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あなどるなかれ!食中毒:食品を科学する・リスク分析連続講座3

食品を科学する・リスク分析連続講

内閣府食品安全委員会は、2015年10月8日、日本学術会議講堂(東京都港区六本木)で、「食品を科学する リスクアナリシス(分析)連続講座」を開催しました。第3回となる今回のテーマは「あなどるなかれ食中毒」です。熊谷 進委員が講演しました。

この内容をもとに、食中毒、特にカンピロバクターと腸管出血性大腸菌を中心に解説します。

1. 食中毒の原因とその予防

食中毒の原因

食中毒を引き起こす主な原因は、細菌とウイルスです。皆さん、両者の違いは分かりますか?どちらも微生物に分類されていますが、性質は大きく異なります。

細菌は、まわりの栄養素、温度、湿度など条件がそろえば、自分で細胞分裂して増殖します。例として腸管出血性大腸菌O157が挙げられます。べん毛が生えており、運動することができるという特徴があります。

一方ウイルスは、生きた細胞に入り込んで、細胞の構成成分や機能を利用して増殖します。つまり、ウイルスは生きた細胞の外では、生きることができません。例としてはノロウイルスがあります。ノロウイルスは人の腸管でしか増殖することができませんが、人のふん便が海に流れると、二枚貝がウイルスを蓄積し、それを食して人に害をもたらす場合があります。

微生物による食中毒の分類

微生物が健康障害を引き起こす仕組みによって、2種類に分類できます。

感染型食中毒は、生きている微生物が消化管内の細胞に作用して生じます。生きている微生物を摂取しなければ、健康障害は起こりません。感染型食中毒の原因としては腸管出血性大腸菌、カンピロバクター、ノロウイルスがあります。

毒素型食中毒は、食品中で微生物が毒素を産生し、その毒素を摂取することによって生じます。生きている微生物を摂取しなくても、毒素を摂取してしまうと健康障害が起こります。毒素型食中毒の原因としては黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌があります。

食中毒の予防

食中毒予防の3原則は、原因微生物を1:つけない、2:ふやさない、3:やっつけるです。

1つ目の「つけない」に関しては、主な汚染源を知り、遠ざけることで防止につなげることができます。図1は主な汚染源を示したものです。例えば動物のふん便の場合ですと、食材や食品に近づけないといった対策ができます。

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図1:食中毒微生物の汚染源

2つ目の「ふやさない」では、食中毒微生物がどれくらいの速さで増えていくのかを知っておくと便利です(図2)。増殖が速い例として、腸炎ビブリオがあります。至適温度の37℃では、約10分で分裂します。

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図2:食中毒細菌の増殖速度

そして3つ目は、「やっつける」です。注意することは、感染型食中毒菌は加熱すれば、やっつけることができますが、耐熱性の毒素は普通の調理温度(約100℃)で加熱殺菌した後にも食中毒が起きてしまうということです。黄色ブドウ球菌やセレウス菌から作られる毒素は耐熱性です。実際に食中毒が起きてしまったケースでは、きちんと冷やしていなかった生乳の中で黄色ブドウ球菌が増えて、毒素が作られました。そのあと、牛乳の製造で加熱殺菌したものの、毒素は死なず最後の粉ミルクまで残ってしまい、結果それを飲んだ多くの人が食中毒になってしまいました。

2. カンピロバクター

カンピロバクターとは?

カンピロバクターは、感染型食虫毒を引き起こす細菌の一種です。増殖に一番適した温度が42~43℃で、これは鶏の体温に相当します。そのため肉用の鶏や牛の排便から高濃度に排出されます。牛肝臓内部に存在することもあります。図3はカンピロバクターの感染経路を概念図として示しています。

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図3:カンピロバクターの感染経路

カンピロバクターが原因の食中毒は、カンピロバクターの潜伏時間が比較的長い(平均2~3日)ため、長引く傾向にあります。また夏場での発生が多くなっています。症状は下痢、腹痛、発熱といった食中毒の典型的な症状が現れます。関節が痛くなり、体中がだるくなるギランバレー症候群を発症する場合もまれにあります。

食中毒事例

図4は、2014年のカンピロバクターの食中毒事例を原因食品で分類した図です。2014年に、厚生労働省に報告された発生件数は307件となっています。このうち原因食品が特定できていない件数が200件ほどあり、原因を特定することの難しさを物語っています。

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図4:2014年カンピロバクター食中毒事例

対策方法

対策方法は、5つあります。

  1. 鶏の飲用水を消毒する
  2. 鶏肉の生産衛生管理ハンドブックを参照する
  3. 網戸をつけるなど養鶏場のはえ対策を行う
  4. 食鳥処理場ではカンピロバクター陰性の鶏から処理する
  5. 鶏、鶏肉、鶏皮を冷凍または冷蔵保存

図5は、対策を施した結果、どのくらい食中毒の発生確率が減少されるのかを示した図です。

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図5:対策の効果予測

3. 腸管出血性大腸菌

腸管出血性大腸菌とは?

腸管出血性大腸菌は、感染型食中毒を引き起こす細菌の一種で、O157もこの菌に含まれます。腸管出血性大腸菌が原因の食中毒は、牛肉を主とする食肉の関与が多くなっています。図6は腸管出血性大腸菌の感染経路を概念図として示したものです。

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図6:腸管出血性大腸菌の感染経路

家畜の中では主に牛が腸内に保菌するため、食肉処理の工程で腸管内容物が、直接または使用器具や作業者の手指を介して肉や内臓可食部(レバーなど)を汚染することがあります。この汚染食品を生、もしくは加熱不十分の状態で食べることによって感染します。

カンピロバクター同様、夏場に増える傾向があります。症状は下痢、発熱、おう吐やまれにHUS(溶血性尿毒症症候群)、脳症を引き起こす場合もあります。

食中毒事例

腸管出血性大腸菌感染症の届出件数は1年間で約4,000件にも上っています。食中毒事例としては、1996年に大阪で給食のカイワレ大根が原因となり、患者数数千人、死者数3人という事例があります。最近では2011年に発生したケースがあります。この時はユッケが原因で、患者数は181人、死者数5人に上りました。

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図7:主な腸管出血性大腸菌食中毒事例

行政の対応

では行政はどのように対応したのでしょうか?

1996年の大阪で起きた事例後には、原因となった食品を特定できるようにと、検食の保存を3日間の保存から2週間以上に延ばしたり、生食用食肉の衛生基準を強化したりしました。

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図8:腸管出血性大腸菌食中毒防止に向けた行政対応

2011年の事例後には、厚生労働省から食品安全委員会へ依頼があり、「摂食時安全目標値(FSO)」と「加工時の達成目標値(PO)」を設定しました。実験データに基づき、目標値を推定し、加熱基準を強化しました。

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図9:摂食時安全目標値(FSO)と加工時の達成目標値(PO)

 

人間が生きていくために不可欠な「食」。しかしそんな「食」をおびやかす食中毒という存在。食中毒を引き起こす微生物の特性を理解し、その特性に合わせてきちんと対策することが、食中毒の低減につながります。

参考:内閣府食品安全委員会

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