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残留農薬って危険?:食品を科学する・リスク分析連続講座5

食品を科学する・リスク分析連続講

内閣府食品安全委員会は、2015年12月10日、日本学術会議講堂(東京都港区六本木)で、「食品を科学する リスクアナリシス(分析)連続講座」を開催しました。第5回となる今回のテーマは「農薬」です。吉田緑委員が講演しました。

この内容をもとに、残留農薬の安全評価を解説します。

1. 農薬の登録制度

農薬の目的

農薬は、農作物(樹木やきのこを含む)に使われ、大きく3つに分けることができます。

1つ目は、病害虫の防除に用いる薬剤です。例えば、殺虫剤、殺菌剤、除草剤です。2つ目は、植物の成長調整に用いる薬剤です。例えば、発根促進剤、着果促進剤、無種子果です。そして3つ目は、病害虫防除に利用する天敵です。例えば、寄生バチ、テントウムシ、昆虫ウィルスです。

農薬を使用しなかった場合、ヨトウムシやアオムシなどの害虫の食害を受け、収量や品質が低下します。

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 図1:農薬を使用しなかった場合の収量

農薬の主目的は、病害虫の防除です。しかし農薬は、農作物に散布されると同時に、環境中にも放出されています。そのため、ヒトや環境へのリスクがないように、農薬を適切に使用する必要があります。

農薬の登録

農薬を製造・輸入するためには、農林水産大臣の登録が必要です。そして、農薬のラベルには、量、回数、方法など使用条件が細かく記載されています。

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図2:農薬の使用条件例

では、農薬は、どのような過程で登録されるのでしょうか。図3は、農薬の申請から登録までの流れを示したものです。申請して登録されるまでには、10年以上かかり、コストも数十億円かかります。

この過程の中で、食品安全委員会は、厚生労働省から要請を受けて、残留農薬のリスク評価を行います。リスク評価とは、人が摂取しても影響のない残留農薬量を設定することです。厚生労働省は、その結果を踏まえて残留農薬の基準を設定します。

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図3:農薬の申請から登録まで

2. 残留農薬の安全評価

評価の方法

ヒトのばく露(危険にさらされること)は、2種類のタイプに分類されます。一生涯にわたるばく露を想定した慢性ばく露と、一時的な大量ばく露を想定した急性ばく露です。

慢性ばく露は、残留農薬を一生涯摂取しても有害影響が出ない量ADI(Acceptable Daily Intake:一日許容摂取量)で評価します。急性ばく露は、残留農薬を一度に大量摂取しても有害影響が出ない量ARfD(Acute Reference Dose:急性参照用量)で評価します。

評価基準の設定

まず、目的を定めた上で、ラットやマウスなどで農薬の毒性試験が行われます。次に、その試験で得られたデータをもとに、他の研究結果や論文を参考にして、毒性の特徴を総合的に把握します。その後、ADIやARfDがそれぞれ計算されます。

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図4:毒性評価におけるADI、ARfD設定までの流れ

ADIとARfDの計算では、各試験で得られた無毒性量の中から、最小無毒性量が決定されます。無毒性量とは、毒性が認められなくなる量のことです。そして、ADI向けには各試験での最終的な最小無毒性量、ARfD向けには各試験で農薬を単回投与した時の最小無毒性量が設定されます。

最終的にこれらの数値に安全係数を掛け合わせて、ADIやARfDが決まります。安全係数とは、種差や個体差を考慮して、ヒトに毒性の影響が出ないよう設定される数値です。毒性に対する人の感受性が、動物の中で最も高いと仮定して、動物間の差と個体間の差をもとに算出されます。例えば、動物間の差を10、個体間の差を10とすると、安全係数は100分の1となります。

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図5:ARfDの設定

残留農薬摂取量の推定

残留農薬摂取量を推定するためには、長期摂取を考慮する場合、食品別で作物残留試験結果に1日平均摂取量を掛けた後、全食品分を足し合わせます。短期摂取を考える場合、食品別で、作物残留試験結果に1日最大摂取量を掛けて、全食品の中での最大値とします。

図6は、ある残留農薬Aを長期摂取した場合の、国民平均推定量とADIを比較した表です。この例では、国民平均推定摂取量は、ADIの3.8%程度であることが分かります。

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図6:残留農薬とADIの比較例

3. まとめ

残留農薬が、実際に健康被害をもたらすことはあるのでしょうか?

農薬には登録制度があり、農産物ごとに使い方や量が決められています。そして、残留農薬の安全評価のために、ADIやARfDなど健康に影響の出ない量が規定されています。実際の摂取量は、ADIやARfDよりも大幅に小さい量となっています。

こうしたことを踏まえると、残留農薬のリスクは低く、健康への影響は無いといえます。基準値を超えて農薬が残留した場合、使い方が間違っている可能性があります。

参考:内閣府食品安全委員会

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