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生産効率40%向上を達成したアネスト岩田の生産革新:日本能率協会2018ものづくり総合大会レポート

2018年2月21日~23日に開催された日本能率協会主催の「2018ものづくり総合大会」。2日目には、「ボトムアップの生産革新~生き残りを懸けた現場の挑戦~」というテーマで、アネスト岩田株式会社(以下、アネスト岩田)福島工場 生産技術グループ 穂積 寛之氏が講演を行いました。

コンプレッサを製造しているアネスト岩田 福島工場。強みは当日受注・当日出荷の生産体制でした。しかし、当日受注・当日出荷を続けるほど収益は下がり、現場のモチベーションも落ち込んだそうです。問題点はどこにあったのでしょうか? 生産効率を40%も向上させた取り組みとは? アネスト岩田の事例は、現場の生産性向上を課題とする読者の方の参考になるでしょう。

アネスト岩田株式会社 福島工場 生産技術グループ 穂積 寛之氏

アネスト岩田株式会社 福島工場 生産技術グループ 穂積 寛之氏(写真提供:日本能率協会)

1. 生産革新プロジェクトを発足した理由

・当日受注・当日出荷の生産

弊社福島工場で生産しているコンプレッサはさまざまな動力に使われていて、顧客にとっては重要なインフラです。工場稼働の動力源なので、故障しないことはもちろん、短時間での復旧が求められます。弊社のコンプレッサの強みは、当日受注・当日出荷です。コンプレッサが故障して困っている顧客に、当日中にコンプレッサを提供することで、市場でも高い評価を得ています。

・当日受注・当日出荷の弊害

当日受注・当日出荷を続けることで、顧客からの信頼性や売上、受注は伸びました。しかし、作れば作るほど、収益性を圧迫し、社内における福島工場の評価が下がってしまったのです。原因は、福島工場の生産が従業員の労力に大きく依存していたこと、市場のニーズの高さに対して福島工場の生産能力が追い付いていなかったことなどです。

当日受注・当日出荷をするために、時間外労働や休日出勤、他部署からの応援が当たり前になっていました。人件費が増えて赤字幅は拡大し、社内での低評価につながります。労働時間は多いのに評価されないので、従業員のモチベーションが下がります。モチベ―ションが下がって生産性が落ちた状態で当日受注・当日出荷を受けるので、また時間外労働が発生します。このような負の連鎖が、福島工場で起きていました。

図1:福島工場の負の連鎖

図1:福島工場の負の連鎖

この状態を打開するため、ボトムアップでの改善改革を目指しました。作業者やミドル層が積極的に改善提案をすることで、横断的な視点や情熱・覚悟のある提案ができると考えたのです。

2. 生産革新のための活動

・全社員へのコンセプトの浸透

まずは、生産革新プロジェクトを発足しました。その際に障壁となったのが、古い体質です。福島工場は、10年以上大きな変化を経験していません。10年以上かけて育ってきた常識を覆すことが必要でした。そこで、全従業員が納得してプロジェクトを推進できるように、「CHANGE FUKUSHIMA BRAND No.1」というコンセプトを作りました。私たちの意識を変え、低評価だった福島工場を生まれ変わらせてNo.1になろうという意味を込めました。

・F1 LINE(Fukushima Line)の整備

その次に行ったのが、生産方式の改善です。福島工場では、2005年にライン生産をやめてセル生産方式を導入しました。生産革新プロジェクトにより、2017年からはライン生産とセル生産の良いところを融合させた混流生産方式を確立し、F1 LINEと名付けました。

F1 LINEをまず導入したのは、福島工場の中でも生産性が低かった組立工程です。組立工程にF1 LINEを導入することで、安定した品質、高い生産効率、当日受注当日出荷、時間外0、やりがいのある職場にすることを目指したのです。

図2:F1 LINEが目指す理想の生産現場

図2:F1 LINEが目指す理想の生産現場

・作業分析

改善方法を模索する上で、さまざまな分析を行いました。今回は、作業分析を取り上げます。作業中の作業者の動画を撮影し、人の動き(作業要素)を一つ一つ分けました。その後、それぞれの作業要素を付加価値作業、無駄な作業、改善要素の3つに分類し、時間を計測しました。例えば無駄な作業として、振り向き、部材を探す、作業忘れ、歩行移動などが見つかりました。このようにして、作業に潜むムダと改善要素を洗い出したのです。計測した時間を足してみると、全工数のうち、付加価値作業は60%、無駄な作業は35%、改善要素は5%でした。

図3:作業分析によるロスの計測

図3:作業分析によるロスの計測

・作業分析を基にした改善活動

作業分析を基に改善活動を計画し、実施しました。ライン作業化、同時投入、平準化の3つを紹介します。

まずはライン作業化を行いました。目的は、歩行移動を無くすことです。作業を二人で分担すれば、無駄な移動を減らすことができます。5人なら作業範囲は1/5になり、品質チェックも複数人で行えます。

同時投入では、組立に使う部材を製品と一緒に流すようにしました。どのラインに部材を投入するかを指定し、必要数のみを投入することで、エラー防止につなげる施策です。その結果、今まで背中側に置いてあった部材が正面にあるので、振り向いて部品を取る時間が減りました。また、部材の配膳作業者の作業も簡略化でき、工数削減とエラー防止につながりました。

平準化では、作業工程の一つ一つの時間を計測し、5人の計測者にバランス良く工程を振り分けました。その結果、ボトルネックが無くなり、高い作業編成効率で働けるようになりました。

・F1 LINEのブランド化

やりがいのある職場にするため、F1 LINEのブランド化も行いました。イタリアのデザイナーに依頼してF1 LINEのロゴを作ったり、専用の作業着を作ったりして、F1 LINEに入りたいと工場の従業員が思うようにしたのです。また、成績優秀者が優先的にF1 LINEに入れるような制度を作りました。

3. 生産革新で得られた成果とまとめ

・生産革新で得られた成果

F1 LINEの導入により、不適合率0%、生産効率40%アップ、在庫充足率100%、時間外勤務0、工数順守率100%、離職率0%を達成しました。F1 LINEに入るために成績優秀者を目指す従業員が増え、全体活性化にもつながりました。

・3つの成功マインド

最後に、3つの成功マインドを持つことを紹介します。3つの成功マインドとは、俺がやる・すぐやる・協力するです。福島工場が1年でF1 LINEを立ち上げられたのも、成功マインドを全社員で共有して推進力を高められたからです。職場の生産性向上に悩んでいる方は、まず成功マインドを周囲の人たちと共有することから始めてみてください。

図4:生産革新を成功させた3つのマインド

図4:生産革新を成功させた3つのマインド

参考:ものづくり総合大会ウェブサイト

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