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人工衛星を支えるはんだ付け:NECスペーステクノロジー・斎藤克摩氏【現代の名工インタビュー1前編】

現代の名工は、厚生労働省が「極めて優れた技能を有し、他の技能者の模範と認められた技術者」を表彰する制度です。NECスペーステクノロジー株式会社の斎藤克摩氏は、人工衛星部品の製造におけるはんだ付けの技術で、2014年に現代の名工に表彰されました。斎藤氏が現代の名工となるまでの軌跡と、仕事で大切にしてきたことを伺いました。

斎藤克摩氏【現代の名工インタビュー1前編】

受賞理由:人工衛星、ロケットの宇宙搭載機器製造における「はんだ付け」は、理想的な形状や鏡面仕上げのように芸術的な光沢が要求される。これを満たすため、個々の部位を見極め加熱温度・時間、量などのあらゆる条件を一瞬のタイミングでコントロールできる「技」に卓越している。また、後進の指導育成とともに、幅広い専門知識と柔軟な発想で総合的なモノづくりの高度化、効率化に努めている。

1. 宇宙環境に耐える製品づくり

――斎藤さんの業務内容を教えてください。

斎藤 克摩氏(以下、斎藤氏):私の仕事は、人工衛星に搭載する機器の製造です。使用環境が宇宙なので、厳しい環境条件にも耐える品質が求められます。製造過程で、はんだ付けは基本的かつ重要な作業です。

一般的な電気製品は機械によって、自動ではんだ付けされているイメージを持っている人が多いでしょう。しかし、人工衛星の部品は、人間でないとはんだ付けができません。宇宙環境での放射線・熱・衝撃に耐えるためには、繊細で特殊な加工を加えたモノづくりが必要です。

はんだ付けを行う斎藤氏

はんだ付けを行う斎藤氏

――はんだ付けは簡単な作業に思えますが、高い技術が必要ということですね?

斎藤氏:一般的な電気製品と比べると、宇宙空間で使用される製品は地球上と全く環境が違うので、かなり厳しい品質が求められます。例えば、生産時に発生するはんだの飛散や部品の切りカス等、微細な異物全てを丁寧に除去する必要があります。宇宙空間が無重力のため、異物は衛星内部で浮遊し、回路内に入った際にショートさせ、最悪の場合、衛星全体の故障原因になってしまうからです。人工衛星が打ち上げられた後は、修理することができません。仕事の全てが、失敗の許されない真剣勝負です。

2. なぜ技術力を磨けたのか

――失敗が許されない製品を作り続けるために、技術力が磨かれたのですね。なぜ、そこまで高い技術力に到達できたのでしょうか?

斎藤氏:実は、私は子供の頃モノづくりが得意ではありませんでした。入社した時に受けたはんだ付けの検定では、同期82人の中で77番目の順位だったほど、苦手でした。

そんな私が成長できたのは、当時の先輩や上司の教育に恵まれていたからでしょう。先輩や上司の教育スタイルは職人かたぎで、背中を見せて育てるというものでした。先輩方に感謝していることは、私が失敗をしても頭ごなしに怒りはせず、失敗を許容してくれたことです。製品に失敗が許されない職場なので、意外に思われるかもしれません。そのおかげで私は臆することなくさまざまな業務を経験し、成長できたのです。私が現代の名工というありがたい賞をいただけたのも、先輩や上司のおかげです。

私の転機は、はんだ付けの技能コンテストで優勝したことです。全国から1,000人ほど参加して、決められた時間内で実際にはんだ付けし、製品の仕上がりを評価する大会でした。その大会がきっかけで、会社の中で注目されて評価いただけるようになりました。

3. 業務で大切にしていること

――失敗を恐れず挑戦することが、技術力の獲得につながったのですね。斎藤さんが普段の業務で大切にしていることは何かありますか?

斎藤氏:基本に忠実に作業をすることです。はんだ付けには3つの基本要素、清掃・加熱・供給があります。これを守ることが重要です。

3つの基本が大事だと語る斎藤氏

3つの基本が大事だと語る斎藤氏

清掃は、母材である接合金属面を機械的、化学的に不純物がない清浄な状態にしてからはんだを付けるということです。加熱は、母材をはんだの融点である183℃(人工衛星はSn63共晶はんだを使用)プラス40℃~50℃の範囲に調整することです。母材の形状はさまざまで、厚みや大きさによって熱の伝わり方が変わります。温度変化を見極めて、ハンダゴテの温度をコントロールする加熱の見極めが重要です。供給は、はんだの供給になります。接合金属がはんだの溶融温度に加熱されたところにうまくはんだを供給することで、良いはんだ付けができます。時間をかけると基板や部品に熱やストレスをかけてしまい、短すぎると強度不足の原因になるので、いかにタイミングよく短時間で供給できるかも大事です。この3つの内、1つでも欠けると不良の原因になります。宇宙空間で使用する製品だからこそ、この3つの基本がとても重要です。

若手の技術者には、基本を大事にしてほしいですね。業務の基本はいろいろありますが、しっかりと先輩や上司に教えてもらうことが近道です。私たちの扱う部品は、容易に入手できず、1つでも高級車が買えるぐらいに高価なものもあるので、失敗は許されません。失敗をしないためには、きちんと先輩や上司に教えてもらう。先輩も長年かけて苦労し習得した技術を教えてくれるので、若い人は教わる姿勢を常に正して素直に聞く。全てはそこから始まると考えています。

――前編では斎藤さんが現代の名工になるまでの軌跡を知ることができました。後編では、斎藤さんが若手技術者への教育で大切にしていることをお聞きします。

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