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中小企業の「はじめてのロボット導入」とは? 明治機械製作所のスプレーガン組み立て事例

著者:サイエンスライター 森山 和道

ロボットが組み立ている株式会社明治機械製作所のスプレーガン

ロボットが組み立ている株式会社明治機械製作所のスプレーガン

一般社団法人 日本ロボット工業会は、経済産業省からの補助を受けて「平成28年度ロボット導入実証事業」を実施しています。平成26年度補正予算「ロボット導入実証事業」(22億円)に続けて実施されている、この事業の総予算は23億円です。

事業の中身は二本立てです。まず「ロボット導入実証事業」は設備費用やSIer(システムインテグレータ)の費用の一部(大企業は1/2、中小企業は2/3)を5,000万円を上限額として補助するものです。もうひとつ、「ロボット導入フィージビリティスタディ事業」はロボット導入前の検証費用の補助を行う事業で、こちらの補助上限額は500万円です。

モノづくり分野やサービス分野を対象としているこの事業では、これまでにロボットが導入されてこなかった領域へのロボット適用に対して補助金が出されています。そのため、経済産業省のウェブサイトで公開されている平成26年度の事業成果報告集は、他に例のない116件の興味深い事例集となっています。

中にはパン生地をロボットで扱うことでパン屋の生産性を上げた事例も

中にはパン生地をロボットで扱うことでパン屋の生産性を上げた事例も

なお、この事業の事例については、11月上旬から運用される「ロボット導入ナビ」というウェブサイトで詳しく紹介される予定とのことです。

1. ロボット導入前にモノづくりのあり方自体の見直しと作業の標準化が必要

ロボット導入の手順

ロボット導入の手順

2016年10月19日(水)〜21日(金)の3日間の日程で行われた「Japan Robot Week 2016」では、この事業の現状が紹介されました。

この記事では、その講演の一つ、システムインテグレータである株式会社ゼロプラス代表取締役の大場正樹氏と、コンプレッサーやエアガンを製造している株式会社明治機械製作所 生産技術課長の犬養治氏による「はじめてのロボット導入」と題された講演をレポートします。中小企業によるロボット導入の実例の一つとして、ご覧ください。

株式会社ゼロプラス代表取締役 大場正樹氏

株式会社ゼロプラス代表取締役 大場正樹氏

大場氏はまず外部環境の概況として、労働人口の減少を挙げました。いわゆる団塊の世代が75歳(後期高齢者)以上となる2025年には、75歳以上の人口が日本全体の18%に達します。さらに2060年には総人口は8,600万人程度まで減ります。そのときの65歳以上人口は全体の約4割と人口動態統計から予測されています。

この結果起きているのが人手不足です。景気は徐々に回復していますが、多品種少量生産によって小口注文が増加しており、ニーズが多様化し個別対応が必要になっています。短納期対応は常態化しており、労働時間短縮の動きは加速しています。3K職場は敬遠される傾向です。そこで、この人手不足解消の期待がロボット技術に集まっています。

ロボット技術はセンサーの高度化やネットワークへの対応などによって進んでいます。ですが、全くマニュアルもないような、システム化されていない現場に入れるのは困難です。大場氏は「ルールがないところは無理。生産管理のシステム化を進めながらロボットを入れていくことが重要」と強調しました。

その過程で、モノづくりのあり方自体の見直し、作業の標準化を行うことになり、それが結果的に品質の向上や、トータル生産量の向上につながるというわけです。

その手助けをする職業がシステムインテグレータです。株式会社ゼロプラスでは、株式会社ロボプラスというロボット導入専門の会社を立ち上げて、ここに参入しています。

2. 経営者の熱意と現場の理解を支える共通認識を

大場氏は「はじめてのロボット導入」に必要なこととして、以下の6つを挙げました。

1. 経営者の熱意
2. 現場の理解・協力
3. 現場オペレーションへの適合
4. システムインテグレータの遂行能力
5. ロボットシステムの妥当性
6. 事業計画の妥当性

「会社の課題に対して、経営者から現場までの皆が共通認識を持たないといけない」と言います。そのためには「業務の棚卸し」をして、現場の理解を得つつ、どこに入れるか判断しなければなりません。

株式会社ゼロプラスはこの実証事業案件を2年間で14の企業から請け負っています。今回の講演の株式会社明治機械製作所においては、塗料吹き付けノズルを自動で組み立てるロボットを導入しました。

3. 10分かかっていた組み立て作業が3分に。品質も向上

株式会社明治機械製作所 生産技術課長 犬養治氏

株式会社明治機械製作所 生産技術課長 犬養治氏

実際の作業は、数十個の部品を二つの垂直多関節型のロボットアームを使って組み立てて、40種類以上のノズルを作り分けるというものです。今回の導入によって、人間だと平均10分かかっていた組み立てが、平均すると3分で作れるようになったそうです。

明治機械製作所で組み立てているスプレーガン

明治機械製作所で組み立てているスプレーガン

ロボットが左の組図のように部品を組み上げて、右図の異なる種類のノズルを作る

ロボットが左の組図のように部品を組み上げて、右図の異なる種類のノズルを作る

以前は、作業者が各工程の組み立て作業台を移動しながら組み立てていました。ですが実際には部品精度にばらつきがあるため、微妙な調整が必要だったり、前工程に戻って作業をやり直したりする必要があることもあったそうです。一丁あたり組み立てるのにかかった時間は最速で140秒で、平均だと630秒だったとのこと。

ロボット導入前の組立工程図

ロボット導入前の組立工程図

それを、組み立て時間を一丁あたり180秒、5系統41種類、一種類あたり60丁連続運転のロット達成を目標として、ロボット導入が始まりました。ロボットが部品を組み立てるためには、ネジ穴を画像認識して補正しながら組み付けしていかなければなりません。また、2台のロボット同士の干渉回避などの調整に半年程度かかったそうです。

導入されたロボットによる組み立ての様子

導入されたロボットによる組み立ての様子

ロボットが画像認識したワークをハンドリングしながらネジ締めしていくわけですが、そのネジ締めトルクでワークがズレたら、また修正が必要です。そのようなロボットを使うために必須な定量化の過程を通して、これまで曖昧だった「部品一つ一つの公差を見直すことにも繋がった」と明治機械製作所の犬養治氏は語りました。その結果、製品の品質も向上しました。

当たり前のことですが重要なこととして「ちゃんとしたモノづくりをすれば、ちゃんとしたものができるんだ」と改めて強く感じたそうです。

4. 次はエアタンク塗装のロボット化に挑む

株式会社ゼロプラス代表取締役の大場正樹氏(左)と株式会社明治機械製作所 生産技術課長の犬養治氏(右)

株式会社ゼロプラス代表取締役の大場正樹氏(左)と株式会社明治機械製作所 生産技術課長の犬養治氏(右)

明治機械製作所とゼロプラスでは、平成28年度の実証事業では、エアタンク塗装工程のロボット化に取り組んでいます。エアタンクを手で吹き付け塗装するのは、これまた過酷できつい作業です。衛生上の課題もあります。

いま現在は完全に人手で行われていますが、安川電機の水平多関節型ロボットとクレーン、そして新正殿塗装技術を利用することで完全ロボット化を目指します。労働生産性は現在の3倍とすることを目標にし、人は高付加価値の他の仕事をしてもらおうと考えているとのこと。

今年はエアタンク塗装工程のロボット化に取り組む

今年はエアタンク塗装工程のロボット化に取り組む

犬養氏は「中小企業だと申請書類を書くのも大変。採択されやすい書類の書き方もわからない」が、そのようなときに頼りになるのがシステムインテグレータであり、「2年連続実証ができるのはありがたい」と語りました。これからもノウハウがある作業をロボットで置き換えていくそうです。

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