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トヨタの環境技術戦略とは?:日本能率協会2016ものづくり総合大会レポート

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(写真提供:日本能率協会)

2016年2月17~19日に開催された日本能率協会主催の「2016ものづくり総合大会」。3日目には「複雑化する時代における環境戦略」というテーマで、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)技術統括部長(当時)古賀 伸彦氏が講演を行いました。トヨタのエネルギー効率化や、持続可能な発展への挑戦を紹介します。車両そのものから、交通インフラまで、非常に幅広い取り組みを見ていきましょう。

1. エネルギー効率を高めるために

図1:エネルギー効率化への基本的な考え方

図1:エネルギー効率化への基本的な考え方

熱効率向上への取り組み

トヨタは、持続的な社会の発展に向け、限られたエネルギーを効率的に利用するための取り組みを行っています。昨年秋に発表した新型プリウス用のガソリンエンジンは、熱効率40%を達成しました。現在、車単体の効率向上を目指し、パワートレーンでは、エンジンの熱効率やトランスミッションの伝達効率を組み合わせて増幅する技術を取り入れています。また、車両の空気抵抗低減や軽量化にも取り組んでいます。

内燃機関においても、熱効率を上昇させるための技術開発が行われています。エンジンでは回転数とエンジントルクで表される領域の中で、一番熱効率が良くなるポイントが存在します。大型でパワーのある車と小型自動車では、エンジンの使用領域が違うため、それぞれ燃費を最適にする技術は異なります。従って、必要な技術が使い分けられているのです。

開発効率を上げるための取り組み

パワーユニットやエネルギー源など、製品群が多様になっていく中で、数年前からTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)と称し、車開発の仕組みを変える試みを行っています。変えた方がよい部分と変えてはいけない部分を決め、部品やユニットを「かしこく」共有化することで、商品魅力を向上し、同時に原価の低減につなげます。効率化できた原資を、さらなるイノベーションに投入し、商品価値を向上させるサイクルを用いて、トヨタはバリエーション豊富な車作りを目指しています。

ハイブリッドシステム

エンジン単体の熱効率上昇の取り組みだけでなく、ハイブリッドシステムでも効率を上げることが期待されています。トヨタのハイブリッドシステムは、エンジン、電気モータ、発電機、それらが連結された駆動ギアと、パワーコントロールユニット、電池から構成されます。ドライバーがアクセルペダルを踏むことで、求める出力要件をコンピューターが感知し、最も効率の良いエンジンとモータの割合を指示、駆動ギアが最適な動力を分割し、車に出力を伝えます。

また、回生協調ブレーキでは、減速時のブレーキを熱エネルギーとして逃がすのではなく、モータを逆回転させることで、発電させて電池に蓄え、次の加速時に使用します。動力分割による最適効率運転と回生協調によるエネルギー回収が、ハイブリッドシステムの特徴であり、これらの技術は電気自動車や燃料電池自動車など次世代車にも生かすことが可能です。

2. 次世代エネルギー

水素で動く燃料電池自動車(FCV)

図2:自動車が使うエネルギーの多様化

図2:自動車が使うエネルギーの多様化

現在、クルマに用いられるエネルギー媒体は従来のガソリンや軽油に加え、バイオ燃料やガス燃料、電気や水素など多様化しています。トヨタは、多くの1次エネルギーから精製可能な水素で走行できる燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)MIRAIを市場導入しました。燃料電池車のメリットは、滑らかに加速することや、緊急時に電力供給できるなど、電気自動車としての利点に加え、ガソリン車と同等の航続距離が期待できる点です。また、充填時間も3分と、ガソリン車とほぼ同等です。FCVはカーボンを含まないエネルギーで走る次世代車の有力候補です。

水素のインフラを増やすために

燃料電池自動車には水素を供給するインフラが必要です。現在、自動車メーカーや、水素ステーション整備を行うエネルギー会社などと協調した取り組みを進めています。2015年7月に発表された自動車メーカー3社の水素スタンド運営支援では、スタンドの運営費用補填、水素充填の環境づくりや普及活動が行われています。また、FCV普及に向けた取り組みとして、同社が単独で保有している燃料電池関連の特許実施権を、無償で提供しています。

図3:燃料電池車のメリットと、トヨタの保有する関連特許

図3:燃料電池車のメリットと、トヨタの保有する関連特許

水素エネルギーの課題

FCVの走行中に、排気ガスやCO2は排出されませんが、炭化水素から水素を作る際にはCO2が排出されます。トヨタでは、ゼロCO2チャレンジに向け、CO2が排出されないシステムの研究開発や、国の取り組みなどに積極的に参加しています。また、水素を輸送する段階でも、コストや輸送方法などの問題が生じているため、どのような輸送方法が適しているのかが、検討されています。

3. 新興国への支援を通じて

 新興国の持続的な発展のために

このように自動車の効率が高まっていく一方で、新興国では交通渋滞の問題が顕在化しつつあります。たとえばインドネシアの首都ジャカルタは、毎日800~900台も自動車保有台数が増えています。このため、渋滞が頻発し、車が前に進まないという問題が発生しています。いくら効率の良い自動車が普及しても、このような事態では、その効率の良さを最大限に発揮することができません。

トヨタは交通シミュレータを用いて、各種の道路設計改良案のコスト対策効果の試算を行い、新興国のいくつかの大都市で行政と協力し実証を行うなど、自ら課題解決に向けた取り組みを行っています。交通流改善の効果として、ジャカルタが東京並みの交通流になればCO2は3~4割減るとの試算結果もあります。

モーダルシフトの提案

同時に大都市の移動手段として、普通自動車より専有面積の小さい、1~2人乗りの電気自動車をシェアリングの形態として提供する実験を、日本とフランスで行っています。こうした超小型電気自動車を、公共交通機関と組み合わせることで、都市内における快適で環境にやさしい移動が可能になります。利用率は順調に増え、回転率が上がると同時に、認知度も高まってきています。このように車の提供だけではなく、予約システムや需要予測を行い、最適な移動手段を提案するアルゴリズムを開発するなど、モビリティサービスの提供も行っています。

持続的な社会発展のための研究支援

大気汚染の問題は、交通渋滞と並びクルマが寄与する社会問題のひとつです。この問題に対し、トヨタは、豊田中央研究所とIIASA(国際応用システム分析研究所)と連携し、インドや中国において、対流圏オゾンに関しての排出源データベース構築、大気反応シミュレーション、各エネルギー政策・環境規制シナリオでの効果検証を支援しています。PMや窒素酸化物などの排気汚染物質がどこのセクターから出ているかを分析し、大気汚染における車を含む各セクター寄与割合を探り、もっとも効果の高い大気汚染対策を導き出します。

このプロジェクトは2008年から中国とインドで、2014年からは、対象国をタイ・インドネシアにも拡大して研究を進めています。このように今後も新興国において科学的なデータに基づいて、合理的で首尾一貫する政策支援を行っていきます。

このようにトヨタは、「もっといいクルマ」を提供するだけでなく、統合的なアプローチに取り組み、持続的な社会の発展に貢献していきます。

参照:
日本能率協会 2016ものづくり総合大会ウェブサイト
日本能率協会 2017ものづくり総合大会ウェブサイト

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