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人の力を活用することで点検ロボットを実用化へ イクシスリサーチの取り組み TIRIクロスミーティング2017レポート

著者:サイエンスライター 森山 和道

中小企業に技術支援して産業振興を図ることを目的とした東京都の試験研究機関である地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター(都産技研)が、2017年6月8日と9日の日程で「中小企業と技術の出会いの場」として「TIRIクロスミーティング2017」を開催しました。今回は、イクシスリサーチのロボットに関する講演をレポートします。中小企業による今後のロボット事業の参考になると思います。

都産技研ではロボットの開発実用化と事業化の両方を後押しする「ロボット産業活性化事業」を進めています。一年あたり1,000万円を上限とする補助金が出る公募型共同研究開発事業で、必ずユーザー事業とくっついて進めることになっています。

イクシスリサーチの取り組み

点検ロボットの事業化を進めている株式会社イクシスリサーチ代表取締役 山崎文敬氏は「実用化に向けた点検ロボットの開発について」と題して講演しました。山崎氏は、同社の取り組みや考え方を「中小企業はどうすればロボット事業を継続させられるか」という観点も含めて紹介しました。

株式会社イクシスリサーチ代表取締役 山崎文敬氏

株式会社イクシスリサーチ代表取締役 山崎文敬氏

1998年6月に設立されたイクシスリサーチはロボットベンチャーとしてはもう老舗です。いまは点検ロボット、自動化・省人化関連のロボット事業を進めています。経営ポリシーは「試作品で終わらず、現場で使い続けられるロボット」。同社はロボットメーカーであるだけでなく、現場経験が豊富であり、書面には出てこない暗黙の条件や現場業務などを理解した上でのロボット開発、システムインテグレーターとしての提案ができる点が強みだとのこと。

ターゲットはプラントの維持管理、橋脚やトンネル点検などです。そのほか福島第一原発などにも同社のロボットは使われています。具体的には原油タンク壁面点検やビル壁面診断ロボットなどを作っており、人が見えないところを見たり、手が届かないところに手を伸ばすような、完全自動のロボットではなく、いわば「人間の能力を拡張する」ようなツールとしてのロボットを開発しています。

イクシスリサーチの橋梁検査ロボットの例

イクシスリサーチの橋梁検査ロボットの例

ロボットにしかできない用途は何か

「中小企業がビジネスとして続ける場合は、まず世の中に必要とされるものを作り、それが使い続けられなければなりません。そのためには「ロボットにしかできない用途は何か」と考えることが重要であり、「今日現在、作って、売れそうなものは何か」という視点がいると山崎氏は言います。

いま中小企業がロボット市場で攻めるべきは、「ちょいネタ」として扱われるちょっと便利な安価なIT機器の延長のようなものか、特殊環境で使われる、価格がいくらだろうがどうしても必要なものしかなく、その両方からジワジワとやがて家庭用ロボットのようなものへと近づいて行くのではないかというのが山崎氏の考えです。

ロボット市場へのアプローチ

ロボット市場へのアプローチ

ロボット単品ではなく、現場を改善するシステム全体を開発

点検ロボットは、5年に1度、近接目視全面点検の義務化によってニーズが高まっています。またロボットで撮影することで、写真データが一定の品質精度で安定することも期待されます。ですが膨大なデータがたまるため、うまく活用しないと困ったことになります。

ロボットを使った点検システムの考え方

ロボットを使った点検システムの考え方

実用化のためには単に一つ一つロボットを作って入れるだけではなく、ロボットを入れるための現場の改善も含めてシステムとして作ってしまう必要があります。ともかく雛形を作る必要がありますが、そのための開発資金面については官による補助金利用も一つの手段です。山崎氏は、官による事業を進める過程では大手企業のニーズ調査もできるところが良い点だと述べました。

ロボットをうまく使うと、想定以上の良い効果ももたらされることがあると山崎氏は続けました。劣悪な環境で働く人の業務をロボットに置き換えようというアプローチは誰もが考えるものですが、単純に置き換えて省人化するロボットを考えると、たいてい失敗するそうです。なぜかというと、ロボットを入れると、現場で使う人にとっては、昨日までと違う業務を行わなければならなくなるからです。それが負担と感じられて評価されてしまうわけです。そもそも直接作業をロボット化すると、作業員作業と直接比較されることになります。

タンク内メンテナンスロボットの考え方の例。この図のようなロボットの進め方はよくないと山崎氏はいう

タンク内メンテナンスロボットの考え方の例。この図のようなロボットの進め方はよくないと山崎氏はいう

では、どうすればいいでしょうか。重要なのは「業務全体を俯瞰して効率化を図ること」だと山崎氏は言います。

点検業務における現場点検自体の工数は、実はそれほど多くありません。むしろ工数が多いのは、現場点検後の事務所での調書作成の手間なのです。その手間を簡単にするようなシステムであれば、現場の熟練者も導入を嫌がりません。そこを解決するようなロボットであれば現場にも受け入れられるというわけです。

ロボットを使うことで現場作業の後処理を容易に

ロボットを使うことで現場作業の後処理を容易に

人間の能力を活用してロボットを使える道具に

実際の例として山崎氏は同社と富士フイルムが共同で開発中の橋梁点検ロボットの例を示しました。ロボットはステレオカメラを使って自己位置を把握しますので、どこでどんな写真を撮ったのかがわかっています。それを橋のCAD図面での部材番号と連携させます。そうすることでデータの後処理や再利用が容易になります。

ロボットを使うことでデータ後処理が容易に

ロボットを使うことでデータ後処理が容易に

イクシスリサーチが開発したシステムでは、ロボットの動作設定や画像合成のほか、壁面のひび割れ抽出も自動で行えます。富士フイルムが開発したひび割れ検出には機械学習を使っており、0.2mm幅であれば今ではほぼ100%の精度でひび検出ができるそうです。ロボット自体の設置・撤去も簡単で、それぞれ15分くらいで可能だとのこと。

イクシスリサーチと富士フイルムらが共同開発中の橋梁点検ロボット

山崎氏は「業務にとって、モーター数やロボットのスペックは関係ない」と強調しました。「ロボットの機能も重要ですが、それ以前に、本当に現場で役に立つのか、お客さんは買ってくれるのか。その要求のなかで『必要最小限』は何かということから企画してロボットを作ってもらえれば役に立ちます」(山崎氏)。

そもそも部品やモーター数は少なければ少ないほど壊れないし、どうせロボットと一緒に人もいるのですから、人を使ったほうが手取り早い作業ならばコストをかけた完全自動化よりも、その部分は人を使うシステムにしてしまったほうが実用性があるというわけです。

このほか、イクシスリサーチでは福島県南相馬市・浪江町にある国際産学官共同利用施設「福島ロボットテストフィールド」を使った、無人航空機によるインフラ点検のための性能評価基準策定なども進めているそうです。

最後に山崎氏は「ロボットを動かすときには、たいがい人間がそばにいる。ロボットだけで完結させようとするのではなく、人間の能力を活用すればロボットは使えるものになります。そういう考え方が重要です」と再度強調して講演を締めくくりました。

参考:TIRIクロスミーティング2017ウェブサイト

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