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塩と健康:食品を科学する・リスク分析連続講座4

食品を科学する・リスク分析連続講

内閣府食品安全委員会は、2015年11月5日、日本学術会議講堂(東京都港区六本木)で、「食品を科学する リスクアナリシス(分析)連続講座」を開催しました。第4回となる今回のテーマは「塩と健康」です。佐藤 洋委員長が講演しました。

この内容をもとに、食塩と高血圧の関係を中心に解説します。

1. 塩とは?

まず、食塩と塩の定義をはっきりさせておきます。

食塩とは、塩化ナトリウム(NaCl)を主成分とする調味料の一種のことです。海水の乾燥・岩塩の採掘によって生産されます。塩とは、塩事業法によると、NaClの含有量が40/100以上の固形物です。ただし、チリ硝石、カイニット、シルビニット、その他財務省令で定める鉱物は除きます。

以前、塩は専売の対象で、スーパーで見かけることはありませんでした。しかし、今では食卓塩、精製塩、粗塩、天塩、減塩塩とたくさんの種類がスーパーの棚に並んでいます。減塩塩というのは、NaClの含有量は40%以上という条件で、NaClを大きく減らし、その分カリウム(K)の含有量を増やしたものです。Kには、Naの影響を抑え、高血圧を抑制する働きがあります。

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図1:塩商品の組成

2. ナトリウムとは?

体の構成要素

ナトリウム(Na)は、人体を構成する元素です。体重が70kgの場合、105gがNaで構成されています(図2)。表の左側の元素は、体の構成成分になっているのに対し、Naを含む表の右側の元素は、体の機能面でも役割を果たしています。また表中の元素以外に、鉄などの微量元素も体の構成元素に含まれます。

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図2:人体を構成する元素

Naの存在部位

意外と存在感のあるNaは、体のどこに存在しているのでしょうか?体に存在するNaの約40%は炭酸塩、リン酸塩として骨、約50%は細胞外液に溶けて存在しています。

細胞外液は、細胞の外側にある液体のことで、細胞内の環境を一定に保ちます。図3は、Naの存在量を、細胞外液と細胞内液に分けて示したものです。Naは、細胞外液に多く存在する一方で、細胞内液にはその10分の1しか存在していないことが分かります。

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図3:ナトリウムの存在

Naが果たす生理学的役割

Naが果たす生理学的役割は、主に2つあります。

まず一つ目は浸透圧の維持です。細胞は、陽イオンや陰イオンによって浸透圧が維持されています。その際に細胞外液ではNa、細胞内液ではカリウム(K)が、大きな役割を果たしています。

もう一つの役割は、活動電位を作るもとになることです。活動電位は、細胞間の情報伝達に重要なもので、神経伝達や心筋収縮ができるのも活動電位のおかげです。

Naの代謝

Naは体外から摂取され、体内でほぼ100%吸収されます。吸収場所は、ほとんどが小腸です。

排泄方法は、汗と考えられがちですが、過剰に汗をかかなければ、ほとんどの場合尿から排泄されます。ただ尿が出る前には糸球体でろ過され、そこでろ過されたものの99%が尿細管で再吸収されてしまいます。そのため、排泄されるNaは、ごくわずかです。

塩分が足りなくなると、しょっぱいものが欲しくなり、塩分を取りすぎると、のどが渇くといったように、Naは調整されます。また、Naの再吸収を促進させたり、血管を収縮させて血圧を上げるホルモン系によっても調整されます。

3. 食塩(ナトリウム)と健康

それでは、今まで見てきた食塩やナトリウム(Na)は、私たちの体にどのような害をもたらすのでしょうか。その一つに高血圧があります。

食塩(ナトリウム)と高血圧

高血圧は、血管内を流れる血液の圧力が、強くなり続けている状態です。高血圧の基準を図4に示しています。収縮期血圧は、血圧の振れ幅の最大値、拡張期血圧は、血圧の振れ幅の最小値のことです。この表内で示された数値を超えると、高血圧と診断されます。高血圧になると、心血管病、脳卒中、心筋梗塞、慢性腎臓病などにつながり、死亡リスクが高まるといわれています。

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図4:高血圧の診断基準

食塩(ナトリウム)と高血圧は、どのように関係しているのでしょうか。図5は、栄養素摂取と高血圧との関連を示した図です。

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図5:栄養素摂取と高血圧の関連

図を見ると、Naの多量摂取や肥満が、高血圧の大きな要因となっていることが分かります。一方でKは、高血圧を抑制する働きを持っています。

食塩摂取の基準

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図6:食塩摂取の基準例

WHO(世界保健機関)やアメリカ、そして日本でも食塩摂取の基準が設定されています(図6)。食塩(NaCl)の量は、Naの量を2.54倍したものです。ただ、アメリカの基準となっている食塩5.8g/日は、味を感じることができないレベルなので、実際にそこまで抑えるのは難しいです。

では、どのような食品からNaは、摂取されているのでしょうか。図7は、食品群別にNa摂取量を測ったものです。一番摂取量が多い「その他の調味料」は、食酢やドレッシングなど出来合いの調味料のことを指します。その後にしょうゆ、塩と続きます。塩からのNa摂取は、意外と少ないようです。

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図7:食品群別Na摂取量

4. 減塩に関する議論

前章で、食塩は高血圧につながり、高血圧はさまざまな健康障害をもたらすと説明しました。しかし、食塩摂取と健康障害の直接的な因果関係は、明確とはなっていません。

全米科学アカデミーの一部を構成するIOM(Institute Of Medicine:米国医学研究所)から、2013年に発表された論文によると、Naの摂取が多くなると、心血管疾患のリスクは増えると認められるものの、Naの減少がリスクを減少させる直接的な証拠は無いと発表されています。

また、英国に本部がある国際NPOコクラン共同計画が運営する、コクランライブラリーに掲載された論文によると、Na摂取量を減らすことで、実際に血圧が低下することは認められています。しかし一方で、Na摂取量を減らすと、コレステロール、中性脂肪が増加するといわれています。

ただし減塩に懐疑的な研究者も、高食塩摂取は高血圧をもたらすと認めています。また、高血圧がさまざまな健康障害をもたらすのは事実です。日本人は、1日あたり10~11gの食塩を摂取しており、18歳以上の男性で8.0g未満、女性で7.0g未満が食塩摂取の目標値となります。高血圧を引き起こさないためには、現状より、やや減塩することが必要です。


 

塩は、人間が生きるために必要なものです。しかし塩との付き合い方を間違えると、人間に悪影響が出ます。健康な生活を送るためには、塩と適度に付き合うことが大事です。

参考:内閣府食品安全委員会

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