メニュー

ドローンを用いた打音検査:TECHNO-FRONTIER 2018国際ドローンシンポジウムレポート

2018年4月18日~20日に開催された日本能率協会主催の「TECHNO-FRONTIER 2018」。併設して開催された国際ドローンシンポジウムでは、4月18日に、「インフラ点検用ドローンの現状と可能性」というテーマで、日本電気株式会社(以下、NEC)社会基盤ビジネスユニット ナショナルセキュリティ・ソリューション事業部 主席技師長 和田 昭久氏が講演を行いました。

検査・測量分野を中心に、さまざまな分野での活用が進んでいるドローン。NECは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受け、株式会社自律制御システム研究所、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)、一般財団法人首都高速道路技術センターと共同で、ドローンを用いて橋脚などのインフラ構造物を打音検査するシステムを開発しています。通常のドローンではできない打音検査を、どのように実現したのでしょうか? ドローンを業務に取り入れたいと考えている技術者の方、必見です。

TECHNO-FRONTIER 2018国際ドローンシンポジウムレポート

1. ドローンを用いたインフラ点検

・日本のインフラの現状

日本のインフラは危機的状況にあります。1960年代に建設された橋やトンネルが50年を経過し、老朽化が進んでいます。これらのインフラの異常箇所を、どのように見つけるかが課題になっています。これらのインフラは、国土交通省(以下、国交省)が定めた評価基準をもとに、点検・モニタリングを行い、診断して評価し、補修・補強対策を行う必要があります。

・なぜ、ドローンなのか

インフラの点検・モニタリングの手法として、従来、定点カメラや高所作業車がよく使われています。しかし、定点カメラでは点検箇所を柔軟に変更することができません。また、実際に橋脚などを叩くことができません。高所作業車では、作業員が高所に上がるため事故の危険があります。また、足場や機材が高コストであることもデメリットです。ドローンを用いて高所の打音検査を行うことができれば、安全に、コストを抑えて点検を行うことができます。図1に、インフラ点検手段の比較をまとめました。

図1:インフラ点検の実現手段比較

図1:インフラ点検の実現手段比較

2. 打音検査ドローン

・打音検査ドローンとは

打音検査ドローンは、高所や接近が難しい箇所の打音検査を支援するドローンです。点検箇所を観察するだけでなく、実際に叩くことを目標に開発されました。ドローン操作員が点検箇所にドローンを誘導し、ドローンに積まれた打音検査ユニットが点検箇所を叩きます。点検員はドローンから送られてくる打音を聞き、清音・濁音を判別し、点検調書を作成します。

・打音検査ドローンの特徴

打音検査ドローンは、橋の下やトンネル内を飛行するため、非GPS環境下で自己位置を推定できなければなりません。そのため、トータルステーション(距離と角度を測る測量機器)とレーザレンジファインダ(レーザを用いた距離測定機)を用いて、高精度な自己位置推定を行います。また、トンネルや橋周りは風が強いので、8m/sの横風の中でも位置を保ち続ける飛行性能を持っています。機体姿勢に合わせ打音検査ユニットを自動で微調整するため、安定して打音検査を行うことができます。通常のドローンは30分の連続飛行が限界ですが、打音検査ドローンは、有線で給電するため、2時間以上の飛行が可能です。ドローン操作員、点検員、安全確保員の3名で運用することができます。

・打音検査ドローンの運用と安全対策

国交省の点検要領では、目視点検を行い、異常が疑われる箇所を打音検査することと定められています。そのため、打音検査ユニットを目視点検カメラに付け替えることで、目視点検に対応することができます。また、打音検査ユニットの方向を変更することで、床版下面などの打音検査に対応することができます。点検員は映像をリアルタイムで見ながら、ヘッドホンを用いて音を聞き、健全・変状箇所を位置情報とともに記録します。

ドローンを用いる上で問題となるのが、安全の確保です。橋梁やトンネルを点検する場合、近くに車道がある場合がほとんどです。打音検査ドローンでは、車線の反対側に飛び出すことがないように、産総研が開発したドローンネットを用いて飛行区域を制限しています(図2)。また、給電線にケブラー繊維を用いて強度を持たせることで、非常時には給電線を引っ張り、ドローンを引き寄せることが可能です。

図2:打音検査ドローンシステムの構成と運用イメージ

図2:打音検査ドローンシステムの構成と運用イメージ

3. ドローンを用いたインフラ点検の課題と将来展望

現在、橋やトンネルの3D設計データが存在しません。ドローンで得た点検結果と設計データをシームレスにつなぎ合わせることが、これからのインフラ点検の課題になると考えられます。トータルステーションで橋脚表面の座標は取得できるので、これを3D設計データに結び付けることができれば、シームレスな点検調書の作成が可能になります。

また、現在は点検員が直接打音結果を聞くことを前提にしています。NECではAI技術を使い、清音・濁音を判断する支援システムを開発しています。このシステムは、清音と濁音の両方を学習させるのではなく、現場に行って健全な箇所を叩いて清音を学習することで、学習した音と周波数や音圧といった特徴が違う箇所を異常な音の可能性が高いと判断し、点検員に知らせます。

現在、図3のような河川中の橋脚の打音検査は、足場の設置などを伴い高コストかつ困難です。しかし、打音検査ドローンを用いることで、容易に点検を行うことができるようになります。

図3:現場実証(河川中の橋脚の打音検査)

図3:現場実証(河川中の橋脚の打音検査)
  • セミナー10月
  • 寄稿募集
  • 基礎知識一覧

ピックアップ記事

tags

  • 特集バナー0903_01
  • 特集バナー0903_02
  • 特集バナー0903_03
  • 特集バナー0903_04