著者:地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター 事業化支援本部 技術開発支援部 実証試験セクター 副主任研究員 小船 諭史

金属材料の機械的性質には、強さ、延性、じん性、硬さなどがあります。本コラムでは、硬さを測定する硬さ試験について取り上げます。硬さ試験には、ロックウェル硬さ試験、ビッカース硬さ試験、ブリネル硬さ試験などの種類があり、他の試験と比べてスケールや単位が複雑です。目的に合致した試験手法を選定することができるよう、それぞれの試験の概要を解説します。

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1. 硬さ試験とは

硬さ試験とは、材料の硬さを測定する試験です。硬さと関連付けられる降伏強度などを簡易的に推定するために行います。硬さとは金属材料の機械的性質の一つであり、材料にくぼみを生じさせるのに要した仕事量を、生じたくぼみの体積で割った値のことです。一般的に硬いほど、強い、疲労しにくい、摩耗しない、曲がらない、もろい、延びないなどの特性を持ちます。硬さ試験の特徴は、非破壊試験、短時間で試験可能、形状の制限が少ない、微小領域の評価が可能の4つです。

・非破壊試験

硬さ試験は、試験対象にくぼみを付け、くぼみの深さや大きさから硬さを求めます。そのため、引張試験のように試料を破壊しません。くぼみの大きさは、実用上問題にならないほど小さい場合も多く、出荷前の現品検査として利用することもあります。機械部品をよく見てみると、硬さ試験のくぼみが観察できることもあります。

・短時間で試験可能

硬さ試験は、他の試験より短時間で試験を終えることができます。疲労試験では1つのデータを取るのに1週間程度かかるものもあります。しかし硬さ試験は、早いもので30秒に満たない試験方法があります。そのため、生産工程の一部に取り入れ、効果的な品質管理法として用いることができます。

・形状の制限が少ない

硬さ試験には定形の試験片形状がないため、引張試験のように試験片の準備が必要ありません。事前の試料調整を施せば、複雑・微小な部品であっても試験が可能です。

・微小領域の評価が可能

硬さ試験のくぼみは、小さい場合には10μm程度です。そのため、ショットピーニング処理面の表層のみなど、ピンポイントで硬さ測定が可能です。内外部で性質が異なる材料(高周波焼入れ処理後の金属など)を評価する際にも有用です。

硬さには、ブリネル硬さ、ロックウェル硬さ、ビッカース硬さなどがあり、それぞれ試験方法が異なります。各試験方法について、解説します。

2. ブリネル硬さ試験

ブリネル硬さとは、鋼球または超硬合金球の圧子を用いて、試験面に球状のくぼみを付けたときの荷重を、くぼみの表面積で割った値のことです。ブリネル硬さ試験に適した試料は、硬さの不均一な材料(鋳物や粉末冶金など)、各種金属素材、圧延材、鍛造品などです。ブリネル硬さ試験の長所は、他の試験に比べてくぼみが大きいため、試料の平均的な硬さを測定することが可能な点です。短所は、くぼみが目立つため、製品として使用予定のものには向きません。図1にブリネル硬さ試験機の概略図を示します。

図1:ブリネル硬さ試験機の概略図

図1:ブリネル硬さ試験機の概略図

図2のように圧子の直径をD、くぼみの直径をd1、d2とすると、ブリネル硬さHBWは以下の式で計算できます。

図2:圧子とくぼみの直径

図2:圧子とくぼみの直径

ブリネル硬さHBW

ここで、Fは試料への荷重(N)、dはくぼみ直径の平均(mm)であり、d=(d1+d2)/2で計算されます。ブリネル硬さ試験の試料形状は平面で、試料表面はサンドペーパー仕上げを施して表面粗さを調整することが望ましいです。試料を切断する際は湿式切断砥石を用いるなど、加工ひずみや入熱が無いようにします。くぼみが比較的大きいため、試験片の大きさには注意が必要です。試験についてはJIS Z 2243ブリネル硬さ試験-試験方法に条件が記載されています。例えば、くぼみの中心間距離、くぼみ中心と試料縁の距離、試料の厚さは図3のように決められています。試験前に、JIS規格を確認することが好ましいでしょう。

図3:ブリネル硬さ試験のJIS規格による寸法規定例

図3:ブリネル硬さ試験のJIS規格による寸法規定例

ブリネル硬さ試験の結果は、例えば120HBW 10/3000/15と表します。120はブリネル硬さの測定値です。HBはブリネル硬さを表す記号です。Wは圧子の材質を表し、Wは超硬合金球、Sであれば鋼球です。10は圧子の直径(mm)、3,000は試験力(kgf)、15は荷重の保持時間(s)を示します。

3. ロックウェル硬さ試験

ロックウェル硬さとは、ダイヤモンド円すい、または鋼球の圧子を用いて、試験面に生じたくぼみの深さから算出した硬さです。試験荷重は、588.4N~1,471N(60kgf~150kgf)です。薄い試料には、低荷重での試験(スーパーフィシャル硬さ試験)が可能です。ロックウェル硬さ試験に適した試料は、各種金属材料、熱処理後の鉄鋼材料、樹脂素材などです。ロックウェル硬さ試験の長所は、ブリネル硬さ試験やビッカース硬さ試験と比較して、短時間で測定できる点です。そのため、現場での検査に適しています。短所は、試料の硬さによって試験法が異なるため、試料同士を同一尺度(スケール)で比較することができない点です。図4にロックウェル硬さ試験機の概略図を示します。

図4:ロックウェル硬さ試験機の概略図

図4:ロックウェル硬さ試験機の概略図

ロックウェル硬さ試験の試料形状は、平面もしくは円柱面とし、表面はサンドペーパー仕上げを施して表面粗さを調整することが望ましいです。試料を切断する際は湿式切断砥石を用いるなど、加工ひずみや入熱が無いようにします。試験についてはJIS Z 2245ロックウェル硬さ試験-試験方法に条件が記載されています。例えば、くぼみの中心間距離、くぼみ中心と試料縁の距離、試料の厚さは図5のように決められています。dはくぼみの直径(mm)、hはくぼみの深さ(mm)です。

図5:ロックウェル硬さ試験のJIS規格による寸法規定例

図5:ロックウェル硬さ試験のJIS規格による寸法規定例

ロックウェル硬さ試験では、適切な試験条件(スケール)の検討が重要です。例えば、Aスケールはダイヤモンド円すい圧子を用いて、60kgfの荷重を加えます。一方、Cスケールはダイヤモンド円すい圧子で、150kgfの荷重を加えます。そのため、Cスケールは硬度が高い鋼材に用います。しかし、超硬合金などにCスケールで試験を行うと圧子が破損する危険があるため、超硬合金の試験はAスケールを用いることが望ましいです。

ロックウェル硬さHRの計算式は、スケールによって異なります。例えば、Cスケールでは以下の式で計算します。円筒面にロックウェル試験を行った際は、値を補正する必要があります。

ロックウェル硬さHRCの計算式

ロックウェル硬さ試験の結果は、例えば60 HRCと表します。60はロックウェル硬さの測定値です。HRはロックウェル硬さを表す記号です。Cはスケールを表し、試料の硬さに応じて変えます。スーパーフィシャル硬さ試験の結果は、例えば60 HR45Nと表します。この場合は、45Nがスケールを示します。

4. ビッカース硬さ試験

ビッカース硬さとは、ダイヤモンド四角すい圧子を用いてピラミッド形のくぼみを付けた時の荷重を、永久くぼみの対角線長さから求めた表面積で割った値のことです。精密部品や表面硬化させた部品、ロックウェル硬さでは測定ができない小さな試料などに適しています。ビッカース硬さ試験の長所は、試験荷重の違いによる硬さ値への影響が少ない点です。ダイヤモンド圧子を使用するため、硬い試料でも測定できます。また、くぼみが小さいため、試験後に使用する製品への試験が可能です。短所は、低荷重ではくぼみが小さいため、顕微鏡を用いて測定を行わなければならず、試料表面を鏡面に仕上げておく必要がある点です。図6にビッカース硬さ試験機の概略図を示します。

図6:ビッカース硬さ試験機の概略図

図6:ビッカース硬さ試験機の概略図

ビッカース硬さ試験でできたピラミッド形のくぼみの対角線をd1、d2とします(図7)。

図7:ダイヤモンド四角すい圧子とくぼみの例

図7:ダイヤモンド四角すい圧子とくぼみの例

このとき、対角線の平均値d(mm)は、(d1+d2)/2で計算されます。F(N)を、くぼみを付けたときの荷重とすると、ビッカース硬さHVは以下の式で表されます。

ビッカース硬さHV

ビッカース硬さ試験の試料形状は平面または円柱面とし、表面はサンドペーパーおよびバフ研磨仕上げを施して表面粗さを調整します。また、微小ビッカース硬さ試験など、くぼみが小さい場合は、表面を研磨し鏡面にする必要があります。図8のように、小さな試料は樹脂に埋め込んで研磨することで、試験が容易になります。試料を切断する際は、湿式切断砥石を用いるなど、加工ひずみや入熱が無いようにします。

図8:樹脂埋め試料例(歯車:樹脂の直径は30mm)

図8:樹脂埋め試料例(歯車:樹脂の直径は30mm)

試験についてはJIS Z 2244ビッカース硬さ試験-試験方法に条件が記載されています。例えば、くぼみ同士の間隔、くぼみ中心と試料縁の距離、試料の厚さは図9のように決められています。くぼみの対角線長さdと深さhの関係は、d=7hです。

図9:ビッカース硬さ試験のJIS規格による寸法規定例

図9:ビッカース硬さ試験のJIS規格による寸法規定例

ビッカース硬さ試験の結果は、例えば640HV 30/15と表します。640はビッカース硬さの測定値です。HVはビッカース硬さを表す記号です。30は試験力(kgf)、15は荷重の保持時間(s)を示します。

9.807N(1kgf)以下の低荷重で行うビッカース硬さ試験のことを、微小ビッカース硬さ試験といいます。金属材料の表面硬化層、皮膜、試料表面から内部への硬さ分布試験に適しています。また、セラミックスなどの測定も可能です。長所は、微小な領域の硬さをピンポイントで測定可能な点です。短所は、表面を鏡面に仕上げる必要がある点です。

5. 硬さ試験の手順例

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協力:地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター

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