あの人のおしゃべりを止められるかも?
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イグノーベル賞インタビューLaugh and Think【第3回】おしゃべりな人を黙らせる!スピーチジャマーの発明:津田塾大・栗原氏

「人々を笑わせ考えさせてくれた業績」に贈られるイグノーベル賞(Awards makes people Laugh and then Think)。今回は、「人の迷惑を顧みずしゃべり続ける人の話を邪魔するスピーチジャマー」を開発し、2012年に音響賞を受賞した津田塾大学 学芸学部 情報科学科准教授の栗原 一貴氏にお話を伺いました。(公立はこだて未来大学准教授の塚田 浩二氏と共同開発)

栗原氏は、情報技術の機能やデザインを工夫することで、人間同士のコミュニケーションの円滑化を目指す「ヒューマン・コンピュータ・インタラクション」の研究に取り組んでいます。この研究とスピーチジャマーの関連とは? また、発想力を磨く秘けつは何なのか? 聞いてきました。

津田塾大学 学芸学部 情報科学科 准教授 栗原 一貴氏

津田塾大学 学芸学部 情報科学科 准教授 栗原 一貴氏

合コンで延々としゃべる人を黙らせたかった!?

――人の迷惑を顧みずしゃべり続ける人の話を止める「スピーチジャマー」。とても興味深い着眼点です。開発のきっかけは、何だったのでしょうか? 

栗原 一貴氏(以下、栗原氏):きっかけは、自力でプレゼンテーション・スキルを高めることができる「プレゼン先生」というシステムの開発です。このシステムは、プレゼンの様子をカメラで撮り、音声や画像からの情報を処理することによって、発表者の話す速度、抑揚、アイコンタクトなどからリアルタイムでダメ出しをするというものです。

ところが、コンピュータから「ゆっくり話しましょう」と指摘されても、実際発表者には気にする余裕がありません。「強制的に、かつ自然とゆっくり話すようになる仕掛けがないかな」と思っていたところ、日本科学未来館で、「自分の声を少し遅れて聞くと、話しにくくなる」という聴覚遅延フィードバックの原理を説明した展示に出くわしました。これがスピーチジャマーの大きなヒントとなったのです。

この装置は、話している人の声をマイクが拾い、0.2~0.3秒遅れて、本人に声を送ることで、脳を混乱させ、話し続けられない状態にします。話している人が、しゃべるのを止めれば音声も止まります。この装置を導入すれば、プレゼンのスキル向上に加えて、会議室で延々としゃべる人を黙らせることもできます。

この研究のポイントは、自分の声に邪魔されて、しゃべるのを止めるよう自覚させられるという仕組みのシンプルさと、本人も「してやられた」と感じてしまうおもしろさだと考えています。また、イグノーベル賞の受賞によって、おしゃべりな人を黙らせたいという願望は、人類共通と分かったのも、私にとって大きな収穫でしたね(笑)

「スピーチジャマー」で、話の長い上司を黙らせることができる?

「スピーチジャマー」で、話の長い上司を黙らせることができる?

――ヒューマン・コンピュータ・インタラクションの分野に興味を持ったのは、どんなきっかけですか?

栗原氏:私は1対1で話すことや、大勢の前でプレゼンをするのは好きなのですが、実は4、5名で話す、いわゆる合コンのようなシチュエーションに苦手意識を持っていました(笑)発言力のある人がその場を支配するので、周囲の人は「そろそろ黙ってくれないかな」と思っていても、なかなか伝えられない。そこで当人に対して、波風を立てずに、周りもクスッと笑うような方法で、「静かにしろ」と伝えられる仕掛けを作ろうと思ったわけです。

スピーチジャマーは、ピストルの形をしています。円滑なコミュニケーションを脅かす存在を倒す「武器」という意味を込めました。このように、人間同士の関係やコミュニケーションを円滑にする「道具」としてのコンピュータや情報技術に興味があり、この分野に進んだ原動力になっています。

イグノーベル賞授賞式での栗原氏と共同研究者塚田氏のスピーチ(音あり)実際にスピーチジャマーのデモンストレーションも行った(出典:YouTube)

――子供の頃から、何かを発明することが好きだったのですか?

栗原氏:そうですね。ゲームを作ったり、コンピュータに触ったりするのが好きな子供で、漠然と「将来は博士になりたい!」と思っていました。原体験は、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に出てくるマッド・サイエンティストへの憧れです。マッド・サイエンティストのお墨付きと呼べるイグノーベル賞の受賞によって、「自分もその路線でいこう」と思えるようになりましたね。

また、「小学校で、科学のすばらしさを伝える講義をしてほしい」といった講演の依頼も増えてきました。いつかは教える仕事に就きたいと思っていたので、36歳のタイミングで、産業技術総合研究所を退職し、津田塾大学の教師の道を選びました。

テトリス遊んで、3Dモデリングができる!最近の研究テーマ

――イグノーベル賞の受賞が、ご自身の転機にもなったのですね。栗原先生にとって、ヒューマン・コンピュータ・インタラクションの研究のおもしろさとは、何でしょうか?

栗原氏:この分野のおもしろさは、次々と登場する新技術を人間となじませることです。生活に役立てるという意味では、境界面(インターフェース)は無数にあり、常にホットなテーマに触れることができます。テーマに事欠かないので、新しい分野を開拓していきたいと考えています。

全体のトレンドとしては、グーグルグラスやApple Watchなどのウェアラブル端末がホットになっています。私も毎日Apple Watchを身に着けています。スマートフォンと連動しているので、例えば、スマホでクックパッドのレシピを見ていたら、調理の「3分ゆでる」という工程で、Apple Watch上に自動的に3分タイマーがセットされます。日常生活での何げないうれしさや便利さを味わえるのはいいですよね。

現在、私が特に興味を持っているのは、3Dプリンタを使った、モノの形を作るデザインです。最近のデザイン例は、3次元テトリスをプレイするだけで、3Dモデリングができるブラウザアプリです。このアプリを使えば、3次元モデリングができなくても、アプリ上で積み立てたテトリスの3次元データを数分で作ることができ、3Dプリンタで印刷もできます。

詳細はこちら:栗原一貴: Kazutaka Kurihara’s Website

3DプリンタやCADソフトを使うのは、難しいと尻込みする人が多いと思います。そこで、レゴブロックを組み立てるように、誰でも簡単にモノづくりができないかと考えて、作りました。このアプリに関する研究が評価され、エンターテイメント・コンピューティング2015の論文賞を受賞することができました。自分が頭の中でイメージしたものが、物体となって現れるのは、言葉にできない感動があります。

テトリス3Dモデラで作った作品たち

テトリス3Dモデラで作った作品たち

優れた道具は、説明書がなくても、見たり触ったりするだけで、直感的に使い方が分かります。ドラえもんの道具は、その最たる例です。ヒューマン・コンピュータ・インタラクションが重視しているのは、専門知識のない人々でも技術の成果を享受できる状態を作ることです。

発想のカギは、多彩なグラデーションのように、幅広い用途を考えられるかどうか

――最先端の技術と人々との架け橋のような存在なのですね。栗原先生は、卓越した発想力をお持ちですが、アイデアの種を見つけるセンサーを磨くために心がけていることは何でしょうか?

栗原氏:私が日々無意識にやっているのは、言葉遊びのように、何かと何かを組み合わせて考えるということです。もう1つは、何かおもしろい技術シーズ(種)が得られたら、多彩な色のグラデーションを生み出すように、その応用の用途を幅広く想像して、列挙することです。市場の規模が見込め、誰にでも役立つ無難な案から、「こんなふうに使ったら、逮捕されそう」というくらいに反社会的な案までを妄想できるかどうかが、発想力のカギを握ります。

このグラデーションの中央には、市場は小さいけれど、多様で賛否両論を招くマイノリティーな案があります。私が研究で目指していきたいのはこのエリアです。

――モノづくりに携わるTech Noteの読者に向けて、イノベーションを起こすために、日頃から、どんなことに気を付ければよいか、教えてください。

栗原氏:組織に所属している人は、新規事業などを行う人たちに、自由にやらせる余裕を持つことが必要だと私は考えています。既存のルールに従うことを個人に強要すると、自由な発想が阻害されてしまいます。制約をできる限り取り外し、効率を考えずに「何をやってもいいよ」と、長い目で温かくプロジェクトを見守ることが前提になります。

個人では、興味の赴くままに情報収集するのもいいですね。WIREDのようなテクノロジー系のニュースやSmartNews、Gunosyのようなキュレーションアプリを毎日眺めているだけでも、最新の技術や応用の引き出しが増えますから。

――研究への情熱と、引き出しの多彩さや深さを、ひしひしと感じました。本日はありがとうございました!

ヒューマン・コンピュータ・インタラクションが形作る未来、そしてアイデアの発想法など、私たちにとっても学べることがたくさんありました!

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