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ダイキンの海外・現地化戦略とは?:日本能率協会2016ものづくり総合大会レポート

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(写真提供:日本能率協会)

2016年2月17日~19日に開催された日本能率協会主催の「2016ものづくり総合大会」。3日目には、「海外拠点の設計・開発現地化の取り組み」というテーマで、ダイキン工業株式会社(以下、ダイキン)空調生産本部 副本部長 原田 俊光氏が講演を行いました。今回は、その内容を紹介します。ヨーロッパや中国などで開発力を強化してきた経緯や、新たに日本が担う役割とは何なのでしょうか?

1. 多様な市場への対応

ダイキンの市場最寄化生産

ダイキンは、1924年に合資会社 大阪金属工業所として創業しました。飛行機エンジンを冷却するラジエーターチューブの製造からスタートし、現在では、家庭用から業務用製品まで幅広い商品を扱う総合空調メーカーです。空調機と冷媒の両方を製造している会社は、世界でも同社のみです。海外での空調の売上高は、空調全体の67.8%にも上ります。地域密着型商品の現地開発から生産までを現地で行う、市場最寄化生産戦略を行っており、現在では、この戦略をベースとして、世界24カ国70カ所に生産拠点を展開しています。

地域密着の必要性

空調機器や暖房・給油市場の世界規模は26兆円に上り、そのニーズは地域ごとに異なります。例えば、日本・中国・ヨーロッパは冷暖房が主体で、熱帯地域や北米では冷房専門が主体です。また、インドネシアでは、寝室にのみ安価な壁掛けエアコンを取り付けることが多く、北米では、ダクト式燃焼温風暖房・冷房の全館空調が一般的です。デザインに関しては、中国では、赤い色や存在感のある床置形など、派手なデザインが好まれる一方で、ヨーロッパでは、シンプルでスタイリッシュなエアコンに人気があります。このように、地域のニーズはさまざまで、「地域密着型のものづくり」が必要不可欠です。

図1:地域ごとに異なる冷房・冷暖房のニーズ

図1:地域ごとに異なる冷房・冷暖房のニーズ

故障が頻発?想定外が起こる海外市場

インドでは、家庭用電源の電圧が安定せず、過電圧による電装品破損対策が必要です。同社でも、過電圧対策を行った上で市場投入をしましたが、特定地域で故障が頻発しました。現地調査をしたところ、想定以上の電圧変動があり、通常では考えられない壊れ方をしていました。これを受けて、地域のニーズを見極め、迅速に商品化するためには、開発の現地化が必要だという結論に至りました。

2. 海外拠点の開発強化

ヨーロッパでの事例

ダイキンでは、研究・開発拠点のグローバル展開のため、ここ10年で海外拠点の開発強化を行ってきました。ヨーロッパでは、4つの工場にそれぞれ専門分野の開発機能を持たせ、本部が統括し進捗管理を行っています。1980年代のノックダウン生産(主要部品を輸入し、現地で組み立てる生産方式)から徐々に生産設計を移管しました。販売店・代理店を自社の販売会社化したことで、地域ニーズをつかめるようになり、2000年前半にようやく商品開発が始まりました。

欧州人の発想は、まずゴールを定めて、バックキャスティングでものごと進めます。規制の有無に関わらず、まず挑戦し、自社にとって優位性のあるルール作りをします。現地の発想力と、現地の文化を研究した上で、暖房市場で主体のガスボイラー(燃焼機器)に代わる、ヒートポンプを市場投入しました。ヒートポンプは、CO2の排出量と省エネで圧倒的に優れています。そのメリットが生きる新築市場向けから商品化し、その後はボイラー更新の市場向けに高温水タイプを開発してきました。

図2:ダイキン欧州での現地開発強化の例

図2:ダイキン欧州での現地開発強化の例

現地での環境や使用方法による想定外の問題も起こりましたが、市場が近いので、素早く対応できました。優秀な技術者を集めるため、現地の開発力をさらに強化するため、日本のトップレベルの技術者を赴任させました。一緒に新しい技術や製品を開発していくなど、現地の技術者がやりがいを実感できるような仕事を作り、成長の場を提供しました。また、有望な若手人材を日本へ派遣し、研修を行うことで、日本のマインドを肌で感じてもらうようにしました。このような意識改革の結果、現地技術者の意欲が大幅に改善されました。

中国での事例

中国で有能な働き手を確保するために、2010年にR&Dセンターが設立されました。ここでは、中国全土の商品企画や開発全般が行われています。中国のマンションは、内装設計前のスケルトン状態で鍵の引き渡しが行われます。オーナーが好みの内装や設備を選べるので、空調にも良いものが求められます。室外機1台と複数台の室内機がつながったエアコンや、温度の個別設定が可能な全館空調が人気です。現在では、幅広い品ぞろえを展開しており、中国での売り上げは世界市場での柱となっています。

中国において、ライバルは外資ではなく、スピードとパワーで拡大を続ける中国内のローカルメーカーです。そのため、優秀な人材を集めるには、チャンスの多い魅力ある会社だと思ってもらうことが必要でした。ダイキン工業では、年齢・国籍・性別関係なく、積極的にポジションと責任を与え、信頼関係を築いてきました。また、毎年開催されている全国販売店感謝会では、経営者トップ自ら販売店で表彰を行っています。さらに、商品開発者が商品への想いや苦労を語る新商品発表の場を設け、開発の意味・価値・何をすべきかを考える機会も作っています。ダイキン工業の経営理念である「人の持つ可能性は無限」という考えのもと、その人の可能性を信じ、成長する場を提供し、モチベーションを高めるのです。

3. 持続的な事業展開に向けて

現地化の課題と日本の役割

各地域が自立し、個別に最適化して力をつけていく一方で、日本の求心力が低下するという問題が起こっています。日本が全体を最適化して、バランスを取ることが難しくなってきました。そこで同社は、日本の役割強化のため、3つの施策を掲げました。1つ目は、グローバルで戦えるベースモデルを作ること。2つ目は、グループ全体の技術を引き上げ、他社に勝てる技術を開発すること。3つ目は海外で戦える人材を作っていくことです。

図3:グローバル化の中での日本の課題

図3:グローバル化の中での日本の課題

オープンイノベーションの実践

また、持続的に事業展開をしていくためのイノベーション創出に向け、2015年11月にダイキングループの求心力となる研究開発拠点テクノロジー・イノベーションセンターを立ち上げました。研究部隊だけではなく、商品開発部隊・エンジニアなど、あらゆる部門の主要メンバーが集まった機関です。部門の壁を超えて、化学技術をどう空調に生かせるかを日々議論しながら、新しい技術開発を目的としています。今後は社内だけでなく、大学や他の研究機関とも連携し、新しい技術と融合しながらオープンイノベーションを加速させていきます。イノベーション創出により、さらに世界で戦える企業へと成長し、世界ナンバーワンの技術力を目指します。

参照:
日本能率協会 2016ものづくり総合大会ウェブサイト
日本能率協会 2017ものづくり総合大会ウェブサイト

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