メニュー

新調理システムとロボットが結びつくとき、厨房に革命が起こる
ニチワ電機による自動搬送ロボット台車活用の試み

著者:サイエンスライター 森山 和道

HCJ2018、ニチワ電機ブース。自動走行サービスワゴン「サウザー(Doog社製)」のデモ

HCJ2018、ニチワ電機ブース。自動走行サービスワゴン「サウザー(Doog社製)」のデモ

人手不足が叫ばれる現場へのIoTやAI、そしてロボット技術導入による効果として第一に求められているのは省人化・無人化、第2が利益率向上です。ですがそれだけでありません。大事な効果の一つとして、品質・歩留まりの向上や、工程全体の見直し・改善が挙げられます。自動化のために、いわゆる5S(整理、整頓、清掃、清潔、習慣化)を徹底しないといけません。それだけでも、だいぶ変化する現場は少なくないと思います。

同じことが、外食・中食の現場でも起きようとしています。いま外食産業では2020年東京オリンピック/パラリンピックに向けて、食品衛生管理における国際標準「HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)」の義務化が課題となっています。農林水産省のホームページの表現をそのまま引用すると、HACCPとは、「原材料の受入れから最終製品までの工程ごとに、微生物による汚染、金属の混入などの危害要因を分析(HA)した上で、危害の防止につながる特に重要な工程(CCP)を継続的に監視・記録する工程管理システム」です。最終製品だけをチェックするのではなく、全工程に渡って管理することで、高い水準で危険性を除外し、問題のある製品の出荷を未然に防止することを目的とした管理システムです。

具体的には温度管理や異物混入において、継続的な監視を行い、記録をとることになります。これがロボット技術、自動化技術と相性がいいことは、生産技術関係者ならば、直ちにご理解いただけると思います。現在、外食・中食産業へも既存の自動化調理器具に加えて、ロボット技術の導入が行われようとしています。その背景には、このHACCP義務化も一つの理由としてあるのです。現場への効果としては衛生面の向上と品質の安定が挙げられます。

ファミレスでの搬送ロボット活用で1日売上3~4万円アップ

一般社団法人 新調理システム推進協会事務局長、ニチワ電機株式会社常務取締役 西耕平氏

一般社団法人 新調理システム推進協会事務局長、ニチワ電機株式会社常務取締役 西耕平氏

さて、幕張メッセにて2月14日-16日の日程で「スーパーマーケット・トレードショー2018」、続けて2018年2月20日-23日にはビッグサイトで「HCJ2018、国際ホテル・レストランショー/フード・ケータリングショー/厨房設備機器展」が行われました。いずれも、外食・中食産業の省人化・効率化がテーマでした。2月21日には「外食中食産業の省人化と生産性向上」と題して、一般社団法人新調理システム推進協会事務局長で、ニチワ電機株式会社常務取締役の西耕平氏が講演を行ないました。

西氏によれば、自動搬送ロボットをステーキチェーンでの食器の後片付けに活用したところ、土日には1日に3~4万円もの売り上げ向上効果があったとのこと。ここでは、西氏の講演内容をもとに、外食・中食産業へのサービスロボット導入効果を見てみましょう。上記のような背景情報も頭に入れてお読みください。西氏のお話は、従来型の生産現場の自動化を手がけている方々の仕事とも相性が良いと思います。今後、ロボットを厨房あるいはフロアへ導入する流れは盛んになると思いますが、そのための参考になるはずです。

「人間の動作に寄り添う技術革新」が起きている厨房

最初に「新調理システム推進協会」とは一言でいうと「調理場の見える化」を目指す団体だと西氏は紹介しました。ニチワ電機は業務用電機厨房機器専門メーカーで、厨房全体のシステム提案やフードサービスのコンサルティングも行っている会社です。大手ホテルやファミレスチェーンなどの厨房を手がけています。

西氏はまず、生産人口の減少を背景とした現代の人手不足について概説しました。本来、人手が不足すれば人件費が高騰して従業員の給料が増え、結果的に内需が拡大して市場は好転するはずです。ですが、そのためには生産性の向上が必須となります。生産性が低いままだと従業員の負担が増えて、安定した労働力確保が難しくなり、企業は徐々に衰退するといった負の連鎖が始まってしまいます。よって、何らかのかたちで生産性を向上させなければなりません。

それは厨房でも同じです。西氏は「人間の動作に寄り添う技術革新」が重要だと述べました。具体的にはコンベヤ式オーブン、連続フライヤー、オートリフト式茹で麺機、自動搬送機などです。従来は工業製品として活用されていた自動化機器の数々を、外食・中食サービス産業で積極的に採用して、生産性を高めることが急務となっているとのこと。

厨房運営には3つのポイントがあるといいます。メニュー(工程)、施設、人です。施設によって工程が変わり、工程にそって人数が決まります。

厨房施設の3つの柱

厨房施設の3つの柱

メニューでは標準原価と原価率の維持管理、標準作業手順書の作成が重要です。施設側では運営に限界がくると、サテライト化して「セントラルキッチン」にアウトソースするやり方で省力化・省人化すると同時に、衛生管理や労働環境を改善し、ロスを削減するといった流れがあります。ただ現在はセントラルキッチンも人手不足になりつつあるのが実情です。そのため、これまでは、これらの手法で省力化を図ってきましたが、昨今は省力化よりもさらに「省人化」の方向性にあるそうです。

施設側では原価管理ができる厨房作りが重要となります。西氏は「ニチワでは厨房図面を勝手に書かせることはない。現場を見て多角的に分析し、図面に置き換えていくことが重要だ」と述べました。

電化厨房で温度と時間を管理する「新調理システム」

それらを測るための物差しが「新調理システム」の概念であり、数値管理と制御性の良い厨房機器を使った「調理の見える化」です。原則となるのが「TT管理」と呼ばれる「食材の温度と時間の管理」です。原価率、時間などを全て考慮して設計を行います。全ての献立には標準原価があり、人件費や原料コスト、原価率が変化します。ニチワではそれらが2%以上ぶれないように設計に入るとのことです。もちろん作業量の整理整頓も非常に重要です。それらが生産性の向上と商品開発力に繋がり、料理の質の安定化や安全性の確保などにも繋がるし、コスト管理も可能になるのです。

「新調理システム」が生まれたのはバブル景気の時代でした。当時の人手不足対策として電化厨房が誕生し、スチーム・コンベクション・オーブンも生まれました。バブル景気時代以前には燃焼式加熱機器が多く使われていましたので、厨房内の温度も高く、現場は3Kそのものだったと言います。

西氏は、当時、日経BP社の雑誌「日経レストラン」が「3C+P」というかたちで電化厨房の効果をまとめた記事を紹介しました。3C(涼しく、衛生的、操作性)とP(生産性向上、プロダクティビティ、計画性向上、プランニング)です。

電化厨房化の効果

電化厨房化の効果

電化厨房導入によって、従来の厨房よりも、30%コンパクトになり、その結果、従業員の歩数も減りました。たとえばIHの上にオーブンを置けるようになったため、動線が短くなったのです。その結果、どんどん生産性が上がりました。またランニングコストも抑えることができるようになりました。厨房のエネルギーの多く、およそ半分は空調です。照明が30%、加熱機器などの電気代は20数パーセントに過ぎません。つまり空調のコストをいかに落とすかが重要なのです。西氏は「設計段階でそれを明確化することが電化厨房なら可能だ」と力説しました。

厨房施設における消費は11あるとのこと。人、時間、電気、ガス、炭、水(湯)、食材、調味料、油、洗剤、消毒液です。これらの標準原価を設定し、建築計画段階から原価率維持管理をできる仕組みを作ると生産性が上がると西氏は述べました。要は、省人化と動線の短縮です。

厨房施設における11の消費

厨房施設における11の消費

厨房の生産システムの分類

厨房の生産システム

厨房の生産システム

続けて西氏は、マクドナルドが社内教育機関の「ハンバーガー大学」で教えている厨房の生産システムを紹介しました。少品種少量を注文ごとに生産するのが「クック・トゥ・オーダーシステム」です。計画調理、少品種大量生産が「バッチ・アンド・ビーン・ストックシステム」。ホテルでいうと宴会、バンケット、給食などがこれに対応します。大量に作っておき、必要に応じて冷蔵庫を使ってストックしておき、まとめて出すシステムです。

それほどの量は出ない場合は、「アセンブリ・トゥ・オーダーシステム」、すなわち、注文ごとに組み立てるシステムをとります。多くのファミレスがこれを取っています。ご飯はジャーに入っており、オーダーごとにアッセンブリして提供していくわけです。厨房は、このうちのどれかの考え方をとって組み立てられており、その枠組みのなかで厨房器具を選び、レイアウトを考えていくのが基本です。

「ジャスト・イン・タイム」は、ちょうどよいタイミングで料理を提供する考え方です。大事なことは、一つの機械で一つの料理だけを作るのではなく、複雑な料理を同時に作ることだと西氏は述べました。多品種少量を大量に提供するのです。多くのファミレスでは今、この「混流生産」の考え方を導入しています。ニチワでは、これからはホテルや病院にもこのやり方が入っていくと考えているとのことでした。

あとは面倒な作業を外部に出す「セントラル・キッチンシステム」です。一括購買・集中加工するセントラルキッチンは、本来はそれだけではなく、商品開発と一体となり、利益を持つことが非常に重要です。

これらを徹底すると、生産システムの5S(整理・整頓・清掃・清潔・習慣化)がごく自然に出てきます。この5Sはどの業界でも自動化の前提条件です。

直接効果だけではなく、間接効果も重要

西氏は、「生産システムの効果には、直接効果と間接効果がある」と述べました。「特に外食においては非常に大きな間接効果がある」といいます。生産システムの導入によってもたらされるベターな環境は、実はほぼそのままコンビニエンスストアの店舗環境であり、外食産業は今後は従業員確保のためにも労働環境の改善を行い、誰でも働きやすく、モチベーションの上がる店舗作り・厨房作りが必要だと述べました。

モチベーションのあがる店舗づくりが重要

モチベーションのあがる店舗づくりが重要

調理作業の割合を見ると、多くの厨房では実は「作業をやりすぎていることがわかる」といいます。工程が整理されていないのです。その結果、洗い物の手数も増えてしまいます。動線が悪いと移動運搬にも時間がかかります。西氏は「理想パターンは下ごしらえは3割、最終調理と盛り付けは4割、後片付けと食器洗浄が3割とすることだ」と述べました。そのための方法は基本的には「脱鍋釜」だそうです。つまり、なるべく器を変えない仕組みです。合わせて動線をきっちり描くこと。そうすることで、極力作業の後片付けを減らすことができます。現在は人手不足により、後片付けや食器洗浄の人員確保が難しくなりつつあるからです。

最適な調理作業バランス

最適な調理作業バランス

自律移動ロボットを使った店舗内自動搬送の取り組み

西氏は「人員確保の難しさ、動線の長さや移動運搬のロス、食器が重たくて配膳下膳の身体的負担が大きいことは避けられない重要課題だ」と述べ、店舗内自動搬送への取り組みを紹介しました。

ニチワでは、2017年に農林水産省「食のサービス産業イノベーション推進事業の生産性向上モデル実証事業」でロイヤルホスト横浜店の協力を得て、自動運搬の実験を行いました。2017年12月末から2018年2月までは、32テーブル、129席ある「ブロンコビリー保木間店」で実験を行ないました。

「ブロンコビリー」は鉄板でステーキを提供する店舗です。食器は重いです。また席でハンバーグをカットする対面サービスを行なっているため、熱々で提供する必要があります。そのため食器の片付けが後回しになってしまいがちで、来客が待っているにもかかわらず、席がなかなか空かなくないため店舗内に誘導できない課題があったそうです。

ニチワは、そこに自動追従・搬送ロボット(Doog社の「サウザー」)を導入。食器の片付けに用いました。すると満席のディナー時に席にすぐに案内できるようになり、1日の売り上げが3万円から4万円も変わったそうです。1台でスタッフ1-2人分の下膳の働きがあり、負担が大幅に減ったとのこと。

搬送ロボットの活用

搬送ロボットの活用

基本的な動きはこうです。まずロボットに人のあとを自動追従させ、片付けるテーブルまで一緒に移動する。そして「バッシング」と呼ばれる下膳作業を行って、まとめてロボットに載せます。ロボットはスイッチを押すと無人ライン走行を行い、洗浄場所付近まで自動で移動します。荷下ろしは人間が手動で行います。

ロボットは総重量120kgまで積載可能です。ですので、当初は大型の棚を搭載し、配膳にも利用しようと考えたそうです。しかし「ブロンコビリー」では前述のように料理を対面でカット提供する演出もあるため、配膳では大量に料理を運べるというロボットのメリットを活かすことができませんでした。

そこで検討した結果、クレームやチャンスロスの改善に特化。コンパクトな標準の棚にして、テーブル食器の片付けで活用することができたとのことです。なお実証実験のため、ロボットは基本的に店長だけが活用するようにしていたそうです。

「ブロンコビリー」の場合、通路幅が十分あって段差もなく、ロボットにも向いていたことも良かったようです。速度は時速3.7kmで運用し、お客からの違和感も特になかったとのこと。なおロボット自体には35mmの段差、傾斜9度までは乗りこえるスペックがあります。

模擬キッチンでの動線検討の様子

模擬キッチンでの動線検討の様子

西氏は、搬送ロボット運用のための注意点として、「店舗内の整理清掃、いわゆる5Sが十分に行き届いている必要がある」と再度強調しました。人や台車が交差しないよう、事前の動線計画も必要です。現在、移動運搬省人化コンサルティングをニチワでは行なっており、実際の店舗ではテストできない場合は、テストキッチンでのテストを行っていると紹介しました。運用後のアフターフォローやマニュアル作成も重要です。

課題抽出

課題抽出

ニチワでは移動運搬ロボット導入のコンサルティングを進めている

ニチワでは移動運搬ロボット導入のコンサルティングを進めている

さらなる生産性向上のためには混流生産が必須

西氏は再び料理に話を戻し、アウトソーシングされる食材供給形態と特徴をまとめた図を示しました。「加工度」と「フードコスト」、そして「レイバーコスト」から見た図です。

アウトソーシングされる食材供給形態の特徴

アウトソーシングされる食材供給形態の特徴

キッチンが人手不足になるに従い、盛り付ける人がいないので、半製品や下処理済み原料の割合が上がっています。さらに食器洗浄の手間もかかないことから、今後は「盛り付け済フローズンミール」の活用が増えてくると見ているとのことでした。つまり、ぱっと見は「お弁当」のようなものを盛りつけ直して、そのまま提供し、食材が入っていた食器はワンウェイで廃棄して、食器洗浄の量も減らすといったやり方です。

加熱調理をどれだけ統合できるかも重要なポイントです。調理には「蒸す、茹でる、炊く、煮る、揚げる、炒める、焼く」といった工程があります。スチーム・コンベクション・オーブンは、この加熱調理を温度帯ごとに4つにまとめたことに意義がありました。ですが、一品だけの調理に使っているようでは、まだ使いこなしているうちには入らないと言います。

加熱調理の混流生産でさらに生産性をあげる

加熱調理の混流生産でさらに生産性をあげる

西氏は「複数の料理を混流させることが生産性をあげるには重要だ」と再度、混流生産の重要性を強調しました。ファミレスは湯煎とオーブン、フライヤーが使われているが、これからはフライヤーのかわりにオーブンが使われるのではないかと想定しているとのことでした。朝のお弁当を作るような作業においては、今はもう時給2000円出しても集まらない時代に突入しており、人手をかけずにいかに料理を提供するか、そのためにいかに工程を省き、混流させるかが重要になっていると西氏は語りました。

いま外食ではコンベヤオーブンなどが導入されています。ステーキ、ハンバーグ、ドリア、目玉焼きなどが同時に入れられ、加熱調理されます。もちろん時間管理も可能ですし、加熱調理をしている状態で盛り付けをすることもできます。たとえばコンベヤオーブンを使って1時間連続調理すれば実に224人前を一人のクルーで提供することが可能だそうです。食材によって様々な準備は必要ですが、基本的に同じようにコンベヤ上を流れていくので、洗い物の量も手間も減ります。

コンベヤオーブンを使った生産性

コンベヤオーブンを使った生産性

最後に、西氏は「食品衛生管理と生産性向上の着地点は同じだ」と述べ、「HACCP導入のための7原則の役割はコンベヤオーブンなどハードウェアの役割」と強調しました。今の厨房機器は単に調理するだけではなく、ちゃんと温度を計測しながら火を入れることができます。調理機器にはUSB端子がついていて、温度記録も可能なのです。

食品衛生管理と生産性向上の着地点は同じ

食品衛生管理と生産性向上の着地点は同じ

厨房機器導入のためには基本設計・計画の段階を詰めて、製造工程を決めて、標準作業を決めることが重要です。その上で最善の標準作業手順を設定し、動線計画と標準原価を決めて、厨房図面を描く必要があります。

西氏は、「忘れてはならないのはトップダウンとスケジューリング、改革達成への組織の強い意思決定だ」と強調しました。「動線計画・標準手順はフード&ビバレッジコントロールの要であり、それがHACCP7原則に沿ってできてないと機能しない、混流生産や自動搬送も全く同じで、省人化はこの分野にフォーカスする必要がある」と述べて講演を締めくくりました。

この講演で西氏が述べていたことは細部も概略も、他の生産現場にもほぼそのまま当てはまると思います。いかがでしょうか。なお西氏は、特定非営利活動法人ロボットビジネス支援機構(RobiZy)理事という肩書きもお持ちです。

ニチワ電機株式会社(イプロス医薬食品技術)

株式会社Doog(イプロス製造業)

  • セミナー9月
  • 寄稿募集
  • 基礎知識一覧

ピックアップ記事

tags

  • 特集バナー0827_01
  • 特集バナー0827_02
  • 特集バナー0827_03