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体の中に貯まるものと外に出ていくもの:食品を科学する・リスク分析連続講座6

食品を科学する・リスク分析連続講

内閣府食品安全委員会は、2016年1月21日、日本学術会議講堂(東京都港区六本木)で、「食品を科学する リスクアナリシス(分析)連続講座」を開催しました。最終回となる今回のテーマは「物質の体内処理」です。山添康委員が講演しました。

1. 物質の体内処理

私たちは、肉、魚、野菜、果物などさまざまなものを毎日摂取しています。こうした食事には、炭水化物、脂肪、たんぱく質、ビタミン、ミネラルのような栄養物だけでなく、セルロースのような非栄養成分や、ジャガイモの芽に含まれるアルカロイドのような有毒な物質も含まれています。一体どのようにして、私たちの体は、これらの物質を処理しているのでしょうか。

体内の移動

まずは、物質がどのように体内を移動していくのか見ていきます。物質の体内移動は、入る、貯める、出すの3段階に分けられます(図1)。

口から入ったものは、基本的に小腸や胃のような消化管に吸収されます(入る)。消化管で吸収されると、血管を伝って、全身の臓器に運ばれます(貯める)。そして、大抵の物質は、ふん、尿、呼気、汗となって徐々に体の外へ出ていきます(出す)。

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図1:物質の体内移動

体内での処理

物質の体内処理は、栄養物と異物で異なります。ここでの異物とは、体に取り込む栄養物以外の物質を指します。両者とも消化管で吸収されるまでは同じですが、処理のされ方が異なります。

栄養物は、物質の元の構造に依存せずに、排せつされます。糖、脂肪、アミノ酸であろうと、栄養物であれば、炭酸ガス、水、尿酸に変換されて排せつされます。一方、異物は、物質の元の構造に依存して、排せつ方法が決められます。これは、私たちの体が、異物の一部は変換できても、栄養物のように小分子にまで変換することはできないからです。

体内処理では、代謝酵素やトランスポーター(輸送タンパク)が重要な役割を果たしています。代謝酵素は、体の新陳代謝を担っています。トランスポーターは、物質を細胞内外へ輸送する役割を担っています。これらが、エネルギーを使って、栄養物や異物由来の代謝物を処理しています。

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2. 物質が蓄積する要因と影響

蓄積する要因

物質の特性が起因するものと、人間の処理能力が起因するものがあります。物質側の要因は、3つあります。1つ目は、消化管から吸収されやすいことです。主に、油に溶けやすい物質が当てはまります。例として、マグロやうなぎに含まれる脂溶性ビタミンがあります。脂質と一緒に吸収されてしまい、排出されづらくなっています。

2つ目は、血流から組織に移動しやすいことです。物質は、消化管から門脈を通じて肝臓に入ります。肝臓に入ると、血液を通じて全身に運ばれます。その際に、組織に受け付けられやすい物質は、血流から組織に運ばれ、貯まってしまいます。

3つ目は、構造変換が必要なことです。我々の体は、物質を体の外に出すために、構造変換する必要があります。しかし、体に得意でないものは、ゆっくりにしか処理できず、貯まってしまいます。

人間側の要因は、2つあります。1つ目は、物質を多量に摂取してしまうことです。われわれの体は、さまざまなものを処理できます。しかし、量に対しては対応力が弱く、多量を一気に処理できません。

2つ目は、肝臓や腎臓機能が低下していることです。臓器の機能が低下すると、構造変換機能が弱くなります。60~70歳になると、肝臓のサイズが小さくなるため、物質が貯まりやすくなります。また、病気や栄養失調の場合も、臓器機能が落ちるため、物質が貯まりやすくなります。

蓄積の影響

では、物質が体に貯まってしまった結果、どのような影響が出てくるのでしょうか。持続的な蓄積は、がんのように、慢性的に現れる病気の原因となることがあります。ただし、蓄積する物質によって、現れる症状は異なります。

また、次世代への影響もあります。出産や短期間内の著しい体重減少の場合、脂肪の組織に貯まっていた異物が、母乳や血液を通じて、蓄積部位から移動します。その結果、母乳をあげているお母さんの場合、赤ちゃんに健康影響が出る可能性があります。

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3. 健康影響をもたらす物質

ここでは、残留性有機汚染物質とパーフルオロオクタン酸の2種類を例に挙げます。

残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)

難分解性、高蓄積性、長距離移動性があり、人や生態系に有害性があります。POPsには、有機ハロゲン化合物が含まれます。例えば、かつて殺虫剤、農薬に使われていたDDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)や絶縁油、可塑剤に使われたPCBs(ポリ塩化ビフェニル)です。

私たちの体は、有機ハロゲン化合物を分解するのが得意ではありません。体内に入ると、肝臓、脂肪、副腎、皮膚などに貯まります。肝臓を除いた組織は、分解する力が弱いため、貯まりやすくなっています。半減期は、DDTの場合、5~10年と長く、出ていきづらいという特徴があります(図2)。

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図2:母乳中のDDT変化

パーフルオロオクタン酸(PFOA)

POPsに関連して、最近話題になるのがPFOAです。PFOAは、フッ素のよろいに覆われ、化学的に安定しているため、テフロンやコーティング剤で使われていました。脂肪酸の一種であるものの、脂肪には貯まらず、肝臓や血液に貯まりやすい特徴があります。

また、PFOAの蓄積には、性差があります(図3)。ラットを用いた実験で、オスはPFOAの代謝が遅く、貯まりやすいことが分かっています。これは、PFOAが腎臓からいったん排出されると、ぼうこうに行くまでに、トランスポーターによって、再吸収されてしまうためと考えられています。

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図3:PFOAの性差

PFOAは、半減期が非常に長く、毒性が懸念されるため、日本やアメリカ、そしてヨーロッパ諸国など世界各国で、できるだけ使用を制限しようという動きが見られます。

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4. 私たちができること

人は、進化の過程で、さまざまなものを処理する機能を持つようになりました。そのため、食べる必要のないものも処理できます。実際、私たちの体は、異物を毎日処理しています。ただし、体内処理は、物質や個人の処理能力に影響されます。特に、量に関しては、個人差が現れやすく、体への影響も個人によって異なります。

体内処理において、大事なことは、酵素、トランスポーターの機能が十分に備わっていることです。栄養不良では、代謝や排せつ能力が低下してしまいます。そのため、私たちは、バランスの良い食事を摂って、代謝機能をフルに発揮できるようにしておくことが大切です。

参考:内閣府食品安全委員会

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